パチンコ店の珍事件「ゴト行為」の可能性も覚悟!? 修羅場となった「禁断の右打ち」とは…
パチンコ店で起こる「珍事件」を特集する本企画。今回は元店員「ミリオン銀次」氏が、経験したトラブル等を紹介させていただきます。「禁断の右打ち」によって「修羅場」に…?
■ホールが「修羅場」へと変貌?
店休日の無い地域では、夜通し行われる入替作業。その苦労話に関しては、以前のコラムでもご紹介させていただきました。ただ、場合によって更に大変となるのが新装初日のホールです。
玉の循環装置やメダル供給システムなどの機材トラブルもよくある話ですが、これはあくまで機械が相手なのでそこまで苦労はしません。
新台入替で何よりも気を付けるべきは、お客様トラブルと申し上げても過言ではないでしょう。大型新装ともなれば大勢のお客様が来店されるので、必然的にトラブルが起きる可能性も上がります。
今回は、そんな新台入替の初日に起きた予期せぬ事態。「禁断の右打ち」によって怒りが爆発し、ホールが「修羅場」へと変貌した驚愕のエピソードをご紹介しましょう。
■新台コーナーの中から警告音が…
あれは数年前の新装初日。目玉機種がデビューを迎えた大型の新台入替で、大勢のお客様が来店されておりました。稼働率は7割を超え、目の回るような忙しさの中でホールを巡回していたのです。
積み上げられていくドル箱の山。店内はお祭り騒ぎになっており、多くのお客様が楽しそうに遊技されていたのを鮮明に覚えております。「この入替は大成功になりそうだな」と、安堵していたのですが…。
そのような状況下で、新台コーナーの中から警告音が鳴り続けている怪しい台を発見。数秒レベルのことなら気にも止めませんが、「この長さは普通じゃない」と判断したのです。ゴト行為に及んでいる可能性も考えられます。私は急いで警告音がする台番へと向かったのでした。
すると、そこにはご老人の姿が。「何をしているのかな?」と思い近寄ると…通常時に、ひたすら右打ちを続けているではありませんか。マシンからは「左打ちに戻してください」といった警告が流れ続けていたのでした。
このご老人は、どうやら遊技方法を理解していない様子。更には耳が遠くて「左打ちに戻してください」という警告も聞こえてなかったのかもしれません。ただただ…右打ちを続けていたのです。
私は状況を把握し、すぐさま遊技方法のレクチャーを行ったのですが…。
私が何を言ってもご老人が反応を示す事はありませんでした。無視をしていた訳ではないのでしょうが…。耳元で声を張って「左打ちですよ!」と呼び掛けても何一つ反応がなかったのです。
私が悪戦苦闘している間にも、インカムには同時進行で他のお客様からの呼び出しアナウンスが鳴り続きます。最初は他のスタッフが対応できていたのですが、あまりの忙しさにスタッフの活動容量が限界に。呼び出しアナウンスが10件待ちという事態へと発展してしまいました。
そうこうしている間に「銀次さんまだ対応終わらないんですか!」と、他のスタッフから悲痛の叫びが…。私はやむを得ずご老人の対応を断念し、ひとまず滞っている他のお客様への対応へと回ったのです。
ただ、この判断が最悪の事態を招くことに…。
ここから期待の新台入替が「修羅場」へと変わることになってしまったのです。
■若者が「いいかげんにしろよ!」と…
ご老人は私が離れてからもひたすら右打ちを続行。延々と「左打ちに戻してください」という警告音が大きく鳴り響いていたことによって、同じ島にいた他のお客様の反応に徐々に変化が見え始めます。
どの方も黙って耐えてくださっていた様子でしたが、ついに一人の若者が我慢の限界とばかりに行動に出ます。「ちょっと!いいかげんにしろよ!」と叫び、勢いよくご老人の元へ向かったのです。
若者の顔は鬼の如く険しいものになっておりました。堪忍袋の緒が切れたという感じでしょうか。我慢を続けてきたからこそ、怒りも大きくなってしまっていたのかもしれません。今にも殴りかかりそうな勢いで問い詰めていたのでした。
「これはいかん!」と、私は慌てて止めに入りました。他のお客様からも「うるさくて集中できないぞ!なんとかしろ!」という声が飛び交っておりました。お客様方のご意見はもっともですが、ひとりではどうすることもできません。
しかし、他のスタッフも別の対応で手一杯。困り果てた末に、私はホール責任者へ報告して助けを求めました。
すると、「ごめん!こっちもホールコンピューターの故障で手が離せないから、店長になんとかしてもらって!休憩室で仮眠してると思うから!」という返答。徹夜明けで疲れ果てている店長を起こすのは気が引けて仕方がなかったですが、今はそんなことを気にしている場合ではありません。
私は急いで休憩室で寝ている店長のもとへ向かい、叩き起こして事情を説明しました。「そんなトラブルあり得るか?」と笑っていましたが、切羽詰まった私の顔を見て状況を理解した様子。直ぐに着替えてご老人の対応へと向かったのです。
相変わらず話が通じないので、私と店長は身振り手振りでご老人を静かな店外へと誘導。何かを伝えたいというコチラの意思が伝わったのか、ご老人はポケットから補聴器を取り出しました。それを耳に装着してからはスムーズに会話する事ができたのです。
ホール内は騒がしいので、あえて耳に付けていなかったとの事。いずれにせよ、遊技方法を理解していなかった時点で、同じ過ちを冒してしまったのかもしれません。
結局、ご老人は「最近の台は難しい」と言って『海物語』へと移動。楽しそうに横スクロールを眺めておりました。
この方にとっては、最近の凝ったゲーム性の機種を理解するのは大変なのかもしれません。何も知らずに新台を打つことで、時に思わぬ修羅場が生まれてしまう。そんなこともあると身をもって体験したエピソードでした。
(文=ミリオン銀次)
<著者プロフィール>
ホール店員・雀荘店員といった職種を経験。それらを活かし、ライターとして活動中。特に力を入れているのはパチンコ・パチスロ分野で、自身の遊技体験やホール店員時代のエピソードを中心にしたコラムを執筆している。パチンコ・パチスロ歴は10年以上で「打ちたい台をトコトン打つ」がモットー。結果として、目も当てられない大敗を多く経験。「悲惨なエピソードも明るく紹介したい」といった拘りを持つ。
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