一撃でドル箱の山を築けた「破壊的な攻略法」を実践してみたが…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第42話:ドリームセブンJr.】

第42話 ドリームセブンJr.

 かつて、関西の名門メーカーとして名を馳せた高砂電器産業は、日電協発足当初からの組合員としてパチスロ業界の発展に尽力していました。

 最初期の日電協加盟メーカーは次の通り(パチスロ大図鑑2001の記述より引用)。

・マックス商事
・尚球社
・瑞穂製作所
・パイオニア
・高砂電器産業
・エボン
・ナック製作所
・ひらどや
・東京パブコ

 いずれも若い人には馴染みの薄いメーカー名だと思いますが、マックス商事は後に「マックスアライド」に社名を変えて沖縄仕様機(4号機のトリプルクラウン30など)をヒットさせたパチスロ業界の老舗ですし、尚球社は現・岡崎産業、瑞穂製作所は現・ミズホ、東京パブコは伝説の連チャン機・アニマル(2号機)で有名なメーカーです。

 そんな中にあって、高砂電器産業(以下、高砂電器)は数々の初機能を搭載したパチスロを開発すると同時に、号機の変遷期には先陣を切って新機種を登場させる「業界の斬り込み隊長」的な立ち位置にありました。

 たとえば、1.5号機時代には沖縄スロットの王者と呼ばれた名機「フェニックス」をリリースし、2号機時代には史上初の目押しインジケーターを搭載した「ウィンクル」が大ヒット(初の2号機でもある)。時が流れて3号機時代を迎えても初物志向は衰えることがなく、史上初の3号機で尚かつ史上初めてビッグ絵柄に「青7」を採用した「ドリームセブン」を発表しました。この頃になると、ファンの間でも初物=高砂電器の機種という認識が定着し、独特のスベリ制御とビタ止まり制御で多くのプレイヤーに支持されたんです。いやはや、凄い開発力ですね、ええ。

 だけど、高砂電器の栄光に陰を落とす事件が起きました。いえ、闇の商人の手で裏モノに改造された…なんていう話じゃありません。3号機時代というのはメーカーも販社も打ち手もコンプライアンスを見失っていた「狂乱の時代」であり、3号機の規則で画一化したゲーム性を打破するために世に登場する大半のパチスロが裏モノ化したんですから。

 まぁ、中には山佐の「スーパープラネット」のように清廉潔白を通した純正ノーマル機もありましたが(ただし局地的には裏モノもあったらしいです)、高砂電器の3号機「ドリームセブンJr.」がいわゆる「状態ver.」と呼ばれる裏モノに化けても、それをもって過去の名声が台無しになる…なんてことはありませんでした。

『ドリームセブンJr.』

高砂電器の3-2号機『ドリームセブンJr.』。赤青2色の7絵柄を採用しており、同色7揃いでビッグ、同色テンパイ+右異色7が揃うとREGとなる。それ以外の7の一直線型は全ての組み合わせがリーチ目となり、当時は「ドリセブ目」と呼ばれて親しまれた。また、同色・異色を問わず7絵柄のテンパイ時に右リールがスベればボーナス成立の期待大だ。大東音響の「マジカルベンハー」は異絵柄同配列の兄弟機である。(写真は「パチスロ大図鑑2001/ガイドワークス刊」より)

 じゃあ、何が問題になったのかというと、破壊的な攻略法が発覚したんですよ。その名もズバリ「1000枚抜き」。

 具体的に説明します。ドリームセブンJr.には絵柄配列&リール制御に致命的な不具合があり、ビッグ中に特定の手順を踏んで目押し(ただし要ビタ押しが2回)すれば小役ゲーム中に「赤777」が揃ったんですよ。

 そして、赤777が揃った瞬間にビッグボーナスが最初から始まります。小役ゲームが30Gなので、永久に出玉を抜くことは不可能ですが、一度もビタ押しをミスせず完璧に手順を遂行すれば、1回のビッグで最高1133枚の出玉を獲得できたんです(理論値)。通常の出玉は約350枚ですから、獲得枚数が3倍以上になるんですよ。スゲェなぁ、オイ!

 ビッグ中に赤777を揃えられる条件は「JACゲーム終了後の1G目」。

1、まずは2枚がけでレバーオン。
2、中リールに「オレンジ・リンゴ・赤7」をビタ押し。
3、右リール上段または中段に赤7を目押し(必ず赤7が下段テンパイする)。
4、最後に左リール上段に赤7の2コマ下にあるチェリーをビタ押し。
5、チェリーをかわす制御で3コマスベる。
6、上段にテンパイしたJACインをかわす制御でさらに1コマスベる。
7、最終的に4コマスベった結果、下段に赤777が入賞する。
8、以上の手順を打ち止め(小役ゲームを30G消化)まで繰り返す。

 これが「1000枚抜き攻略法」の全てです。非常にシビアな手順ですが、これを完璧にこなせば前述したように最大1133枚もの出玉を獲得できたんですな。しかも、ドリームセブンJr.は爆裂連チャン機ですから、いわゆる「状態中」に1000枚抜きを実践したらもう大変。一撃でドル箱の山を築くことになります。当時の設置店はさぞかし大変だったでしょうね。

 ちなみに、この手順は当時から私も知ってましたがホールで実践はしてません。だって、ムチャクチャに目立つんだもの。1ビッグで延々とJACゲームが繰り返されていると、側から見ていて誰だっておかしいと気づきます。

 それに、当時のホールは手動補給(メダルエンプティエラーが出ると、店員さんが台扉を開けてホッパーに直接コインを補給)がほとんどでしたから、気づかない店員さんがいたら職務怠慢です。

 もちろん、プロが抜いてる現場に出くわしたこともないですし、実践したという話もタケちゃん(中武一日二膳さん)がヤンチャだった頃の昔話でしか知りません。

 それでも、私もかつては目押し職人と呼ばれたことがありますし、一度くらい実践してみたいじゃないですか。そんなわけで、先週の末にガイドの企画(スロゲーセンでレトロ機種を打つ企画)でドリームセブンJr.を打った際に、初めて1000枚抜きにチャレンジしてみましたよ(詳細は8月12日発売の「パチスロ必勝ガイドMAX9月号」、MAX50’sの頁をご覧ください)。

 写真は2枚がけでビタ押しに成功した瞬間。いろんな意味でシビれました。

 いやはや、すげぇ攻略法だわ。だけど、実際にやってみて思ったけど、こんなのをホールで実践するのは不可能ですね。私程度の目押し力でも時間をかければ成功しますけど、回転中のリールを凝視して止めるのに5周くらいかかっちゃう。

 当時は「ビッグボーナスの消化中は一服タイム」であり、何も考えずに順押しフリー打ちで消化するのが普通でしたから(変則打ちをしない限り確実に350枚の出玉を獲得できる)、ビッグ中に目を皿のようにして打っているだけで明らかに「何かやってるな」ってわかります。

 だからこそ、破壊力が抜群の攻略法でありながら、プロがブッコ抜いてる現場に遭遇したことが一度もなかったんでしょう。仮にプロが抜く場合でも、タケちゃんのように「側からは適当に打ってるようにしか見えない」くらいの目押しの達人でなければ無理だと思います。

 ところで、攻略法には「純粋なバグ」と「開発者による仕込み」の2種類がありますが、果たして1000枚抜きはどっちだったんでしょうね? 

 まぁ、超高度な目押し力を必要とする攻略法ですから、仮に仕込みだとしても実践できる打ち手は限られます。また、前述したように目立ちますから、開発者自身が小遣い稼ぎに抜くこともできません。だから、結論から言うとバグの可能性が高いんじゃないでしょうか。

 ただ、発見した人は間違いなく天才ですね。昔の機種だからセキュリティは今と比較にならないほど低いけど、普通はこんな攻略法は見つかりませんって。

ドラゴン広石

ドラゴン広石(昭和38年12月生まれ)
平成7年に白夜書房「パチンコ必勝ガイド」編集部の門を叩き、パチスロの知識と経験、目押し力を買われて「パチスロ必勝ガイド」のライターに採用された。リアルタイムで「パチスロ0号機」を遊技した経験を持つ、唯一のパチスロライターである。令和4年現在でライター歴は27年。代表作に「枠上人生」、「浮草家計簿」(連載中)、「回胴絶景」(連載中)など。1日の最大勝ち額~プラス41万3千円(クラブロデオT)、1日の最大負け額~マイナス12万9千円(初代・北斗の拳)。

Twitter:@dragon_hiroishi

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