パチスロ「本土ではマイナーに終わるも沖縄ではいまも大人気の三冠王」~4号機名機伝説~ 『トリプルクラウン』シリーズ 後編【アニマルかつみの回胴青春時代Vol.96】
名古屋駅で新幹線を降り、名鉄線に乗り換えて小一時間ほどだったか。具体的な場所などは忘れてしまったが、まぁまぁ田舎な郊外のロードサイドに、その店はあった。
逸る気持ちをおさえながらパチスロコーナーに向かうと、奥のシマに純白のパネルもまばゆい『トリプルクラウンⅢ』がズラリと鎮座していて、先発隊の二人、S君とD君が常連客に交じって黙々と打っているのが見えた。
「…お。やっと来たね。待ってたよ。さっそくなんだけど…」
そういうとS君は、店の外に出るよう目配せをした。
前日から現地入りし、常連客から話を聞きつつデータ取りをしていたS君は、シマの状況を記したメモを見せながら言った。
「確かに連チャンはビッグオンリーで7連チャンなんだけど、どうやら連チャンと連チャンの合間の単発ビッグの回数で、設定が読めるみたいなんだよね」
きけば、3号機時代の貯金方式の裏モノのようにハマっては連チャンを繰り返すのだが、単発ビッグの回数が連チャン発動の決め手となっているらしく、「少ない単発回数で連チャンする台ほど高設定、すなわち狙い目」というのである。
単発ビッグの回数をカウントすることで、その台が高設定か否か、あるいは連チャン間近かどうかが判断できる。すなわち「ハイエナが効く」ということで、思わず心の中で「これはオイシイかも」と小躍りしてしまった。
が、人の出入りの激しい都会の店ならともかく、ここは常連客がメインの田舎の店。勝手知らずのよそ者が目立ったことをするわけにはいかない。黙々とデータを取りつつシマの状況をチェックし、チャンスが訪れるのを待った。
確かにビッグオンリーの7連チャンワンセットは強烈かつボリューム満点だったが、通常時の小役やリプレイが激しくカットされていてぜんぜん回らないので、ちょっとでも深いハマリを喰らってしまうと、たちまち持ちコインは尽きてしまう。凶暴性は、先の仙台で打ったものとは比べものにならなかった。
結局、空き台ハイエナに関しては芳しい結果は得られなかったが(いまと違ってデータ表示器が無かったことも大きい)、ゲーム性や出玉性能についてはモーレツにソソるものがあったので、「関東にも上陸してくれないかなぁ」と思いつつ、取材を終えて帰途に就いた。
しかし、残念ながら同バージョンは件の愛知の店など中京地区のごくごく限られたエリアにのみとどまり、関東上陸を果たすことはなかった。そもそも、先の『Ⅰ』にしろ、雑誌の誌面は賑わせたものの設置は思ったほど伸びず、マイナーな存在に甘んじていた。
機種名とは裏腹に、まったくもってメジャー級の活躍には至らなかった『トリプルクラウン』シリーズ。ところが、ある地域だけは事情が違った。ほかでもない、沖縄だ。
90年代半ば、長年親しまれてきたアップライト型機が当局の指導により撤去されることとなったのだが、そのタイミングを狙って、告知機能を備えた沖縄向けの専用機『トリプルクラウンⅡ-30』が上陸。
すると、純然たるノーマル仕様ながらも、なぜか物凄い勢いで市場を席巻。たちまち沖縄スロットシーンにおける人気ナンバーワン機種の座に登り詰めたのである。
国道58号線、通称「ゴッパチ」など幹線道路沿いにあるホールは、競うように告知ランプの「バット&ボール」を模した看板を立て、また連日のように同機種にちなんだ集客イベントを開催。新たな時代を迎えた沖縄スロットシーンは、『トリクラ』を中心に大きな盛り上がりを見せ、いまに至っている。
残念ながらマックスアライド社は2001年、諸般の事情によりパチスロ業界から撤退してしまったが、同社の遺志を受け継ぐ他メーカーが精力的に継承機をリリース。
そして『トリクラ』は、本土とは異なる独自の回胴文化を保ち続ける沖縄において、絶対的王者の座を堅持するのであった。
(文=アニマルかつみ)
〈著者プロフィール〉
兵庫県尼崎市出身。1992年春にパチスロ必勝ガイドのライターとなり、以来30年にわたってメディア人の立場から業界の変遷を見つめてきた大ベテラン。ぱちんこ・パチスロの歴史に関しては誰にも負けない博識を持つ。最近ではYouTube動画チャンネル「ぱち馬鹿」のメンバーとして、各種企画の制作や出演、生配信などにも精を出している。ライター稼業のかたわら、ロックバンドのベースプレイヤーとしても活動中。愛猫家。昭和レトロ好き。
■Twitter(@anikatsu213):ANI-Katsu(アニマルかつみ)
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