パチンコ店側が被った損失は推定10万円…今でも少しだけ気になるエピソード【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第9話:ゼロタイガー】
ドラゴン広石 コラム「第9話:ゼロタイガー」
一般プレイヤーには馴染みの薄い用語だと思いますが、パチンコはそのゲーム性の内容によって第一種~第四種の全4種類に分類されます。
内訳は以下の通り。
第一種~現在の主流であるデジパチのこと。スタートチャッカーに入賞した玉が規定の大当り抽選をパスすると(取得した乱数が大当りと判定されれば)、液晶画面などで大当りの告知が行われてアタッカーが開放。2022年現在の規定において、1回の大当りで得られる出玉は最大1500個(純増は約1400個)となっている。
第二種~かつての主流だった羽根モノのこと。チャッカー入賞により玉を役物内部へと導く羽根が一瞬だけ開放し、役物内部のVゾーンに入賞すれば大当りとなる。
第三種~権利モノのこと。まずは天横やヨロイなど入賞しにくいルートから役物内部へと玉を通し、その玉がVゾーンに入賞したら権利が発生。しかる後に始動口に入賞すれば最大10回までアタッカーが開放する。かつては人気の高いジャンルだったが、2004年の規則改定後は完全に姿を消した。
第四種~一般電役のこと。大当りになると電チュー&アタッカーの連動によって、デジパチより多くの出玉を稼ぐことができる。このタイプは現在でも稀にリリースされるが、絶対数は非常に少ない。
これらの他にも、第一種と第二種のゲーム性が複合した「一種二種混合機」というジャンルもありますが、これは「通常時はスタートチャッカー入賞でデジタル大当り抽選」を行い、ラッシュに当選した場合は「右打ちの小当り経由でデジタル大当り抽選」を行うという、少しばかりややこしいゲーム性になってます。
噛み砕いて説明すると、大当りの発生ルートが2種類あるんです。右打ち中のチャッカーは羽根が解放した先にあるため、デジパチと羽根モノをガッチャンコした…という意味で命名されました。
ただし、当該機はいずれも液晶画面上で打ち方のナビが発生するので、とりあえずそれに従っておけば損をすることはありません。まぁ、感覚的には普通のデジパチと同じと考えて良いと思いますよ。
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さて、今回紹介するエピソードは、昭和の時代に主役を張っていた第二種、すなわち羽根モノの元祖『ゼロタイガー』です。
ゼロタイガーは1981年に業界の老舗・平和からデビューしました。そのゲーム性は次の通りです。まずは左右のオトシまたはヘソのチャッカー入賞を目指し、入賞時には役物の羽根が規定回数ぶん開放(オトシは1回開きでヘソは2回開き)。その後、羽根に拾われた玉が役物の下段中央にあるVゾーンに入賞すると、大当りとなって羽根が18回開閉する仕組みです。
大当り中に再びVに入賞すると羽根の開放回数がリセットされ、最大8ラウンドまで継続しました。それ以前のパチンコに比べて、一度に獲得できる出玉が格段に増えたことでゼロタイガーは大ヒット。その結果、他メーカーから多くの亜流が登場することになりました。
三共の「ギャラクシーダイバー」、西陣の「スペースジャガー」、京楽の「スーパーワンダー」、奥村の「スクランブル」、三洋の「グラマン」…これらは全て、ゼロタイガーの大ヒットに追随する形で開発された羽根モノなのです。
そんな歴史的な名機・ゼロタイガーですけど、この機種の初期モデルが「ラウンド継続の上限がない仕様」だったことは、あまり知られておりません。
とは言え、貯留機能などの継続アシストは一切ない時代ですし、初当りとパンクを繰り返しつつ出玉を稼ぐゲーム性でしたからね。理論上は永久継続が可能ではあっても、その恩恵を受ける頻度は皆無だったし、そもそも最初期のモデルは残存数が非常に少なく、私が知っているのは渋谷区道玄坂の「ウチダホール」という小さなパチンコ店に、昭和59年頃まで10台ほど設置されていただけでした。
ところが、何ごとにもアクシデントはあります。ある日、店側のメンテナンスが悪かったのか、それとも経年劣化により発生した不具合なのか、初期型ゼロタイガーの1台の左羽根が脱臼しちゃったんですよ。
するとどうなるか? 開放時に早めに拾った玉が役物中央にあるゼロ戦の胴体部分に引っかかり、閉まると同時に超高確率でVゾーンを直撃するんです。早い話が、一度でもVに入れば3千個の定量まで一直線。それに気づいた店長が故障札を入れようとしたら、その店の常連客が騒ぎ始め、擦った揉んだの末に「この場にいる常連客が1回ずつ打ち止めにするまで連続開放」という条件で話がつきました。
店長にこの交渉をしたのは、この店のジグマっぽいコワモテのおじさんです。「こんな時くらいは、普段は負けている常連客に還元してもバチは当たらないんじゃないか…」って言って。しかもこのおじさん、ご自身はこの台を打ちませんでした。いや~、すげぇカッコいいなと感動したのを覚えてます。
ちなみに、私はきっちりと7千円のお小遣いを頂戴しましたわよ。だって、私も普段この店で負けてたのは間違いありませんからね。
騒ぎを聞きつけた常連客がぞろぞろと集まって、常連の十数人が打ち止めするまで、店長は苦虫を噛み潰したような顔で通路に仁王立ちしていました。この一件で店側が被った損失は推定10万円ほど。
現在の感覚だと大した損失には思えないかもしれませんが、羽根モノ時代の店の粗利を考えたら結構な金額だと思いますよ。果たして、店長さんはこの店のオーナーにどう説明して、どう責任を取ったのか、今でも少しだけ気になります。
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