競馬・パチンコに入場制限!?「依存症対策の強化」と発表も、一体どうやるの?
昨年の「カジノ解禁法」施行に伴い、政府は「ギャンブル依存症対策」を導入する見通しだ。31日に開かれた関係閣僚会議では、対策強化の論点を整理したという。
この中では競馬場など公営競技場やパチンコ店への入場を制限することや、競馬場・パチンコ店などに設置されているATMのキャッシング機能の廃止などを、対策として導入する予定となっている。
持参した資金を使い果たした客が、その場で金を引き出す行為は「客を深みにはめる」と指摘されてきたことは事実。キャッシングをしてまで遊戯・投票を行うことは決して好ましくないのもたしかだ。これらが「ギャンブル依存症対策」として導入されることにも納得はできる。
また入場制限に関しても「本人や家族の申請に基づく」という条件がある以上、ギャンブル依存症の当事者たちにとっては意味があることなのかもしれない。
だがそこには「どうやって本人確認するのか?」という疑問が生まれる。
本人や家族が申請した情報を、全国の公営競技場・パチンコ店が共有することは不可能に近いだろう。そのように考えれば入場の際に一人一人の身分確認を行うしかない。
しかしこれを行うためには莫大な時間と人員を割かなければならない。コスト的な面から見ても不可能に近く、また不特定多数の人間が不規則に来店するパチンコ店であれば不向きとしか言いようがない。
カジノの設立に関して、マイナンバーを活用して入場回数を制限する案が浮上しているため、その方法を用いれば、全国の公営競技場・パチンコ店でも情報を共有することはできるのだろう。駅の改札のように、出入り口へスキャンする機械を設置するだけで済むため、人員を配置するよりもコストは抑えられ、時間の短縮も図れる。
ただ、本件の内容が「ギャンブル依存症対策」と言えるのだろうか?
まず依存症の人間が、自ら申請する可能性は低いと考えざるを得ない。そして家族も申請することは可能だが、それには「依存症の人間がいること」を把握していなければならないのだ。
入場制限に意味を持たせたいのであれば、「投資の制限」「収支の最低マイナス金額」などの特定条件を定めるべきだ。その条件を超える(満たしていない)人物への制限であれば、効果は見込めるだろう。
しかし、そのような個人情報を管理することは容易ではない。実際に競馬などのインターネットによる投票に対し「投資制限」を設けるという案も存在しているが、どのように管理されるのかは定かではない。具体的な方法が明らかになっていない状態では「非現実的な規制」と思わざるを得ないのだ。
またパチンコに関しては「パチンコの出玉規制強化」も検討されているものの、それも有効な依存症対策と言えるのだろうか?
短時間で大量出玉が得られる台の開発や、勝率が高いと思わせるようなイベントの開催など射幸心を煽る傾向にあったパチンコ業界。その影響で多くのファンを獲得し、日本最大のレジャー産業と呼ばれるまでの存在になった。
だが、その反面高すぎる射幸性は、依存症問題を生み出すことになった。結果としてその問題は重く捉えられ、これまでユーザーを引きつけていた高すぎる射幸性を抑える規制が誕生している。
「得られる玉数を減らすことでギャンブル性を抑制できる」という考えは正しいのかもしれないが、その上で「入場制限」まで設けられたとして、業界はさらなる悲鳴を上げることは明白だ。
庶民の娯楽として生まれたパチンコ本来の姿を認識してもらいつつ、ギャンブル的イメージを払拭・依存性対策を打ち出すことこそが理想であり、そうならなければ業界の存続すら危うい状況ということかもしれない。
いずれにせよ、行政上の扱いで「賭博ではない」と定められているパチンコ、競馬を含めた公営競技の入場制限が検討されていること。この事実は重く受け止めるべきだ。
そして最善の解決策が見つかることを祈るのみである。