「まさに一期一会」だった奇跡のパチプロ・田山幸憲さんとの出会い…そして久しぶりの合同墓参り【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第40話:ナナシー】
第40話 ナナシー
去る7月4日は「ナナシーの日」でした。
この語呂合わせは、大ヒットした一般電役『ナナシー』と、ナナシーを愛して打ち続けた伝説のパチプロ・田山幸憲さん(2001年7月4日没。享年54歳)を偲んで、田山さんを慕う読者さんにより自然発生した言葉なのですが、田山さんの没後14年が経過した2015年になって、パチンコメーカーの豊丸産業さんが日本記念日協会に登録し、毎年7月4日は正式に「ナナシーの日」となりました。
今の若い読者さんはご存知ないかも知れませんが、田山幸憲さんはパチンコ必勝ガイドに長年「パチプロ日記」というコラムを連載した元祖・誌上プロでした。私こと広石も読者時代は田山さんに憧れて、日々の稼働を日記風に書き殴ったりしたものですが、私を含めた多くのパチンコ&パチスロライターと田山さんの書く文章では格調の高さが違います。「パチプロ日記」を読んだことのある読者さんならわかるでしょうが、田山さんの日記は自宅を出発するところから始まって、ネグラ(行きつけのパチンコ店)に辿り着くまでの風景や心の動きが鮮明に描写されており、まるで文学作品を読んでいるような気分になります。そう、田山さんはライターではなく「作家」と呼ぶにふさわしい文章力と、それを読む者を魅了するカリスマ性を備えた「奇跡のパチプロ」だったんですよ。
また、田山さんは手打ち機の時代からパチプロをやってましたが、晩年はデジパチや一般電役を打つようになり、用賀にネグラ替えを行って以降は前述した「ナナシー」をメインに凌いでおられました。
ちなみに、私がパチスロ必勝ガイドのライターになったのは1995年の末につき、田山さんとお近づきになる時間は十分にあったんですけどね。田山さんがガイド編集部に来られることなど基本的にありませんし、かといって田山さんのホームグラウンド(この当時はブクロのS店)まで会いに行くのはタブーです。いや、実際には田山さんのファンが手土産にお酒を持ってS店に押しかけることも多かったようですが、私は若い頃にパチスロの師匠から「仕事中のプロの手を止める行為は絶対にするな」と叩き込まれていたので(当コラムの第35話を参照)、お会いしたい気持ちをぐっと抑えていました。その結果、田山さんにお会いする機会は一度しかなく、1998年の12月18日に行われたガイド編集部の合同忘年会でご挨拶させて頂いただけでした。
「パチスロ必勝ガイドライターの広石と申します。田山さんをずっと応援してますので、これからも頑張ってください」
極度の緊張感でガチガチになりながら、かろうじて声を絞り出した私に対し、田山さんは大好きなお酒をちびりちびりやりながら次のように答えました。
「君はパチプロになりたいのかい? だったら悪いことは言わないから、こんなヤクザな商売をやろうなんて考えない方がいい。店からは煙たがられるし一般客からは嫌われるし、パチプロになって良いことなんてひとっつもないよ」
思わずジーンとしました。というのも、この言葉は田山さんの口癖だったそうで、パチプロになりたいと言ってきた若者には必ずこう返していたと聞きます。私は別にパチプロになりたいわけじゃないし、むしろ本業はパチスロなのだけど、私にもこの言葉をかけてくださったのが凄く嬉しくてね。まさに一期一会でした。
田山さんが「いかに慕われてたか」の証左
そして、田山さんが2001年の7月4日に亡くなって以降、田山さんを慕う関係者が命日の直近の週末に合同お墓参りをするようになりました。コロナ禍につき去年までの3年間は各人でバラバラにお参りしてたのですが、今年はコロナが5類になったこともあり、久しぶりに合同お墓参りをしようじゃないか…という話になって、去る7月4日に田山さんの墓前で両手を合わせてきましたよ。
今年の合同お墓参りに参加したのは30人ほど。ガイドの元編集局長・末井昭さん、パチンコ必勝ガイドの重鎮・安田一彦さん、三本の矢でお馴染みのモデル・オノさん、同じく小池さん、スロマガライターのしのけんさん…等々。集合写真は末井さんのツイッターにアップされてますので、気になる方はそちらをご参照ください。
個人的に凄いと思うのは、参加者が年を経るごとに増えてるってことです。こういう合同お墓参りっていうのは、年々参加者が減っていくのが普通じゃないですか。だけど、田山さんのお墓参りに限っては、すでに23回忌なのに増えちゃってるんですよねぇ…。
「これはやはり、田山さんがいかに慕われてたか…の証左ですね」
暗黙の了解の時間にそう呟いた私に対し、右斜め前に座っていた小池さんが「いや、みんな酒のアテが欲しいだけなんじゃね?」と身も蓋もないことを言いました。
まぁ、それが本当のところなのかなぁ…と思いつつ、私は来年も田山さんの合同お墓参りに参加します。