パチスロ「初体験の王道パターン」でビギナーズ・ラック炸裂!!【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』2話:パチスロ0号機―後編:アメリカーナ】
第2話 パチスロ0号機【後編】アメリカーナ
私が初めてパチスロ0号機に触れたのは、忘れもしない昭和57年の春。当時、私は親元を離れて一人暮らしを始めたばかりの大学生でした。場所は広島県広島市、安佐南区の下祇園という小さな町にある「ニューマンモス」というホールで事件は起きたんです。
その日、私はパチンコを打つために千円札を崩そうとしていました。もちろん、打つのは専ら安い投資で遊べる羽根モノ(平和のゼロタイガーや三共のキングスター等)。この当時すでに超特電機(いわゆるセブン機)と呼ばれる三共のフィーバーや平和のブラボー等も登場していたけれど、大学に入ったばかりの貧乏学生が、そんなカネのかかる贅沢な遊技なんてできるはずがありません。
そしてゼロタイガーを確保して、さぁ打とうと意気込んだのはいいけれど、小銭入れを見ると百円玉が1枚もありません。それで、席を立って両替機を探したんですが、普段とは違う場所にある両替機に千円札を挿入したのが運の尽き。次の瞬間、ザラザラザラ~っというけたたましい音を立てて、50枚のメダルが受け口に溢れました。
「嗚呼っ! やっちゃった」
そう、私が両替機と思い込んで千円札を挿入したのは、パチスロ用のメダル貸し機だったんですね。
当時は同じ経験をした人がとても多かった。パチスロ必勝ガイドのライターでは、アニ氏(アニマルかつみ)やタケちゃん(中武一日二膳)も、自分と同じパターンだったと聞きます。いわゆる、パチスロ初体験の王道パターンと呼ばれるやつですな。
ともあれ、こうなったらもう仕方がない。覚悟を決めてアメリカンパチンコ(…と入口のポスターには書かれていました)のシマに足を踏み入れたところ、そのにあったのはユニバーサル販売の0号機『アメリカーナ』で、最後の3枚で大当りを引き当てるというビギナーズ・ラックに遭遇したんですよ。
『アメリカーナ』
ちなみに…この当時、東京都ではパチンコとパチスロの併設が認められていませんでした。ゆえに、パチスロを打ちたいなら数少ない専門店に行くしかなかったのですが、後になってアニ氏から聞いた話によると、当時は都道府県ごとの条例で管理されていたそうな。つまり広島県は「併設可」の県だったってことですね。
余談ですけど、東京都で併設が認められたのは昭和60年の新風営法の施行時。なんとも長い間、東京のスロッターは残念な思いをしていたものです。だって、当時のスロ専って独特の雰囲気があったから(大抵は狭くて薄暗くて客層が怖い)、初心者が一人で入るには間口が狭かったように思います。
話がそれたので戻します。
リールに777が並んだので、見よう見まねで大当りを消化しました。まずはレバーを叩いてリールを回し、それからメダルを1枚投入して左ボタンを押す。それで中段にJACが停止して15枚の払い出し。さらに1枚投入して中ボタン、1枚投入して右ボタン。ボーナス入賞時の15枚とJACで純増は54枚。さらにレバーを叩いて同じことを4回繰り返して大当りは終了しました。
0号機は777が揃った後に1枚掛けでレバーを叩く機種が一般的ですが、私が打ったことのあるユニバーサル系の0号機(アメリカーナとリバティベル)は、いずれもメダルを投入せずにレバーを叩き、リールが始動してからメダルを投入する仕様でした。
そして、ここからが凄かった。しばらく回していたら再び777が揃い、そこからはスイカやBAR(いずれもボーナス絵柄)が入り乱れて大連チャン。適当に左→中と止め、テンパイしたボーナス絵柄を右に狙えば必ず揃ったので、スロットって凄く簡単なゲームだな…なんて思ったりもしたんですが、もちろんそんなことはありません。
ご存知の読者さんも多いでしょうが、当時の0号機は「ボーナスが揃うと一定の割合でボーナスの高確率状態に移行し、ホール側が決めた打ち止め枚数に到達するまで出続ける」というゲーム性でした。
いや、もしかすると地域によって微妙にゲーム性が違うかもしれませんが、私が若い頃に広島で打ったスロットはそうだったんです。当時は遊技機の検査機関である保通協は未だ発足以前であり、各都道府県における認可の基準も曖昧だったため、ホール側のニーズに応じたいろんな純正カスタム品が出回ったそうです。
つまり、同じ機種名でも川を渡って隣の県に行ったらゲーム性が違った…なんてコトが普通にありました。ボーナス確率から基本的なゲーム性まで全てが公開され、しかもどこで打っても中身が同じである現在の機種を取り巻く環境を目にしたら、当時の私はさぞかし羨んだことだと思います。
「これで終わりだよ」
二度目のメダル補給にきた店員さんが「打ち止め」の札を立て、そう言いました。小箱に詰め込んだメダルをカウンターに持っていくと、渡された特殊景品は1万2千円分。正確な枚数なんて覚えちゃいませんが、おそらく1200枚くらいだったと思います。つまり、今で言うところの「10枚交換」に相当するわけです。だけど、決してボッタクリとか、そういうわけじゃありません。だって、この当時はそれで普通だったんだもの。
交換率や打ち止め枚数は地域によって微妙に違ったらしいのですが、とりあえず私が初めてスロットを打った時はこうでした。
そして、予期せぬ大勝ちでスロットに味をしめた広石少年は、翌日からどっぷりとスロットにハマる…なんてことはなく、相変わらずシコシコと羽根モノをメインに打ち続けましたとさ。
だって、ほんの小一時間で1万円も吐き出したスロットが恐かったんだもの。
ここらへんは、意外と冷静ですね。
嗚呼、我ながらクソ面白くもない!
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