「完全入替制の2部営業」…もの凄く驚いたデータ取りエピソード【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第58話:新台入替】
第58話 新台入替
その昔、新台入替はホール側&客側の双方にとって一大イベントでした。
現在の新装は普通に「10時開店~23時閉店」の平常運行で営業する店が多いけれど、昭和から平成初期にかけての新装は「17時半開店」や「18時開店」といった短時間営業が主流となっており、ようするにサラリーマンが仕事を終える夕方過ぎに開店して、閉店時間は出玉状況に応相談…っていう独特のスタイルで営業してたんですな。
この場合、お店側が予定した赤字額に到達した時点で閉店するため、出過ぎた場合には2時間くらいで閉店することも日常茶飯事でした。もっとも、当時はパチスロの新装なら全台設定6に加えてモーニング多数が当たりまえ。デジパチの新装ではヘソの命釘が親指サイズにアケられているのが普通でしたから、出玉が少し上ブレしただけで数百万円もの赤字を喰らう可能性があったんです。なので店側が及び腰になるのも致し方ありません。
とは言え、「新台入替」のノボリを見るとワクワクするのが打ち手の性です。かく言う私も、二十代だった若い頃には新装と聞けば積極的に参加しましたし、パチスロ必勝ガイドのライターになってからもデータ取り(仕事)で何度も新装に突撃しました。
ただね、ホール店長さんの中にはたまに突飛なアイデアを思いつく人がいるんですよ。思わず「そんなんアリか!」って叫びたくなるような、奇抜でトリッキーな営業を実行に移すアドリブ店長さんが…。というわけで、今回は新装初日にもの凄く驚いたデータ取りエピソードを紹介しましょう。
以下、本編。
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時は平成13年(2001年)の10月。この日、私を含む6名のガイドスタッフは、平和さんの最新AT機『ゴルゴ13』(4号機)のデータ取りをするために、今はなき神田の某店で朝9時に待ち合わせをしました。
正直、このお店は朝の客足が遅くて9時に並ぶ必要なんてないのだけど、いかんせん新装初日の実戦だから仕方がありません。わざわざそんな日を選ばなきゃいいのに…と思うかも知れませんが、締め切りの都合上、どうしても実戦しておく必要があったんですよ。
そんなわけで、当然のことながら我々6人が列の先頭に並んだんですけどね。開店15分前になって店のシャッターを開けた店員さんが言うには、「新台のシマは完全入替制の2部営業」とのことでした。てゆーか、2部営業って何なの?
聞きなれない言葉に首を傾げていると、店員さんが苦笑いしながら説明してくれました。
店員さんが苦笑いしてるのは、おそらくは店長さんのアイデアに驚いているからでしょうね。てゆーか、たかだか5時間では回せて3千ゲームくらい。その程度では台の正体なんて掴めないよ…というのが皆の一致した意見でしたが、今から他の店に移動したところで新台に座れるはずがないし、良い実戦データを採取できることを祈りつつ打ってみましょうか。
こんな変則的な新装初日の営業に遭遇したのは初めてでしたが…というか、これ以降は同様の営業に一度も遭遇してないんですが、この店のアドリブ店長さんもご自身のアイデアにケチをつけたくなかったのか、そこそこ高設定を投入している印象を受けます。
モノが爆裂AT機ゆえに喰い付きに時間はかかるけど、いざ喰い付いてしまえば出玉が順調に伸びて行くと言えばわかりやすいでしょうか。結局のところ、私は初当りATを上乗せ込みで3回引いて納得の勝利。他の実戦人も収支的にまぁまぁといった結果でした。
開店前に「完全入替制の2部営業」と聞いた時は何じゃそれ…って思ったけど、実際にそれを体験してみると悪くないアイデアのようにも感じます。これなら、通常の新装初日よりも多くのお客さんに新台の面白さをアピールできるし、想定外の爆発による出玉の事故が起きるリスクをある程度まで緩和できるものね。第1部の終了時にGG連を取りきれていなかったお客さんには気の毒だけど、こういう新装もアリかな?
その後、このお店でデータ取りを行う機会はなかったので、果たして完全入替制の2部営業を続けたのかどうか不明ですが、4号機時代が終焉を迎えた平成18年にひっそりと閉店した…と聞きました。嗚呼、夏草や兵どもが夢の跡。
ちなみに、私がこの日のデータ取りで最も好きになった演出は、ゴルゴ13ことデューク東郷のプレミアム台詞だったりします。
《10%の才能と20%の努力…30%の臆病さ…残る40%は運だろうな》
うん、パチスロってそんなものだと思うよ。