パチンコ「驚愕!! 大当りしていないのに玉がジャラジャラと!?~駅向こうT会館での出来事~」【アニマルかつみの銀玉回顧録 Vol.009】
アニマルかつみの銀玉回顧録 Vol.009
これまで、家から最寄りのホームグラウンドJ店での話ばかりしてきたが、今回は他の店でのことを書いてみたいと思う。
当時、関西のパチンコ店は、組合の申し合わせによる輪番休業日というのがあって、だいたい月曜日とか火曜日には、地域のどこかの店が休みになるという慣習というか制度があった。
最寄りのT駅界隈のパチンコ店も例外ではなく、J店が休みの日は必然的に、他の3店舗へ足を伸ばすことになるわけだが、J店向かいのS店は設置機種のラインナップが好みでなかったのと店内のムードがしっくりこなかったので、もっぱら南口のM店やT会館へ行くことが多かった。
前にも書いたとおり、M店はJ店の姉妹店。人気どころのラインナップはほぼ共通だったので、機種選びに困ることはなかった。が、J店には無い機種もいくつかあり、それが興味をそそった。
中でも特に思い出に残っているのが、「ちんどん屋」をモチーフにした西陣のハネモノ、『ちんどんショー』だ。
なお、前身機として『ちんどん屋P-1』『~P-2』の2作があり、前者はヘソチャッカーがチューリップ、後者はすべてのチャッカーがチューリップという仕様だった。
役モノ内には太鼓を担いだ「ちんどん屋」のおっちゃん(の人形)がいて、大当りになると「大開放」と書かれた垂れ幕が下がり、鐘や太鼓の音に乗って「ピクッピクッ」と飛び跳ね、打ち手を楽しませてくれる。
貯留は行われないが、ラウンド中盤以降は「お客様は神様です」のかけ声とともに羽根の開閉速度が遅くなるとともに手前中央Vゾーンの幅が拡大し、継続をサポートしてくれる仕組みだった。
Vゾーンが拡大するという構造は当時としては斬新だったが、それよりも「ダブルが発生しやすい」という特徴が、ファンに間では話題になっていた。
大当りの最終ラウンドで羽根が規定である18回の開閉を終えたあと、なぜかもう1回だけ羽根が開く。その時、Vゾーンに入賞すると、再びそこから最大8ラウンドの大当りが始まってしまうのである。
そういう仕様だったのか、あるいはバグだったのか。いまとなっては知る術もないが、とにかく運良くダブルやトリプルを重ねればあっという間に予定終了となるわけで、コミカルなモチーフとは対照的に、なかなか過激な出玉性能を持っていた。
一方、スーパーの1階にあったT会館では、「ちょっとしたアクシデント」に見舞われたことがある。当時、人気だった三共のドラム式デジパチ『フィーバーアバンテⅦ』を打っていた時のことだ。
本題に入る前に仕様について触れておくと、大当り確率は250分の1。ドラムで0~9の数字が3つ揃いになり(確率100分の1)、なおかつドラム上部のデジタルに「7」か「F」が表示されると(確率5分の2)、大当りとなる。
ちなみに、ドラムにゾロ目が揃ってデジタルが「U」、「P」、「L」といった出目が表示された場合は、単なるハズレ。以前には、小当たりとしてアタッカーが数秒開く機種もあったが、本作の場合は残念ながら何も起こらない。
その日、初めて本作に触れる駆け出しの素人が、そんなことなど知る由もないわけで、ドラムに「6」が揃って何も起こらないことを不審に思い、すかさず台上のランプを押した。
面倒臭そうに鍵束をジャラジャラさせながらやってきたパンチ頭の店員は、半笑いでこちらの訴えを一蹴した。
「なんや、兄ちゃん。知らんのかいな。あの…な。ココに『7』か『F』が出な、当りちゃうねんで」
なんだかモヤモヤしつつも、「ならば、当ててやろうじゃないか」と奮起し、遊技を続けた。ところが、しばらくすると「事件」が起こった。ドラム左上の風車付近に玉が詰まり始め、あれよあれよという間に「ブドウ」が出来上がってしまったのである。
「まぁ、そのうち、バラケてくれるやろ」
そう思い、構わず打ち続けた。すると、「ブドウ」に導かれた玉が、ふだんは入賞することのない13個戻しのチャッカーにどんどん流れてゆき、玉がどんどん溢れてきた。
最初のうちは、なんだかちょっぴり得した気分だった。しかし、さすがにドル箱の半分くらい溜まったところで「やばい」と思い、ハンドルから手を離した。
「どないしょうか、これ…」
いまと違って当時は、出玉は客が自分で運んで自分で計量して景品と交換するシステムだった。だから、「しれ~」と流そうかとも思った。しかし、大当りもしていないのに相当量の玉をカウンタに運ぶと、不審に思われてしまう。
「まずいなぁ。どないしよう…」
そんな風に途方に暮れていると、さきほどのパンチ頭の店員がそばを通りかかった
「あの、これ…」
店員を呼び止め、たわわに実った「ブドウ」と、ドル箱に溜まった玉を恐る恐る指さした。
「あかんがな、兄ちゃん!! あ~あ、こんなになってもうて…」
烈火のごとく怒鳴り散らしながら、台のガラスを開けるパンチ店員。「ブドウ」を形成していた玉がたちまち「バラバラ」とこぼれ落ちてくる。
「こんど詰まったら、すぐに呼ぶんやで!!」
そういうとパンチ店員は、「ブドウ」によって払い出された玉を持って、カウンターの方に消えた。
気を取り直し、遊技を再開する。しかし、ドラムには幾度となくゾロ目が揃うものの、最後の審判である上部デジタルには一向に「7」や「F」が表示されない。やがて気持ちも折れ(というか、軍資金が底を尽き)、大当りを引くことなくT会館をあとにした。
そんなこともあって、その後しばらくはT会館から足が遠退き、またドラム+デジタル併用式の三共のデジパチに対しては苦手な印象が付いてしまった。
ともかく、輪番休業によりJ店が休みになる火曜日は、不慣れな他店で色々と四苦八苦していたことの方が多かったと記憶している。
ところでM店は昨年、J店は今年の春頃だったか。関西に本拠を置く大手チェーンU社に買い取られ、屋号も「K」に変わった。が、T会館だけはいまも変わらず、昔ながらの駅前のパチンコ屋として営業を続けているらしい。
こんど帰省した際には、久しぶりに覗いてみようか。まぁ、あの時のパンチ頭の店員は、もういないだろうけど。
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