パチスロ「カエル退治に挑んだワンパクイルカだったが…」~4号機名機伝説~ 『フリッパー3』編【アニマルかつみの回胴青春時代Vol.94】

 伝統の大量リーチ目とオーソドックスな仕様とスペックが老若男女を問わず多くのプレイヤーを魅了し、4号機時代初期のパチスロ市場で圧倒的な人気を誇っていた山佐の『ニューパルサー』。

 そんな情勢に苦虫を噛んでいた業界最大手ユニバーサルは1994年春、同社初の本格リーチ目マシン『イヴX』をメーシー販売からリリース。

 そして、同年の夏。「怪物カエル」からのシェア奪還作戦をさらに推し進めるべく、同社のイメージを一新させるキュートなイルカのキャラを擁した新作を市場に送り込んだ。

 本丸・ユニバーサル販売の4号機第3弾、『フリッパー3』である。

『フリッパー3』

 仕様は、『イヴX』と同じく表面上のBR比率1:1の純Aタイプ。

「BAR・チェリー・チェリー」の組み合わせでリプレイとなるところがユニークだが、これはキャラクタ絵柄の「イルカ」の3つ揃いに、様々な役割を担わせているため。 たとえば、ボーナスゲーム中。左リールがイルカで中・右リールがイルカあるいはプラムの組み合わせでJACの払い出しとなるのだが、目押しでイルカを3つ揃えれば、「キュイキュイキュイキュイ♬」と、イルカの鳴き声を模した効果音が鳴り響くのである。

 特典は…特に無い。まぁ、目押し力を周囲にアピールするだけの、いわば自己満足なわけだが、あまりやりすぎると周囲の反感を買うことは必至。実際、「若い頃、やりすぎて怒られた」という話は、いまでもよく耳にする。

 スペックは、全設定にわたってREGを控えめに抑えたビッグ偏向の確率配分が特徴。ボーナスの連続性を念頭に置いていたイヴXと比較すると、「REGがカットされた分、辛くなった」という印象だ。 全設定にわたって合成確率が高かった『イヴX』は、ホールから「甘すぎて利益が取れない」とお叱りを受けることが多々あったらしい。その辺も考慮し、『ニューパルサー』のようにREGで設定差をつけて「抜きたい時は抜ける」スペックにしたのだろう。

 さて、先述のとおり本作は、ユニバーサルにとっては2作目となる「大量リーチ目」を最大のセールスポイントとしたマシン。

 リリース当初の発表では、なんと「総数3千種類以上!!」と謳われていた。しかし、実際のところは……。

 本作のリール制御は、古くからのユニバーサル系マシンの伝統的手法を受け継いだもの。

 左リールのみ成立役や状態に応じて停止位置やスベリコマ数が指定されたテーブルを用いてリールをコントロールし、残る中・右リールは所定の絵柄を揃える、あるいはハズす制御を行う…といった寸法だ。

 つまり、古くは「コンチネンタルⅢ」や前作「イヴX」と同様、リーチ目は「特定絵柄の一直線型」のみで、その総数は100個にも満たなかったのである。

 さらにいえば、「ハズレ時の128分の1でリーチ目となる組み合わせを停止させてもよい」という、驚愕の「ガセリーチ目抽選」もあったりして、実態は大量リーチ目マシンではなく、「大量のハイチャンス目を搭載したマシン」が正解だったのだ。

 そんなわけで、残念ながら「怪物カエル」からのシェア奪回を成し遂げることはできなかった「わんぱくイルカ」だったが。

 ファニーでキュートなキャラクタは女性客など新規プレイヤー層の取り込みにおおいに貢献。

 これを機にユニバーサルは王道路線からの転換を図り、次々と新たな人気キャラクタを生み出すことで、1990年代後半のシーンを席巻することになるのだった。

(文=アニマルかつみ)
〈著者プロフィール〉
兵庫県尼崎市出身。1992年春にパチスロ必勝ガイドのライターとなり、以来30年にわたってメディア人の立場から業界の変遷を見つめてきた大ベテラン。ぱちんこ・パチスロの歴史に関しては誰にも負けない博識を持つ。最近ではYouTube動画チャンネル「ぱち馬鹿」のメンバーとして、各種企画の制作や出演、生配信などにも精を出している。ライター稼業のかたわら、ロックバンドのベースプレイヤーとしても活動中。愛猫家。昭和レトロ好き。
■Twitter(@anikatsu213):ANI-Katsu(アニマルかつみ)

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