「右カドから順に座れば設定6もあったのに」思い出せば腹が立つけど…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第54話:設定示唆札】
第54話 設定示唆札
今の若いプレイヤーには信じられない話でしょうが、その昔(4号機時代の中盤から後半にかけて)、ホールでは過激なイベントが公然と行われていました。来店ポイントを集めて設定6をゲット、朝イチ早駆けビッグで先着○人様まで設定6に変更、くじ引きで当りを引けば設定6に変更…等々。4号機時代を体験している方なら一度は目にしたイベントだと思います。
これらは射倖心を煽りまくりの激アツイベントでしたが、そうであるがゆえに当局から指導が入り、しばらくして絶滅しちゃいました。まぁ、営業時間中の設定変更はもともと違法なので、お上がイベントの内容に激怒するのも無理はないのですが、今から考えると当時は実におおらかな時代だったんだなぁと思います。
これらの設定変更系のイベントは、基本的に「プレイヤーの目の前で設定を変更する」ため店側が誤魔化すことはできません。しかし、たまに見かけた「定時になると設定発表」という高設定イベントでは、「閉店時に設定確認OK」のケースを除き、あまり信用できないと個人的に思ってました。
まぁ、今はなき中野北口の某店で見かけた「設定6or?」の札や、「設定1or2or3or4or5or6」といった客を完全にナメているとしか思えないクソ札に比べれば少しはマシですが、爆裂AT機時代には「出ている台に札を刺す」だけの酷いホールもあったので、下手に信用すると痛い目に遭うこと必至だったんです。
あと、高設定と発表した台に札を立てる際に、設定の数字ではなくアンコウやエビなどの札を刺す店にも要注意。これはダイレクトに設定を示唆すると当局に怒られるので、パチンコ&パチスロファンなら誰でもわかる隠語で代替した例ですが、店側は決して設定6や設定5と謳ってはいないわけで、これも迂闊に信用すると大変なことになります。
事実、私は4号機時代の末期に『秘宝伝』を打っていた際に、低設定だと見切ってヤメようとしていたら「金」と書かれた札を立てられて、覚悟を決めて突っ張った挙げ句に大負けした悲しい過去があります。
4号機の秘宝伝にはビッグ中のハズレ出現率に大きな設定差があり(設定が高くなるほど純粋なハズレが少ない。ハズレ確率は設定1=1/9.689、設定6=1/20.078)、ビッグを数回も引けば設定の高低が丸わかりとなります。この時は、設定2と3の中間くらいの出現率だったのでヤメようとしたんですが、そのタイミングで「金」の札を立てられて痛い目に遭いました。
このお店は、たまに嘘札で客を騙すこともありますが、基本的には優良店で出玉状況も悪くありませんでした。なので、当時の私は事故に遭ったと思って諦めたんですけどね。過去を振り返れば、もっと酷い嘘札を刺す店も世の中にはあったわけで…。今回はそんな嘘札の昔語りをお届けします。
以下、本編。
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時は平成10年(1998年)の2月。当時のパチスロ業界は来るべきCT機時代に向けて、大いに盛り上がりを見せていた頃でした。そんな時、私がサミーさんの最新作『ウルトラマン』の担当ライターを任されたことから今回のエピソードは始まります。
皆さんはご存知かどうか知りませんが、私はいわゆるアニオタ&特撮オタでしてね。ウルトラシリーズに対する知識を買われてガイドの担当ライターに指名されたんですが、困ったことに設置店が見つからない。いや、なくはないんですよ。当時、新宿歌舞伎町にあった某店にはウルトラマンが1列10台導入されていました。
だけど、この店はいわゆる「嘘札」で有名な店でしてね。もちろん、全てが嘘なわけじゃありません。当時の交換率は7枚交換が一般的でしたが、そんな中でこの店は7.6枚交換で営業しており、出したい時は積極的に設定6を投入してアピールしていたのは、出玉状況から見ても間違いないと思います。
ただ、店側は「当店は全台が設定456です」と常時高設定営業をアナウンスしてたけど、普通に低設定だって投入していることは、データ取りで何度か痛い目を見て理解していました。
とは言え、他に設置店が見つからないから仕方がない。当時はまだP-WORLDのような検索サイトもなく、設置機種を調べるには口コミを頼るしかない時代でした。そうこうしている内に容赦なく時間は過ぎていき、もはや某店でデータ取りを行わないと記事の作成に支障をきたす状況になりました。
そんなわけで、果たして今日は店側に出す気があるのか…戦々恐々で某店に朝イチで並んだんですが、入口が開放されてウルトラマンのシマに走ると、全台に「設定5or6」の札が立ってるじゃないですか!
当然、普通なら歓喜して打ち始めるところですよね。しかし、自分たち実戦人(自分を含めて計6人)はみんな渋い顔をしています。と言うのも、以前、とある機種の91時間バトルを闘っている際にこの店のマネージャーさんにご挨拶したとき、言葉を選びつつ、かなり遠回しに嘘札について質問してみたところ、顔色ひとつ変えず次のように言われたんです。
「これはね、嘘札じゃなく営業努力なんですよ」
つまり、店側としては全く後ろめたさを感じてないんでしょうね。騙される客が馬鹿…とまでは言わなくても、「集客の努力をして何が悪いんだ!」って言いたそうです。
しかしながら、今日はデータ取り(つまり仕事)に来ているので、打たずに帰るわけにはいきません。そんなわけで、恐る恐るシマの左カドから6人並んで座ったところ、予想通りというか頭上の札に書かれた設定とは到底思えない、非常に残念かつ無惨なデータを採取して実戦ノルマの夜8時を迎えたのでした。
そして翌日、担当編集が実戦店に電話してマネージャーさんに設定を尋ねたところ、自分たちが打った台はいずれも「設定1or2」とのこと。
「惜しいなぁ。右カドから順に座れば設定6もあったのに…」
マネージャーさんにそう言われたと担当編集は笑ったけれど、騙された側からすると「そんなん知るか!」ってな感じですよね。ある意味で正直な店だとは思うけど、こういうリスクがあるから自分はプライベートではこの店を敬遠してました。
時は流れてこの店は閉店し、今や「設定示唆札」の文化も完全に消滅…。思い出せば腹が立つけど、カオスな時代だからこそパチスロも面白かったような気がします。
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