「パチスロに浸食された脳」が幽霊転校生から思い浮かべるのは…【濱マモルののほほんコラムVol.160~ゼロボーナス~】
パチスロライター・濱マモルの最新コラム
20数年前に母親が他界した際、祖父母に言われるがままに田舎の土地を相続した。
母親は愛媛県の生まれだ。幼少期には横浜へ引っ越してきたそうだから、それ以前に住んでいたあたりの土地なのだろうが、そこは陸の孤島とも呼ばれる僻地だそうで、価値はほとんどない。
それでも固定資産税は発生するし、そんな訪れることなどないだろう土地はいらんと、アタシは全力で拒否したものの、祖父母には「税金は払うから。負担はかけないから」とゴリ押しされ、ならばと了承。月日が経つにつれてそんなことはすっかり忘れていたが、昨年に祖父が旅立ち、結局、負担を背負うことになった。
厳密に言うと、その土地はアタシと妹に権利がある。ただ、前回や前々回のコラムで書いた通り、妹はケニア在住だ。わざわざ毎年、半額分を振り込んでもらうのも悪いし、そもそもほぼ無価値で税額も少ないし、じゃあ今回の帰国を機に名義をアタシひとりに切り替えようと各種手続きを始めたところ、様々な問題が勃発した。
まず、その土地の権利書にはどちらも「橋本(本名)」で記されている。妹は嫁いで苗字が変わっており、それを証明するためには住民票などを取る必要があるらしいのだが、困ったことに住民票は転出している。
詳しくは忘れたが、となると住民票を転入させなければならないらしく、妹は仕方なく我が家の近所に住む叔母の住所で申請したそうだ。まぁ実際、滞在中はそこを拠点にしているし、間違いではない。
「なんでここまで面倒なのよぉぉぉ」。手続きの都度、妹から愚痴の連絡が入り、アタシは飲みながら「まぁまぁ」となだめていたのだが、それでも怒りは収まらない。聞けばどうやら住民票を転入させた手前、14歳の姪っ子は滞在中、近隣の中学校へ転校という形で通わなければならないのだそうだ。
もちろん、姪っ子はケニアの学校に通っている。姪っ子にとって今回の日本滞在は長期旅行のようなものであり、帰国後は再び通学するのだから、わざわざ日本の中学校へ転向する意味はないし、そもそもカリキュラムがまるで違う。
「パチスロに浸食された脳」が思い浮かべるのは…
「この融通の利かなさはなんなのよぉぉぉ」と憤る妹は転校をきっぱり拒否するも手続きからは逃れられず、結果、わずか1ヵ月ほどだけ籍を置く幽霊転校生が誕生したというわけだ。
この話を聞き、件の中学校に通う息子は大爆笑。「先輩に話してみようかな。転校したのに1日も来なくてすぐいなくなった人がいるでしょ? あれ、うちの従姉妹なんだ…って」と嫁さんや我が妹とワイワイ話していたが、パチスロに浸食された脳が幽霊転校生から真っ先に思い浮かべるのは、やはりゼロボーナスである。
「1日でも通えば『パチスロ頭文字D』みたいなもんだな」。数々のゼロボ搭載機を頭の中でピックアップし、ひとりほくそ笑んでしまったのだから、つくづく自分が情けなくなりました。
(文=濱マモル)
〈著者プロフィール〉
神奈川県横浜市出身。レコード会社勤務の後、フリーライターへ転身。パチンコ・パチスロやギャンブル系を中心に、野球、音楽、街情報など幅広い分野で執筆する。特技は料理と飲酒で、超常現象好き。ドラマーとしての顔も持つ。
■Twitter(@hamamamoru777):濱マモル