「ゴト師」に狙われた爆裂機…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第98話:吉宗】
第98話 吉宗
今回は大都技研の大ヒット機種・初代『吉宗』の昔語りをお届けします。
大都技研の4号機『吉宗』は、平成15年(2003年)の6月にデビューしました。当時はすでに4号機時代の末期にさしかかっており、パチスロの出玉性能に関して「より速く&より荒く」が求められた時代でした。
直近まではサミーの『獣王』を始祖とする爆裂AT機がプレイヤーから圧倒的な支持を集めていましたが、いかんせんAT機は「出る状態」になるまでに膨大なカネと時間がかかります。
まず最初にビッグボーナス(機種にもよるが400分の1前後)を引いてAT抽選高確率状態へと移行させ、しかる後に高確から転落する前に純ハズレ(200~300分の1程度)を引いて、その何割かがATに当選するのですが、当時のATはセット数管理されているケースが大半であり、いくつもの壁を突破してAT=特賞を射止めたとしても、一撃数千枚もの大爆発に結びつくことは非常に稀。何度もこれを繰り返して、そのうち大きな出玉の塊を掴むのを待つ…といったハードルの高いゲーム性だったんです。
もちろん、複数のプロセスを経て大量出玉を獲得した際の爽快感と満足感は別格につき、多くのプレイヤーは分の悪い勝負と承知の上でチャレンジしたものですが、そこはやはり時間に追われる現代日本人ですから、もっと手っ取り早く大量出玉に期待できる機種に人気が集まるようになりました。
そう、それこそが『主役は銭形』や『鬼武者3』、『シンドバッドアドベンチャーは榎本加奈子でどうですか』や『梅松ダイナマイトウェーブ』などの大量獲得ストック機だったんです。
これらの機種はいずれもスマッシュヒットを放って4号機時代末期のホールを大いに盛り上げますが、やはり最も人気が高かったのは大都技研の『吉宗』でした。
■当時のギャンブラーたちを魅了!
なにしろ、711枚の出玉は等価で約1万4千円。もしもこれが1G連した日には2万8千円。運良く1G連を2回取れば一撃で4万2千円にもなるんですから、当時のギャンブラーたちは目を血走らせてじゃぶじゃぶと吉宗に突っ込みました。
実のところ、1G連契機の抽選確率は非常に低く、パンク確率は41.7分の1(つまりビッグ41.7回に1回の割合)、JACハズレは1310.7分の1で、俵8連続は257.5分の1、純ハズレに至っては21845.3分の1と、まずもってお目にかかれないのですが、可能性がゼロでない事象は起こり得ると前向きに考える打ち手がなんと多かったことか…。まぁ、私もその一人だったわけですけどね。
そして、唯一の現実的な1G連契機が「逆押し青7揃い」でした。その抽選確率は、他の契機より遥かに高い170.22分の1。小役ゲームは30Gですから、単純計算でビッグ6回に1回程度の割合で「逆押し青7揃い」を得る計算になります。
しかも、青7揃い時の8分の1でダブル揃いになるため(1G連を2個獲得)、少しだけヒキに恵まれれば何とかなりそうな気がします。当時、ガイドスタッフの誰かが「吉宗のビッグ中はビッグの確率変動状態なんだよね」と言ってましたが、まさに言い得て妙ですね、ええ。
■〇〇がゴト師のターゲットに
ちなみに、1G連の権利を複数抱えていて、尚かつ当該ビッグで1G連条件を満たせなかった場合には、3回目のJACゲーム中に「俵を揃えるための押し順ナビ」が発生して、強制的に1G連条件を達成することになります。
ある意味、非常に画期的なシステムだったんですが、後に「俵8連続入賞」の1G連契機がゴト師のターゲットとなります。
それこそが、いわゆる「ソレノイドゴト」です。
簡単に説明すると、JACが俵で取れるタイミングを体感機で測って「ソレノイドにスタートレバーを叩かせる」わけですね。人間がタイミングを取ってレバーを叩くより、高精度で成功するという理由でソレノイドが使われるのですが、レバーに強くて細い糸(釣り糸など)を引っ掛ける必要があるため、注意深く観察すればゴトの現場を看破できたようです。
しかし、吉宗は人気機種であるがゆえに設置台数が多く、ゴト師は使える店を求めて全国を飛び回るため、ホール側が気付かぬ内にかなり抜かれていた…なんていうことも多かったと聞きます。
当時、私も吉宗をかなり打ち込んでいたんですが、明らかに怪しい1G連をかましている現場に何度も遭遇しながらも、一度もゴトを見極めたことはありません。
おそらく実行役の周囲には壁役もいたでしょうし、手口が巧妙化してたってことでしょうね。
その後、全国のホールから苦情が殺到したことに苦慮したのか、大都技研はゴト防止用の特殊パーツを吉宗の設置店に配布しました。
■「鳴りの気持ち良さ」が台無しに…
上の写真は、私が当時通っていた中野の某店で撮影したものです。吉宗のスタートレバーにすっぽりと被せるような形でプラスチック製の特殊カバーがかけられています。このカバーを装着したスタートレバーは上方向からの操作しか受け付けず、さらに操作そのものに大きな力を要する仕様になっていました。
つまり、糸を引っ掛けた程度の力ではレバーが反応せず、ソレノイドゴトは完全に駆逐されたんです。
ただね、正直言って操作性は最悪でした。もっと言うなら、打っていてまるで気持ち良くないのよ。吉宗の醍醐味というか至福の時は、レバーで「キーン!」と鳴った瞬間だと私は考えています。
なので、個人的にビッグ中の演出は爺一択。たまには殿や姫を選ぶこともありますが、あまりにも鳴らなかった時の気分転換で選ぶことが大半で、当時の選択割合は9対1くらいだったと思います、たぶん。
話が少しそれましたが、特殊カバーを装着したスタートレバーの操作性の悪さが、鳴りの気持ち良さを台無しにしてくれやがんのよ。てゆーか、ソレノイドゴトの対策をするにしても、もう少し何とかならなかったのか…と思ってやみませんでした。
まぁ、対策部品が供給されたのは吉宗の検定切れが間近に迫っていた頃でしたから、じきに撤去される機種にカネはかけたくないという思惑があったのかも知れませんけどね。
■ラスト勝負に水を刺されたような…
そして、私の地元から吉宗が撤去されたのは平成18年(2006年)の8月7日。私が最後に吉宗を打ったのはホームグラウンドの某店で、私が座った台に「金」と書かれた設定示唆札が立ったんです(午後4時くらいだったと思います)。
この店における金札が示唆する設定は6。当時はこういう射倖心煽りまくりのイベントが普通に行われてましたが、この時はチョイ浮きでヤメようとしていたタイミングだったため、正直なところすげぇ悩みましたよ。
この店の示唆札に全幅の信頼を置けないのは経験則で承知していましたが(金札の立った南国育ちが「3連→単」の挙動を取らないケースを目撃)、こんな札を自分の台だけに立てられて、それを捨てて帰るほど私の心は強くありません。
そして、覚悟を決めて閉店まで全ツッパした結果がこの体たらく。
まぁ、パチスロは設定6をツモったところで確実に勝てるわけじゃないし、しかも相手が荒波マシンの名をほしいままにする吉宗ですから、この金札が必ずしも嘘札とは限らないんですけどね。
思い入れのある吉宗とのラスト勝負に水を刺されたような気がして、少しだけ憂鬱な気分になりました。むしろ札が立たなきゃ良かったのにね(涙)。
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