「敵対関係」にあると思っていたが予期せぬ展開に…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第11話:パイオニアの思い出~前編】
第11話 パイオニアの思い出~前編
パチスロメーカーの株式会社パイオニア…と聞けば、多くの人がシオサイシリーズやハナハナシリーズなど多くの30πヒット機種を輩出した「沖スロメーカー」というイメージを思い浮かべると思います。
実際、5号機以降は30π機のシェアが大半を占め、25π機は数えるほどしかリリースしてないため、その印象も間違いではないのですが、実は4号機時代の中盤にスマッシュヒットを放った「シオサイ-30」より以前は、25π機を主力とする本土仕様パチスロの老舗メーカーだったんです。
…というわけで、今回の昔話は25π機時代のパイオニアの思い出を語ります。
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時は97年の末。当時、私はパチスロ必勝ガイドでパイオニアの新機種『ブンブンブン』の担当ライターを任されてました。それで、デビュー後のホール実戦の際に「リプレイハズシの効果が高そうだ」という感触を得て、リプレイハズシ再検証のデータ取りを行うことになったんです。ここまではよくある話でした。
ただ、困ったのはホール選び。ブンブンブンのデビュー当初は設置台数が非常に少なく、数少ない設置店は上野界隈に集中してたんですが、当時は「上野のパチスロにはマイナス設定があるんじゃないか?」と揶揄されるほど出玉状況が厳しく、「上野でデータ取りしたら必要なサンプルを採取するのにいくら負けるかわからない」と苦情が出たんですよ。いや、実戦の担当者たちから。
データ取りが彼らの仕事とはいえ、誰だって負けたくはありません。しかも、今回必要なのは1日を通した実戦データ(出玉推移を分析するために台移動は不可)ではなく、リプレイハズシの実戦サンプルのみです。だったら、設定状況のシブいホールで無理して実戦するよりは、ダメモトでメーカーさんに頼んでみたらどうかな?
今なら誰もがそう考えます。実際、現在のパチスロ必勝ガイドでホール実戦を行うのは、数少ない実戦企画、DVDの実戦動画、91時間バトルくらいであり、他は全てメーカーさんのショールームにお邪魔してデータ採取を行っています。取材を依頼されたメーカーさん側にしても、自社の新機種が全国誌を使ってタダで紹介できるし、互いにメリットがあるから積極的に引き受けてくれるのが普通です。
だけどね、昔はそう簡単じゃなかったんですよ。
なぜなら、我々パチスロ必勝ガイドは「攻略する側」、それに対してメーカーさんは「攻略される側」であり、ようするにバチバチの敵対関係にあったんですから。
なので、断られるのを覚悟の上で取材をお願いしたんですけどね。パイオニアの広報室に取材依頼の電話をかけたのは編集の内池さん(現・沖ヒカル氏)。それがまさか二つ返事でOKを頂くとは意外すぎて、逆にすげぇ慌てたと後に内池さんは語ってました。
ともあれ、快く取材許可をいただいた結果、11月27日の午後にパイオニアさんのショールームにお邪魔することになりました。その日、ブンブンブンの担当編集である内池さんに同行したのは、担当ライターの私・広石と、カメラマンのF氏の2名です。
せっかくだから来春にデビュー予定の新機種「プリティモー」の取材もしていきませんか…と、パイオニアの企画開発次長さんに話を持ちかけられて、いえ、そちらは結構ですとはさすがに失礼すぎて言えないから、カメラマンに筐体写真とパーツの撮影を依頼して(撮影指示を内池さんが行う)、私ひとりでブンブンブンのリプレイハズシデータを採取することになりました。
メーカーさんにはアタリROM(特別なコマンドを入力することにより、自由自在に成立役のフラグを立てることができる特殊基板)があるのでド楽勝。もしもホールで実戦する場合、最初に自力でビッグを引く必要がありますが、スイッチポンでビッグフラグを立てられるので、夕方過ぎにはリプレイハズシデータ100本と、フリー打ち100本のサンプルを採取できました(比較対象のデータも同数採取)。
内池さんが指揮していた写真撮影の方も問題なく終了し、受付で「本日は誠にありがとうございました。誌面づくりにご協力くださったことを深く感謝いたします」とお礼を述べて帰ろうとしたんですが、いやいや少しお待ちくださいよと、せっかくお近づきになれたんだからお食事にご一緒しませんか…と、パイオニアさんの偉い方(頂戴した名刺には、株式会社パイオニア 大阪本社 営業本部部長Kと書かれていました)に誘われて、普段はその手の付き合いを極端に嫌う内池さんも、そうした感情を全く面に出さず、喜んでご一緒しますと答えたことで、私とF氏も食事に同行することになりました。
ところが、ついて行って驚きました。行き先はなんと回らないお寿司の高級店。さらに、食事後は夜の街に誘われて、綺麗なお姉さんとハイソな会話を楽しむお酒の店に向かったんです。K部長さんは「お食事会」と仰っていたけれど、これって要は接待じゃん!
いったい、自分たちに何を期待して接待してくれたのか、今もってわからないのですが、このK部長さんという人はすげぇ遣り手の営業マンっぽく、場違いのお酒の店に緊張している私を気遣って、即興で手品を見せてくれたり(凄く手慣れてました。まさにセミプロレベルの手品師だと思います)、私が大分県の出身だと知ると、K部長さんが担当していた大分市のホールの裏話なんかも教えてくださったりして、本当に楽しかったです。
でまぁ、他で話す機会もないので、この時、K部長さんに教えていただいたエピソードの一部を紹介しようと思ってたんですが、ちょっと文字数が多くなりすぎたため、それに関しては次回のコラムで紹介しようと思います。
そして…あれから約25年が経過しました。当時、おそらくK部長さんは40代の後半か50代の前半くらいだったと思います。ということは、すでにパイオニアさんを退職されて個人で販社か何かを経営されているか、もしくは同社の顧問として関わっておられるか…。いずれにせよ、ご健在であればこの業界で活躍されてると思うのですが、今もセミプロ級の手品を綺麗なお姉さんに披露しているんでしょうかね。
そうだといいなぁ…。
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