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ぼくらはあの頃、アツかった(17) 四号機から五号機へ。キャッチボールからパチスロへ。北斗世代の友達との思い出。

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 田舎の友達。Y君という漢の話だ。

 学生時代からの友達である。出会った当初、彼はいわゆるひとつの、ヤンキーと呼ばれる男だった。ロン毛にチリチリのパーマ。二の腕にバチッと入ったタトゥ。身長は筆者より頭一つ大きく、表情には険があった。あんまりお近づきになりたい感じの外見ではなかったが、話してみると、意外にも彼はとても優しかった。外見と中身のギャップ。そこにすっかりとやられ、筆者はその後長きに渡り、彼とつるむようになった。今でこそタメ口だが、最初の2年くらいはガッツリ敬語で話してたように思う。同級生であるにもかかわらずである。筆者はチキンだったのだ。

 なんだかんだで大学まで一緒の所へ行く事になった我々の密かな愉しみの一つに、キャッチボールがあった。暇な休日など、車のトランクにグローブとボールを積み、海沿いにあるナメクジみたいな形の公園でただ、ボールを投げる。受け取る。投げる。受け取る。繰り返す──。今思うと健康的で実に結構な趣味だったが、ある時筆者はキャッチボールに飽きてしまった。キャッチボールより面白いものを知ってしまったからである。

 そう、パチスロだ。

 パチスロに比べると、あらゆる趣味が霞んで見えた。

 中学時代から「毎日最低一本は見る」と決めてほんとにほぼ完遂してた映画鑑賞も、その頃はすっかり頻度が減っていた。パチスロのおかげである。また「週に一冊はなんでもいいから活字の本を読む」と決めていたのも、パチスロと出会ったあたりでその数が激減していた。キャッチボールなんぞ、ないがしろになって然るべきであって、実際そうなった。
それは取りも直さず、Y君との距離が広がった事と同義だったのだが、筆者は長らくそれに気づかなかった。

 そう。パチスロは凄く楽しい。だが一方で、失うものも多い。

 マネーが代表例だが、それに関しては努力次第である程度解決が可能だ……というよりそれで利殖しているプロの人もいる。実際に失うものは、お金よりもむしろ「時間」だ。
それは言い換えるならば日常であり、あるいはそれまでの友好関係──友達である。

 無論、パチスロを打つことで広がる友好関係もあるだろう。実際筆者もホールで知り合った友人というものが沢山居る。だが一方で、失った交友もまた多い。

 Y君などはその代表例で、ある時を境に彼とは一気に疎遠になった。キャッチボールよりパチスロを優先し続けた結果だった。

 あれは2005年の初頭だった。

 筆者は深刻なキャッチボール不足に陥っていた。運動不足ではない。キャッチボール不足である。いい加減、球の投げ方を忘れそうになっていた。当時は毎日朝から晩までひたすらパチスロを打っていた。主に北斗である。パチスロに一番ハマっていたのはもっと前──爆裂AT機が主流の頃だったが、一番時間を使っていたのはこの頃だったと思う。理由は簡単で、友達が減ってしまっていたからである。他にやることが無いからホールに行き、押し順ナビに従ってアタアタホワタと黄色い雑魚をぶっ飛ばす。そうする事でますます友達と疎遠になる。暇だから友達と連絡とって遊びに行こう……という発想はなかった。時間があるならスロ、という固定観念に支配されていた。悪循環である。

 そういえば、もう一年近くY君と遊んでいない。学校で顔を合わせてたまにご飯を食べる程度の、カジュアルな関係になってしまっている。ある時気づいてちょっと怖くなった。
なので筆者は、Y君に連絡を取った。

 キャッチボールのため──あるいは、旧交を温めるためだ。

「やあ、久しぶり」
「おお。珍しいな。どうした」

 電話口のY君。

 ゼミの話。クラブの話。就活の話。学生生活を謳歌するY君の話に相槌を打ちながら、全く話題について行けていない自分に気づいて愕然とした。筆者はもはや、大学生というよりも、大学を休学してスロばっかり打ってる近所の駄目な兄ちゃんみたいになっていた。

 当たり障りのない返事をしつつ、冷静さを装って筆者はこう告げた。

「ねえY君。久々にキャッチボールいかない?」
「お。いいねぇ。いく?」
「うん。いこう。今日は? 暇?」
「今日は──。ゴメン。ちょっと予定があって」
「なに。学校かい?」
「いや──」

 Y君はちょっと照れたようにこういった。

「T市のパチ屋でイベントあってさ。打ちにいく」
「え!? Y君スロ打つの!?」
「うん。最近ちょっとね……」
「言ってよそれ! なんで言わないの! 何打ってるの?」
「まぁ……北斗?」
「でた! 北斗世代! よっしゃ、行こう! 一緒に」
「ああ……助かるよ。俺スイカの目押しできないからさ……」

 筆者の頭の中から、キャッチボールという単語が完全に消えた。久々に2人で並んで車に乗って、T市のスロ屋へ向かい、そして北斗を打った。Y君が途中で北斗絵柄揃いをブチかまして盛り上がったけど、二連で終わった。結果的に2人してボコボコに負けたけれど、とても楽しい連れ打ちだった。

 その一年後、筆者が地元を完全に離れてしまうまで、筆者の稼働はほとんどY君とワンセットだった。

 折しも時代は四号機から五号機へ。時代の過渡期である。アンニュイな気分で斜陽に浸りつつ四号機の残滓にしがみつく者。あるいは未だ見ぬ五号機への期待に胸を膨らませる者。希望と絶望がマーブルカラーに混じるカオスな時期だったが、筆者は当時を思い返すたびに、日々スロッターとして成長してゆくY君の笑顔を思い出す。結局その後、一度もキャッチボールには行かなかったけど、2人で打ったあの頃のパチスロの思い出は、筆者の一生の宝ものになっている。

【あしの】都内在住、37歳。あるときはパチスロライター。ある時は会社員。年末くらいからライター一本で頑張ります。ブログ「5スロで稼げるか?」の中の人。

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