パチスロ「あわや出玉没収!? 旅先で起こった冷や汗モノのアクシデント」~4号機名機伝説~ 『C51SP』中編 【アニマルかつみの回胴青春時代Vol.104】
伝統ある『ペガサス』の名を封印し、1994年暮れにリリースされたパル工業の新シリーズ第1弾『C51SP』。
年末進行で超多忙な中、全国初導入となった愛知のホールへ担当ライターの自分ことアニかつ、グレハニスト内池編集部員(現・沖ヒカル)、データ採り軍団「ショッカー」のルーキー・カッパ君(現、山本コーラ)の3名で遠征取材に行くことになったのだが、早朝の東京駅でカッパ君が遅刻して我々を慌てさせるなど波乱の幕開けとなった。
慌てて店内に駆け込み、パチスロコーナーへ向かうと、『C51SP』のシマは導入されたばかりの新台でありながら、客付きは3割ほど。一同、「ほっ」と胸をなで下ろし、それぞれ空き台に腰を下ろす。
初めて訪れる土地の、勝手も知らぬ初めてのホール。もちろん、事前の取材許可など取り付けていない。なので、よそ者である我々は、つとめて目立たぬよう行動しなければならなかったのだが…。
「ねぇねぇ、内池さん。この店、モーニング入ってますよ」
「えー!? カッパ君、それほんとー!?」
「ぼく、2台目で取りましたよ。まだ空き台にも残ってるんじゃないですかね」
「え、じゃあ…カニ歩いてみようかな」
色めき立つ二人のやり取りを横目に、つい腰が浮きそうになった。が、もうひとりの自分がそれを制し、気づけば彼らを諭していた。
「私欲のための立ち回りをするために来てるんじゃないんだろ? 打ち始めたら、何があってもその1台を打つ。パチスロ必勝ガイドのデータ採りは、そういうルールだったよね?」
ガラにもなく毅然とした態度を示す先輩の言葉を二人は苦々しく飲み込み、それぞれに黙々と仕事を始めた。
ところで、今回我々が訪れたこのホール、パル工業と提携関係にあった某パチンコメーカーの直営店なのだが、導入直後でなおかつ8枚交換という低レート(当時の愛知県の統一ルール)とあってか、高設定を多用しているのだろう。自分たちの台も周りの台もなかなかの勢いでボーナスを重ね、気づけばシマはちょっとしたお祭り状態となっていた。
ただ、時に早いゲームでの連チャンが発生するも、怪しいところは見受けられず挙動は至ってノーマル。過去のパル工業のマシンの前例から、「ある種の期待」を抱いていたのだが、それについては残念ながら空振りを喰らった格好だ。
さらにいえば、前回ふれたとおり出目演出は「スベリ」や「引き込み」がメインで、とにかくシンプル。時間が経ち慣れてくると、ついついあくびしがちとなってくる。
そんな、昼下がりの安穏としたムードの中、事件は起こった。
「ちょっと、ええかね?」
突然、白シャツを着た役職風の店員に肩を叩かれた。
「あそこの台、あんた方の連れの台やろ? さっきから何度も呼び出してんのに、ぜんぜん戻って来んのよ」
困惑顔の白シャツに促され慌てて様子を伺うと、主のいないその台は777が揃った状態で騒々しいBGMを放っていた。
「待ってるお客さんもおるから、開放してええかね。メダルは預かっとくから」
そう言うと白シャツは、棚の上のドル箱に手をかけようとした。
「す、すみません!! もうちょっと待ってください!! たぶん、トイレですよね!?」
「そ、そうだな!! 朝から『お腹の調子悪い』って言ってたんで!!」
そんな風に苦しい言い訳をして白シャツを宥めながら台脇にあったオシボリで下皿のスピーカーを塞ぎ、内池君と二人、手分けして店内の思い当たる場所をあたった。
幸い、問題は5分ほどで解決した。休憩コーナーの片隅の、自販機の影になった死角。そこに置かれた長椅子の上でカッパ君は、浜辺に打ち上げられたアザラシのような格好で寝息を立てていたのである。
「…あ、すみません。お腹空いたんでパンを買って食べたら、たちまち眠くなってきて…え? そんなに時間、経ってました? 参ったなぁ…」
悪びれることもなく、ボリボリと頭を掻くカッパ君。「参ったなぁ…」じゃねーよ。それはこっちのセリフだよ。まったく、もう……。(後編に続く)