悲しき本名機…「客を飛ばす原因」になる問題が?【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第36話:クラブロデオT~前編】

第36話 クラブロデオT~前編

 パチンコ&パチスロ業界には「本命機」と呼ばれる機種があります。これは読んで字のごとく、導入すれば確実に売上および利益確保が見込める、決して外れない「大ヒットが予定されている機種」のことです。最近の例で言うと、「スマスロ北斗の拳」などがガチガチの本命機に該当しますね、ええ。

 もちろん、ホールさん側にしてみれば、全ての機種が稼働貢献してくれることが望ましいのですけど、どんなに開発力に長けたメーカーさんの新機種にも、稼働に期待を持てない機種というのが必ず出てきます。だから、ホールさんは後に控えている「本命機」を手に入れるために、欲しくもない機歴機種を購入せざるを得ないんですよ。

 でもね、物事に「絶対」はありません。ごく稀にではありますが、メーカーさんの思惑が外れて大コケする本命機があったりもするんですよ。今回はそんな機種の昔語りです。

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 時は4号機の爆裂AT機時代。その機種のプロモーションは超ド派手でした。当時はまだパチスロ新機種の広告としては例の少なかったテレビCMを大々的に打ち、導入前からこの機種がいかに素晴らしいかを全国のパチスロファンにアピールしたんです。

 パチスロ歴が古い読者さんなら、タレントの中山秀征さんが満面の笑顔で「ロデオの名前はダテじゃない!」と叫ぶCMを目にしたことがあると思います。知名度の高いタレントを起用したCMをゴールデンタイムに繰り返しオンエアするなんて、いったいどれほどの予算を使ったのか想像もできませんが、実際、それくらい期待された機種だったんですよ。

ロデオの爆裂AT機『クラブロデオT』

2002年10月にデビューした、ロデオの爆裂AT機『クラブロデオT』。AT役であるシングルボーナスおよびJACには「押し順」の概念があり、フラグ成立時に決定された押し順に合致しない限り決して揃わない。デビュー当初は「サラリーマン金太郎」や「アラジンA」と同じ仕様(シングルが常時高確率で成立しているタイプ)かと思われたが、後の解析によりシングルボーナスの集中役を搭載していると判明した。(写真は「パチスロ大図鑑2001~2007/ガイドワークス刊」より)

 しかし、メーカーの思惑に反してクラブロデオの稼働は伸びませんでした。いや、新装初日には多くのファンが設置店に押し寄せましたが、遊技を終える頃にはみんな例外なく目が点になっています。そう、キュゥべえじゃないけど「わけがわからないよ!」って言いたそうです。

 その現象は翌日も、そのまた翌日も延々と繰り返され、いつしかクラブロデオのシマには閑古鳥が啼くようになりました。これまで私はいろんな機種の新装を見てきましたが、本命と目された機種でこれほど早く客が飛んだのは、クラブロデオくらいしか記憶にありません。

 こんなにも早く客が飛んだ原因は、おそらく機種の仕様にあると思います。当時、ネットの巨大掲示板「2ちゃんねる」に、クラブロデオを揶揄するスレッドが乱立しました。

 そこに多くのプレイヤーが文句を書き込んでるんですが、多かったのが「ビッグ絵柄が揃ったのに何も起きなかった」というもの。そんなわけがあるか…って感じですが、この文句については理論的に説明がつきます。

 本機はJACゲームに押し順の概念があると前述しましたが、押し順の不正解時にリーチ目(ボーナス図柄揃いを含む)が停止するんです。つまり、ビッグが揃って何も起きなかった…ってのは、JACゲームで起きた事象に過ぎません。

 注意深く観察していれば1枚掛けになっていることに気づくはずですが、ビッグ図柄が揃ったのに何も起きないことに気が動転したプレイヤーは、直前のゲームでシングルボーナスが入賞したことさえ忘れて大騒ぎするわけです。まぁ、本機のシングルボーナスは金太郎やアラジンAのようなチェリーではなく、「ボーナス図柄+ベル+ベル」という特殊な組み合わせだったため、打ち手が混乱するのも無理はないんですけどね。

 同様に2ちゃんの書き込みで多かったのが、「ビッグ中に押し順ナビが出なくて数十枚しか取れなかった」という文句です。これに関しても理由は単純明快。おそらく、通常時に変則打ちを行ってペナルティ区間にビッグを引いたのだと思われます。

 本機の変則打ちペナルティは加算方式(変則打ちを行った回数によりペナ区間が延長)でしたから、何度も変則打ちを行えば数十ゲームのペナルティが課せられることもあります。要するに、これもまた変則打ちした打ち手の責任なんですが、悪意を持って2ちゃんに書き込む人がそんなことを認めるわけがないですよね。

 そして、何より最も多かった文句が、「苦労して苦労してATに入ったのに、シングルが一度も揃わずにパンクしちゃった。何だよこのク●台は!」という過激なもの。前述した二件に関しては打ち手側の注意不足や変則打ちが原因…すなわち、メーカーさんとクラブロデオには責任はないと個人的に思うのですが、この最後の文句に関しては、機種のゲーム性や基本仕様を伏せていたメーカーさん側の責任が重大かなと。

 どういうことかというと、本機はシングルボーナスの集中役を採用しており、通常状態に滞在中にATが発動するとRM(レイブモード/シングル確率が低いためコインの増加速度は緩やか)に、集中中にATが発動した場合はSRA(スーパーレイブAT/超高確率でシングルが成立するため増加速度が早い)に突入する仕組みです。

 集中役は常に高確率で当選→パンク→当選→パンクを繰り返しているため、SRAが発動した次のゲームで集中役が即パンするなんて日常茶飯事だったりします。本機のATは「ナビ回数」で管理されているため、即パンしても権利が消滅するわけじゃありませんが(一部の例外を除いてナビ回数が残っている限りATが再発動する)、このシステムを知らずにクラブロデオを遊技したスロッターはもの凄く理不尽に感じたに違いありません。

 てゆーか、なんでこんな大事な情報を伏せたままリリースしたんでしょうね。私には客を飛ばす原因になるとしか思えませんけど…。

 当時、私はクラブロデオTの担当ライターだったんですが、とある信用できる筋からの情報として「クラブロデオTのATはシングル集中役だと思われる」という記事を書いたところ(パチスロ必勝ガイドMAX・2002年11月号)、2ちゃん住人の皆さんからボコボコに叩かれました(ただし無記名原稿です)。

 曰く、クラブロデオのATが集中役なんてことがあるか、ガイドはテキトーなことを書くんじゃねぇ! いやいや、だって本当に集中役なんだから仕方がないでしょうよ。

 当時のログなんて残ってないと思うけど、本当に酷い目に遭いました。ネットで叩く人ってのは本当に容赦がないから、言葉の暴力に晒される炎上って本当につらいんですよ。私はこの時から2ちゃんを見なくなったもの…。

 でもって、直後に他の攻略情報誌にも同様の記事が掲載されたことで「クラブロデオTは集中役搭載機だ」という議論は決着を見たのですが、残念ながら一度離れた客付きは回復することもなく、クラブロデオは「ロデオの名前はダテだった!」という揶揄と共に少しずつ姿を消していったのです。合掌!

 だけどね、冷静に考えてみてクラブロデオは決して悪い機種じゃなかったと思うのよ。集中役を使ったATなんて過去に例がなかったし、ドットで繰り広げられる潜伏示唆演出も結構面白い。

 そして何より、楽曲がすげぇ良かったのよね。この機種は機種名が示すように、当時の流行であった「クラブ」の雰囲気を前面に押し出しており、BGMもそれに見合うだけのノリノリの楽曲で遊技を盛り上げてくれたんです。とりわけ、ビッグ入賞時の音声サンプリング演出は「女性の声ならAT当選の大チャンス」となっただけに、ビッグ終了後のBETに力が入りました(RMが発動すれば期待大)。

 ちなみに、クラブロデオは最高獲得枚数の個人レコードを記録した機種でもあります。本当は今回のコラムでそこまで書きたかったんですけどね。残念ながらちょっと長くなり過ぎたので、続きは次回のコラムで綴りたいと思います。それではまた!

ドラゴン広石

ドラゴン広石(昭和38年12月生まれ)
平成7年に白夜書房「パチンコ必勝ガイド」編集部の門を叩き、パチスロの知識と経験、目押し力を買われて「パチスロ必勝ガイド」のライターに採用された。リアルタイムで「パチスロ0号機」を遊技した経験を持つ、唯一のパチスロライターである。令和4年現在でライター歴は27年。代表作に「枠上人生」、「浮草家計簿」(連載中)、「回胴絶景」(連載中)など。1日の最大勝ち額~プラス41万3千円(クラブロデオT)、1日の最大負け額~マイナス12万9千円(初代・北斗の拳)。

Twitter:@dragon_hiroishi

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