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悲しくて「心の中に封印」しているエピソード…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第45話:新鬼武者】

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第45話 新鬼武者

 スロッターにとって「思い出の機種」は宝物です。たとえばスロ好きの友人と酒を酌み交わす際などに、大抵の場合は「良い思い出」として昔話に花を咲かせます。もちろん、酒の肴ですから話を大盛りに盛って語る人もいて、必ずしも真実のエピソードとは限らないわけですが、納得づくでそういう自慢話を聞きながら相槌を打つのも悪くない…と私は考えます。

 ただね、時としてあるわけですよ。大好きな機種を打って大勝ちしたのに、悲しい思い出として心の中に封印しなければならないエピソードも…。今回はそんな昔語りです。

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 時は平成23年の3月。この頃、私はロデオのART機『新鬼武者』にハマっていました。すでに登場から1年近くが経過した機種だけど、バランスの取れたスペックと液晶演出の美しいビジュアルに魅せられて、個人的な勝率はあまり高くないにもかかわらず打ち続けてました。

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ロデオのART機『新鬼武者』。各種チャンス役の成立時にボーナス・高確移行・ARTのトリプル抽選を行い、高確または超高確中にチャンス役を引けば文字通りART当選のチャンスとなる。ART・蒼剣RUSHは1セット50G+幻魔京バトルで構成されており、主人公サイドがバトルに勝利すれば次セットに継続する仕組みだ。バトルの勝敗は4種類の継続率で管理されており(50%、67%、80%、89%)、ボーナス中の蒼7の斜め揃い時および天井到達時のART(ボーナス間1400Gハマリ以降のボーナスまたはチャンス役で発動)は必ず最高継続率が選択される。天井到達頻度は低いが見返りは絶大だった。(写真は全て個人ライブラリより)

 この日は朝からそこそこ展開に恵まれて、昼過ぎには高確中の強チェリーから89%継続の蒼剣RUSHをゲット。最初の5セット目くらいまでは冷や汗をかきながら幻魔京バトルを消化していたんですが、さすがに本気を出した最高継続率のARTはそうそう簡単には終わりません。

 しかも、消化中に引いたボーナスが妙にバケに偏って、その度に高確に移行してバリバリにゲーム数を上乗せしてくれるため、気分はもう完全にイケイケ状態だったんですけどね…。

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幻魔京バトルで主人公の蒼鬼が「極限一閃」を繰り出せば、その時点でバトル勝利+最高継続率が確定。この日は同演出で89%ループを察知した。

 午後2時46分。日本観測史上で最大となる、M9.0の大地震が東日本を急襲しました。グラリときたその瞬間、おやと思ってレバーを叩く手を止めると、次の瞬間にこれまで体験したことのない激しい縦揺れが視界を包んで、ホール中が大変なことになりました。頭上のドル箱に木の葉を築いていた人たちはコインをぶちまけるし、パチンコのシマでは別積みの箱が崩れてわけがわからなくなるし…。

 通常、手をすべらせたか何かで出玉をぶちまけた場合、店員さんが一緒に拾ってくれたりもするんですが、店中がそんな状況になっていると、どうしようもありません。

 しかも、断続的に発生する余震のせいで、下手に動くと怪我をする恐れもあり、プレイヤーは為す術もなく通路の端に避難することを余儀なくされたのでした。まぁ、パチンコのシマには根性でハンドルを握って大当りを消化している猛者も居ましたけどね。

 そう、この日はあの忌まわしい東日本大震災が起きた当日だったんです。そして、揺れが少しおさまるのを待ってケータイで妻に電話すると、これが何度かけてもつながらない。

「仕方がない。この店は海から離れているので津波の心配はないし、とりあえず地震の状況がわかるまで動かずにいた方が賢明かな?」

 そう考えて新鬼武者のシマに戻ると、ART中の台や高設定ぽい台を打っている客を除き、みんな次から次へとヤメていきます。最初の揺れから1時間も経った頃には、シマの稼働が3割くらいに落ち込んでいました。もちろん、普段は客付きが抜群の『秘宝伝』や、週初めの新装で導入されたばかりの『創聖のアクエリオン』も例外ではありません。

 この状況では店側も商売にならず、後になって聞いた話によると、多くのホールが午後5時で閉店したようです。私の通う店は根性があるのかどうか…そんな状況でも平常通りの営業を続け、お陰で私は店から追い出されることもなく、夕方6時過ぎには妻のケータイに電話がつながって、娘の無事も確認できました。そして、その後もいろいろあったんですけどね。帰宅して玄関のドアを開けると家の中がもの凄いことになっていて…。

 新鬼武者ではめずらしく大勝ちしたけれど、正直言って全く楽しくありませんでした。もしも震災が起きなきゃ心からプレイを楽しめたのに…それが今もって残念でならないのです。

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当日の最終データランプ。蒼剣RUSH終了で即ヤメしました。

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 コラムの冒頭で「悲しくて心の中に封印しているエピソード」と前置きした理由がおわかり頂けたでしょうか? 通常、話のネタになるエピソードがあれば、それを幾度も文章にするのがパチスロライターです。なぜなら、ホールで実戦中にそうそう事件なんて起きるものじゃありませんからね。面白いネタは何度でも使い回すし、読者さんもそれを理解した上で楽しんでくれます。

 実際、当コラムは今回が累計45話になりますが、完全な初出ネタは3~4割くらい。他のネタは全て過去のコラム等で発表したものを、視点を変え表現を変え、より楽しんで頂けるよう文章をブラッシュアップして掲載したに過ぎません。

 だけど、このエピソードは違います。被災地の苦難を思うと心が痛み、とてもじゃないけど普段のノリで書くことはできないのですが、パチスロライターの責務として「震災当日のホール事情を文章に残す」ことだけを目的に綴りました。今回でおそらく3回目なので、今後このネタで書くことはないと思います。

 なお、今回のコラムは内容をかなり端折ってます。完全版に興味のある方は、去る8月7日より配信されている『パチスロ浮草家計簿2』をご覧頂ければ幸いです。

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 それではまた次回!

ドラゴン広石

ドラゴン広石

ドラゴン広石(昭和38年12月生まれ)
平成7年に白夜書房「パチンコ必勝ガイド」編集部の門を叩き、パチスロの知識と経験、目押し力を買われて「パチスロ必勝ガイド」のライターに採用された。リアルタイムで「パチスロ0号機」を遊技した経験を持つ、唯一のパチスロライターである。令和4年現在でライター歴は27年。代表作に「枠上人生」、「浮草家計簿」(連載中)、「回胴絶景」(連載中)など。1日の最大勝ち額~プラス41万3千円(クラブロデオT)、1日の最大負け額~マイナス12万9千円(初代・北斗の拳)。

Twitter:@dragon_hiroishi

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