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「シマ封鎖」の対策が取られた「不運の名機」の思い出【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第41話:ビーナスライン】

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「シマ封鎖」の対策が取られた「不運の名機」の思い出【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第41話:ビーナスライン】の画像1

第41話 ビーナスライン

 昔語りのコラム等で「好きだったパチスロ」を振り返るとき、私はゲーム性やリール制御に惚れ込んだ機種を挙げることが多いです。もちろん、すげぇ勝てたとか、大勝ちしたことがあるとか、そうした出玉要素も機種の面白さを占う重要なポイントですが、身も蓋もないことを言えば「勝てさえすればゲーム性が少々アレでも面白く感じる」のがパチスロなので、ゲーム性の素晴らしさと勝敗は切り離して考えるべきだと私は考えます。

 だけどね、長い歴史を振り返るとあるんですよ。ゲーム性はいうまでもなく絶品、リール制御や出目演出にも凝っていて、現在では当たり前の「小役ナビ演出」を初めて搭載し、通常時&ビッグ中を最適手順で消化するだけで勝てた夢のようなマシンが…。当然のことながら私はこの機種が大好きでした。

 今回は、そんな機種の昔語りにお付き合いください。
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 時は平成10年の12月中旬、後の世で「不運の名機」と語り継がれる『ビーナスライン』をめぐる騒動が起きました。

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オリンピアの『ビーナスライン』。いわゆる「ほうき型」のエクストラライン(中・中・上および中・中・下)を追加した7ライン機で、史上初のチャンスナビを搭載した機種としても知られる。(写真は「パチスロ大図鑑2001/ガイドワークス刊」より)

 この機種はビッグ確率が195分の1~256分の1という、ごくありふれたスペックの7ライン機だったのですが、普通ではなかったのが通常時&ビッグ中の小役確率。通常時は常にDDT打法でプレイして全ての小役を揃え、ビッグ中に正しい手順でリプレイハズシを実践するだけで、メーカー発表値の機械割に対して20~50%も出玉率が跳ね上がりました。

 フル攻略時における設定1の機械割は、驚くことに128.4%。これはもう、「設定1でも負けない」といったレベルではなく、「いついかなる場合でも大勝ちが約束される」という驚異的なものだったのです。

 果たしてこれは単純な設計ミスだったのか、それともメーカー側が客の技量を見誤ったのか…今となっては真実は闇の中ですが、設置店では新装直後からお祭りになりました。

最終的に取れる対策は、台の電源を落として「シマ封鎖」

 まず最初に気づいたのはプロ連中。彼らは「順押しでは全ての小役を引き込めない」ことを知り、逆押し小役狙い手順を編み出しました。そして、それを見た一般客が見よう見まねで逆押しを始め、手順は瞬く間に広がっていったのです。

 もちろん、ビッグ中のリプレイハズシに関しても、その効果はとんでもなく高かった。この当時、7ライン機はハズシ効果がないのが普通でしたが、ビーナスラインの場合には設定1の平均獲得枚数が427.6枚にもなったのです(理論値)。

 結果、ホールは深刻なダメージを受けました。何しろ、10台設置していれば、オール設定1で動かしても1日平均で100万円に近い赤字が出てしまいます(等価交換の場合)。

 変則打ちを禁止すれば攻略法の効果をある程度まで封じることも出来ましたが、オール順押しで消化したとしても設定1の機械割が113.2%(理論値)となってしまい、店側としては完全にお手上げ状態。最終的に取れる対策は、台の電源を落として「シマ封鎖」をする以外になかったのです。

 ほぼ全てのホールからビーナスラインがハズされたのが、平成11年の1月中旬。デビューからわずか1ヶ月で「失敗作」のレッテルを貼られ、美の女神様は歴史の闇に静かに消えて行きました。

 この間、本気でぶっこ抜きにかかったプロは一財産を築いたようですが、各地の設置店ではいろんなトラブルが多発したようです。

 たとえば、朝イチの台取りで客どうしの喧嘩になり、警察を呼ばざるを得なくなったとか、徒党を組んだプロが数に物を言わせて逆押し禁止の店で逆押しをして、それを注意した店員さんを店の外に引きずり出してボコったとか…。特に等価交換の店では期待収支が半端じゃないですから、トラブルが日常茶飯事でした。

 でまぁ、私はそういうのに巻き込まれたくなかったので、コワモテのプロが見向きもしない7枚交換のホールで何日か打ったのですが(最初は等価のホールで打ったけど怖そうな人たちが増えてきたので撤退)、それでも最終的には結構なプラスになりました。

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 ただね、決して「お金が目当てで打った」んじゃありません。いや、確かにお金は大好きですよ。だけど私が惚れ込んだのは前述したビーナスラインのゲーム性。攻略効果の影に隠れてほとんど語られることはありませんが、ビーナスの出目演出&チャンスナビは絶品でした。

 レバーON時にトップパネルが消灯すればナビ発動の合図で、後はランプの点灯パターンによってリプレイ・プラム・5枚役を示唆し、対応役がハズれればボーナス確定…と、ただそれだけの演出ですが(ランプの点灯が点滅に移行すればチャンス)、当時はそうしたチャンスナビを搭載した機種が存在しておらず、ある意味でビーナスのチャンスナビは演出の革命だったんです。

 ちなみに、プロが通常時に逆押しで全小役をフォローしているのを横目に見ながら、私は頑なに順押しチェリー落とし(ナビ非発生時に必ず5枚役を取りこぼす&チェリーが角に停止して払い出し枚数が減る可能性がある)のDDT打法でプレイしていました。

 なぜ損をする打ち方をしてたかって? だって、私はミサプラハズレ(右下がりプラムテンパイハズレ目)を見たくてビーナスラインを打ってたんだもの。これはビーナスにおける至高のリーチ目で、中でも「左下段赤7+中チェ・プ・チェ+右中段プラム」のミサプラハズレは絶品でした。このリーチ目は、現在でも平和オリンピアの「ルパン三世シリーズ」に継承されているくらい、出現時のインパクトが絶大だったのよね。

 話が脱線するのを承知でもう少し続けます。ルパンシリーズのミサプラハズレは「右中段にプラムが停止」して初めてリーチ目になるけど、ビーナスラインは斜めプラムテンパイがハズれた瞬間にボーナスが確定しました。まぁ、その場合でも基本的には右中段にプラムが停止するんですけどね。

 一つだけ例外があって、「左下段赤7+中下段赤7(この時点で右下がりにプラムテンパイ)」がハズれる場合は、稀に右中段にベルが停止することがあるんです。リール配列を見れば一目瞭然ですが、右に赤7付近を狙った場合には、右中段にプラムが停止すると同時に赤7が下段に揃っちゃう。それを避けるために右リールがスベった結果、右中段にベルが停止するんです。まぁ、早い話がバケ確目なわけですけどね。レアな割に出玉的に報われない、哀しいミサプラハズレでした。

 閑話休題。…でまぁ、この素晴らしいゲーム性が埋もれるのは本当に惜しいと思っていたところ、平成11年の春先になって、通常時とビッグ中の小役確率&リール制御を変更した対策機「ビーナス7」がリリースされました。

 もちろん、ゲーム性に惚れ込んだ私は喜んで打ちまくったのですが、攻略効果が大幅にダウンした二代目・女神様は一般プレイヤーに受け入れられませんでした。そして、最後は不人気機種のお約束的な流れで、闇の商人に「元気が出るエキス」を注入されて局地的に爆裂化。この「堕ちた女神様」は通常時もビッグ中も小役を大幅にカットされていたため攻略効果もへったくれもなく、本来のゲーム性からかけ離れた末路に私は涙が止まりませんでした。

 うーん、勿体ない。最初からビーナス7の仕様でリリースしていれば、名機として歴史に名を残したかも知れないのになぁ…。

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逆押しDDT打法&リプレイハズシの対策機として登場した『ビーナス7』。通常時&ビッグ中の小役確率を大幅にカットした上で、逆押しするとフラグ成立役の一部がテンパイしないリール制御に変更された。ビーナスラインとの外観上の違いは下パネルのみだ。(写真は「パチスロ大図鑑2001/ガイドワークス刊」より)

 余談ですけど、世に出回ったビーナスラインの大半はメーカーに回収され、ビーナス7へと生まれ変わりました。従って、オリジナルのビーナスラインは現存数が非常に少なく、オークションに出回ることもほぼありません。

 失敗したなぁ…。昔はオークションで見る機会もそこそこあったのに、あのとき落札しておけば良かったですよ。そうそう、私と同じくビーナスラインが大好きな「しのけん」さんは実機を所有されています。

 以前、全3種類あるビッグ入賞時のファンファーレの発生条件(ハープ音はEXライン入賞が条件)について質問を投げたところ、わざわざご自宅にある実機で検証してくださいました。結局は「ランダムで流れる」というオチでしたけど、しのけんさんって凄く優しい人ですね、ええ。

 なお、私も一つだけビーナスラインの関連アイテムを所有しています。

 それがこれ。

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 私の仕事部屋で時を刻むビーナスラインのパネル時計です。約20年前に私がオリンピアさんのHP(オリンピアメイト)で実戦コラムを連載させて頂いていた頃に、広報担当を務めておられた班長Mさんから頂戴したお宝です。

 回収されたビーナスラインの下パネルをメイト会員のプレゼント用に加工した非売品であり、当時これと同じパネル時計を所有していた方が少なくとも20人くらいは居たと思われます。

 ただ、現在も動作可能な状態で残っている美品がいくつあるか…。貧乏性ゆえの物持ちの良さは、ある意味で私の自慢なのです。

ドラゴン広石

ドラゴン広石

ドラゴン広石(昭和38年12月生まれ)
平成7年に白夜書房「パチンコ必勝ガイド」編集部の門を叩き、パチスロの知識と経験、目押し力を買われて「パチスロ必勝ガイド」のライターに採用された。リアルタイムで「パチスロ0号機」を遊技した経験を持つ、唯一のパチスロライターである。令和4年現在でライター歴は27年。代表作に「枠上人生」、「浮草家計簿」(連載中)、「回胴絶景」(連載中)など。1日の最大勝ち額~プラス41万3千円(クラブロデオT)、1日の最大負け額~マイナス12万9千円(初代・北斗の拳)。

Twitter:@dragon_hiroishi

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