お盆のパチンコは勝てる!? 時間が経つのを忘れてまで見続けた実戦

　結局、私が座ったのは、船の両脇に大きな傘のような回転体がぐるぐる回る羽根物であった。拾われた玉が回転体に運ばれ、輪っかの内側にある溝にはまって下段ステージに放り出される。この時、役物本体となる船が後ろに下がっていると玉が船体を通ってVゾーンに入賞しやすくなる。

　時間が経つのを忘れるまで、玉と船の動きをずーと見続けていたが、手持ちの金をすべてスられたので席を立った。油が枯渇している観音開きのガラス扉を開けると抜けるような青空と大きな入道雲が遮るもののない田舎町を包み込んでいたのである。

　蝉の声と滴る汗をかき分けながら、慣れない家路への道をとぼとぼ歩いたのであった。

　このパチンコ屋も来ることはないだろう。いや、とっくの昔に潰れてしまっているかもしれない。どちらの祖父も、もう今はいない。もう二度とこの土地に来ることがないかもしれない。

　まったく別の場所で見かけた外輪船の軌跡が、お盆とパチンコの思い出を運んできてくれたのである。

（文＝大森町男）