プロとして頑張るために必要な事とは? ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第8話 伝説の0号機攻略【全4回/その4】/攻略プロを引退

 U氏の話はまだまだ続く。

〇〇〇
(聞き手=ドラゴン広石)

増減がなくなるから確実に勝てたのよ

「BBMが終わった後は『モンスター(北電子)』を追いかけました。

モンスターはパチンコの枠に入ってた。これがBBMと絵柄配列が一緒でね。面白いことにボーナス成立後に揃えずに回していると、ボーナスが上乗せされるんですよ。100G回せばストックを1個、もう100G回してストック2個…といった感じでね。

そして、ハズしてる間は当倍返し的な処理で小役が頻繁に揃ったから、それを延々と繰り返してボーナスを貯めて、さぁこれでもう十分ってなった時に、ボーナスを一気に放出してヤメる。初当りを引くまでお金は使うけど、後は増減がなくなるから確実に勝てたのよ。

ただし、適当に打ったらボーナスが揃っちゃうから、ハズしつつ小役を回収するだけの目押し技量が必要だった。リールが細く、絵柄も小さく、照明すらない時代だったから、当時の素人さんには絶対に無理だったと思うよ。

ちなみに、この機種は池袋西口の●●●に入ってました。多くのプロが押し寄せたから長持ちしなかったけど、まぁまぁ美味しい機種だったね」

北電子の0号機『モンスターパートⅠ』。パチンコ台と同サイズの木製枠を筐体に使用しており、コインを縦に持って手前から奥方向に投入する、非常に珍しい形状のコイン投入口を標準装備していた。(写真は「パチスロ大図鑑2001/ガイドワークス刊」より)

――他にも攻略機種はありますか?

「少しの間だけど、東京パブコの『バイキング』を打ってました。この機種は小役抜きが出来たのよ。この頃はアップライト型の時代と違って、ボーナスが1回出たあとは店が決めた定量まで出続ける機種が多かった。ところが、仮に800枚で定量だとしても、小役だけで抜けば電源が落ちないわけだよ。

それで、地元のプロ仲間と情報を共有したらみんな始めちゃってね。だけど、これをやっちゃうと…たとえばプロが800枚抜いてヤメるでしょ。そうすると、次に座った素人さんがどうなるかわかるよね。

そう、出ない。絶対に出ない。なぜなら素人さんが800枚打ち込んで、ようやく初期状態に戻るわけだから。たぶん中身が差枚数吸い込みだったんだろうね。店側にしたらエラい迷惑なわけですよ。それで、いつだったか事務所に引っ張られた。それで、あんたらメーカーの人間なのか…と問い詰められて(笑)。

それで、違いますよ、たまたま出ただけですよ…って答えたら、そう、あくまで穏やかに答えたら(笑)、店側は何を勘違いしたのか知らないけど、しばらくして差枚数で電源が切れる仕様に変更したんです。わざわざ配線を繋ぎ直してね。つまり、素人さんが打って定量になるのと、我々が800枚出すのを同じ意味合いにしちゃったんですよ。

それはそれで店側はいいのかも…と思ったんだけど、我々が定量にした台の続きを素人さんが打っても出ないから、店にとっては何も良いことがない。バイキングは電源オフで初期化されなかったからね。

後になってわかったことだけど、この店のバイキングには何か特別なモノが仕込まれていたみたいなのね。要はハウスモノってこと。当時、ニューヨーカーとかシリウスとか、みんな兄弟機で似たようなプログラムだったのに、小役を800枚も抜けたのはこの店のバイキングだけだった。

当時はこういうことって普通にあったのよ。しかも、バイキングの小役抜きは「配列の盲点をついて強制的に抜く」わけじゃなく、正確に狙ったら揃っちゃう仕様だった。

おそらく、メーカー開発者の誰かが、自分で小遣い稼ぎをするために、こっそりと仕込んだものだったと思う。ただ、あまりにも単純な内容だったから、我々プロに簡単にバレちゃっただけでね。当時はメーカーの開発にも悪さをする人間が居たってことだ」

――すごい話ですね(笑)。

東京パブコの0号機『バイキング』では、7絵柄の代わりに海賊船がボーナス絵柄に採用されている。この機種名は1.5号機の「バイキングマスター」まで使用された。(写真は「パチスロ大図鑑2001/ガイドワークス刊」より)

「それからしばらくして、セブン機が大ブームになってね。いろんな機種があったけど、いろんな機種に手を出しても器用貧乏になっちゃうから、私は西陣専門でやってた。いわゆるストップボタン攻略だね。

ターボXとLがあったけど、設置台数はXの方が多かったから、自然とLは打たなくなった。パンクが少ない良い台だったんだけどね。台数が少ないと狙いにくいのは間違いないから。

このとき、私の中で葛藤があったのよ。どっちが身入りが大きい? スロの攻略を続けるのと、ターボXを追いかけるのとどっちがカタい…ってね。

それで、結局はターボ解明の道を選んだ。だから、1号機以降はパチスロを追いかけていない。以後は攻略ネタが出るたびに片手間でコチラの世界に戻る感じで、世界全滅とか、コンチの4枚掛けとか、ムサシの盤面押しとかね。他にも攻略ネタは流れてきたけど、実際にやったのはこれくらい。攻略プロを引退したような気分でしたよ」

――それで現場から手をひいたわけですね。

「30才のときに攻略が一段落してね。それで体感機の会社を作りました。関東で初めて万能体感機を作ったのは私なんですよ。当時の攻略雑誌に紹介されたりもしました。最後に作った体感機は、黄門ちゃまとマジカルランプだったかなぁ…」

――今は全く打つことがないんですか?

「今のスロは打たないよ。遊びで打つと養分になっちゃうから。ゾーン狙いとかもやろうと思えばできるけど、期待値が数百円の世界だったりするじゃない。なのに敵が多いっていうのは疲れるだけですよ」

――最後に、スロプロを目指す若い人たちに一言お願いします。

「プロとして頑張るには、効率の良いことをやるしかない。私たちの時代と違って、今はウェブ検索能力、体力、人間関係が非常に大事だと思う。いずれにせよ、プロとして喰っていくには中途半端ではいけない。自分の人生の貴重な時間を潰してやる以上、徹底的にやりなさい」

――ありがとうございました。

 …以上が2016年に私がU氏にインタビューした内容のほぼ全てです。ガイド本誌ではコンプライアンス的に書けなかった部分も、なるべく元の意味に忠実になるよう配慮しつつ記述しました。

 これを読んでどう感じるかは読者の皆さん次第ですけど、私にはU氏の最後の言葉が今でも耳に残っています。

「自分の人生の貴重な時間を潰してやる以上、徹底的にやりなさい」

 もしかすると、U氏は人生の貴重な時間をパチスロなんかに浪費するな…と言いたかったのかも知れない。

 な~んてね。

END.
4週間に渡ってお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

ドラゴン広石

ドラゴン広石(昭和38年12月生まれ)
平成7年に白夜書房「パチンコ必勝ガイド」編集部の門を叩き、パチスロの知識と経験、目押し力を買われて「パチスロ必勝ガイド」のライターに採用された。リアルタイムで「パチスロ0号機」を遊技した経験を持つ、唯一のパチスロライターである。令和4年現在でライター歴は27年。代表作に「枠上人生」、「浮草家計簿」(連載中)、「回胴絶景」(連載中)など。1日の最大勝ち額~プラス41万3千円(クラブロデオT)、1日の最大負け額~マイナス12万9千円(初代・北斗の拳)。

Twitter:@dragon_hiroishi

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