技術介入が可能な「美味しい機種」という印象を持つかもしれないが…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第47話:キューティーフルーツS~前編】
第47話 キューティーフルーツS~前編
3号機以降にパチスロを始めた方はご存じないか、あるいは昔話として知る程度だと思いますが、2号機時代には両ボーナスの他にフルーツゲームと呼ばれる「小役の集中役」が認められていました。
一般的にパチスロの規定は「自由度が高い内容から締め付けられる…をひたすら繰り返して現在に至った」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。いわゆる「内規の解釈を変更」という裏技で強制的に自由度を広げたケース(たとえば4号機時代の大量獲得タイプなど)がある一方で、1.5号機から2号機への移行時には規定そのものが大幅に緩和されたりもしたんです。
まぁ、内規の解釈変更については、あまりにも業界サイドがやりすぎたせいで、現在では絶対に拡大解釈ができない雁字搦めの規定に苦しむ羽目になってますが、2号機の規定はある意味でユーザーフレンドリーな内容だったと私は思います。
1.5号機と2号機の大きな違いは以下の通り。
1、吸い込み方式の禁止
それまでのパチスロは「差枚数吸い込み方式」が主流でした。設定変更時あるいはボーナス終了時に「次回吸い込み枚数」が決定され、それに到達した時点で強制的にボーナスフラグが成立したんです。
吸い込み方式の利点は「意図的な連チャンとハマリ」を演出できることにあり、中でも同システムの代表格であったニューペガサス(パル工業)は、多くの連チャンマニアに愛されて4号機時代の後期まで稼働していました(2006年6月のみなし機撤去によって完全に稼働終了)。現在のパチスロは検定3年+認定3年の「最大6年間」しかホールに設置できませんから、当時はお上も随分と温和だったんだなぁ…と思います。
2、完全確率方式を義務付け
各役の抽選を毎ゲーム完全確率で行うことを義務付けられました。当時の乱数取得タイミングはメーカー&機種によってまちまちだけど(レバーON時、ウエイト解除時、第1停止ボタン押下時など)、現在もボーナスタイプは全て完全確率方式で抽選を行っています。
3、集中役の認可
それまでの出玉エンジンは両ボーナスのみでしたが、新たにシングルボーナスの搭載が認められ、同時にシングルまたは小役の集中役を採用することも認められました。シングルの集中役は4号機時代まで存続したけれど、小役の集中役(フルーツ)は3号機の規定で禁止されたため、今では2号機のみに存在した伝説の役…みたいな扱いになってます。
4、ゲーム内容によるタイプ分類
前述したようなゲーム性の多様化を考慮して、基本的なゲーム内容によって遊技機をA・B・Cの3種類に分類することになりました。Aは「ビッグボーナスのJACゲームが従来と同じく3回」、Bは「JACゲームが2回」、Cは「ビッグを非搭載」という内容で、それぞれに集中役の搭載も認められました。
ただ、当時は「1メーカーにつき2機種まで」という機種数の制限があったため、2号機時代にBタイプは1機種も登場せず、Cタイプもわずか4機種(トロピカーナA、フルーツチャンス、クレイジーバブルス、タッチダウン)しかリリースされませんでした。メーカー側も冒険はできなかった…ってわけですね。
その他にも、ハード的にはクレジット機能(最大50枚)を認めたり、1Gの遊技時間を4秒以上(現在は4.1秒以上)にする等の細かい変更点も多いのですが、ソフト上の変更点はほぼ上記の4つだけと考えて問題ありません。
そんなわけで、今回は冒頭でも書いた通りフルーツゲーム(小役の集中役)に関する昔語りをお届けしますね。
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フルーツゲームの仕様は以下の通りです。まず、抽選そのものは両ボーナスと同じく完全確率で行われ(特定役が入賞した次ゲームに抽選する2段階判定もあり)、これに当選すると「所定のゲーム数を消化する間」は対象小役の抽選確率が大幅にアップして、概ね100枚~200枚くらいのコインを獲得できました。
まぁ、チャレンジマンの「ジャンボフルーツ」のような次回ビッグまで継続する超ギャンブル仕様機もありましたが、基本的には通常ゲームのアクセントと考えて間違いありません。
でもって、フルーツで有名な機種といえば、やっぱりオリンピアのバニー姉妹じゃないですか。2-1号機・初代「バニーガール」と2-2号機「スーパーバニーガール」。この両機種は、5Gと60Gの2種類の継続ゲーム数がありながらフラグは同一で、当選時の内部状態に応じて振り分けを行う…という天才的なアイデアで一世を風靡した超荒波マシンでした。
バニー姉妹のフルーツゲームで特筆すべき点は、消化中にビッグボーナスが成立しても最後まで取り切れるってことです。多くのフルーツゲーム搭載機は、消化中にビッグが成立すると強制的に集中役が終了しますが(REGの場合は消化後に再開)、本機の場合は規定ゲーム数を消化し終えるまで8枚役の抽選確率がアップしたままなので、ビッグ絵柄をハズしつつ小役を揃えることでフルーツを完全消化できたんです(約180枚)。
ただし、当時の機種は例外なくボーナス優先制御につき、適当に狙ったらビッグが揃ったり小役を取りこぼすこともあります。つまり、正確な目押し力も必要だったんですが、仮にフルーツの中ほどでビッグが成立したとして、そのまま揃えてしまうと約90枚の損。90枚といえば当時のREG1回分の出玉に相当します。ちょっとだけ目押しを頑張ることで、取れない枚数が全て取れるようになるのだから、これはもうマストで実践すべき攻略法だと断言して間違いありません。
当時、この攻略法は「パチスロ必勝ガイド」の特集記事で紹介されましたが、実践するには相応の目押し力が要求されたため、実際に行っている一般客を見たことはありませんでした。
まぁ、一般客はフルーツ中にビッグを引いたら喜んで揃える…というか、枚数的な損などは考えずにビッグを狙う人が大半でしたから、私がビッグ絵柄をハズしていると「なんだこいつ、目押しができない可哀想なヤツだな」的な憐れみの視線を投げかけて来ました。そんな馬鹿なと思うかもしれませんが、当時の一般客の認識ってその程度だったんですよ。まぁ、だからこそプロが美味しい思いをしたんですけどね。
そして、実はこれと同じ攻略法が通用した機種がもう1つありました。それが今回の表題になっているサミー工業の『キューティーフルーツS』です。
前述したように、この機種もフルーツゲーム中にビッグが成立した際に「ビッグ絵柄をハズしつつ小役を狙う」ことでフルーツを取り切れたんですけど、ぶっちゃけ難易度が非常に高かったのよね。
どういうことかと言うと、キューティーフルーツSには明確なリーチ目が1個たりとて存在しなかったんです。バニー姉妹の場合は「ズレ目」という激アツ目があるお陰でボーナスの察知は容易でしたが、本機ではボーナス成立後に当倍返しの役割で5枚役の「桃」が揃いやすくなる程度に過ぎません。
従って、フルーツの消化中は「リールのスベリ」に注目して、アヤしいスベリを伴って7がテンパイしたら、とりあえず右リールで慎重にハズして、次に逆押し&3枚がけで7を狙うんです。
この時、7がテンパイすればほぼビッグが成立しています。なので、左リールで慎重に7をハズして(テンパイラインに9番のBARを狙えばハズせます)、次ゲームから3枚がけ順押しで7がテンパイしないように狙いつつ8枚役を抜くわけです。バニー姉妹と比べて難易度が格段に高かったため、この攻略法がガイドで紹介されることはありませんでした。
でもね、これだけ聞くとキューティーフルーツSは技術介入が可能な美味しい機種…って印象ですけど、実はそれほど甘い機種でもなかったんですよ。というのも、この機種は登場当初はあまり人気が出ず、長く使わずに新機種に入れ替える店も多かった。ところが、後に3号機時代になって突如として大増殖を始めたんです。
このパターンは言うまでもなく例のアレ。そう、当時の不人気機種が例外なく同じ道を辿って爆裂化したのと同じく、キューティーフルーツSも闇の商人の手で「裏」を仕込まれちゃったのよねぇ。
--次回につづく。
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