「もう少し打ち込んでおくべきだった」という気持ちも…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第46話:合法と非合法の境界線】
第46話 合法と非合法の境界線
かつて、4号機時代の末期に「サイレントストック機」と呼ばれるジャンルがありました。ただし正式名称ではありません。
従来のストック機が「成立ボーナスの一部または全部でストックタイム(ST)に突入→小役の払い出しで出玉を増やしつつボーナス抽選を受ける→貯め込んだボーナスをST終了後に一気に放出する」というシステムだったのに対し、サイレントストック機は「フラグ成立したボーナスをプレイヤーの気づかぬ内に全てストック→特定の条件(規定ゲーム数の消化・チャンス役によるST解除抽選に当選・純ハズレ成立など)を満たした時点で随時放出→ボーナス消化後に連チャンを期待できる」というゲーム性でした。
噛み砕いて説明すると、前者が「ボーナスをストックした瞬間が打ち手に丸わかり」なのに対し、後者は「打ち手の気づかぬ内に強制的にストックする」のが特徴です。
前者の代表はネットの「ブラックジャック777」やオリンピアの「レースクイーン」などで、後者の代表が山佐の「スーパーリノ」や「キングパルサー」などでした。ようするに、同じストック機でも両者の内容は全く異なるわけですね。
その後、時が流れてストック機が無条件で後者を示す時代になると、前述した「サイレントストック機」という呼称は消滅します。そりゃそうだ。両雄が並び立っていた時代には紛らわしいからきっちりと区別する必要があったけど、旧タイプのストック機が存在しなくなれば、わざわざ分ける必要はありませんからね。
また、システムそのものも大幅に進化して、大都技研が天下を取った「吉宗」や「押忍!番長」の時代になると、「ストックがあるのが大前提で、それをいかにして放出させるか」というゲーム性にシフトします。
ちなみに、私はスーパーリノの担当ライターを任されていたんですが、記事を書くのが嫌で嫌で仕方がありませんでした。だって、個人的にスーパーリノのゲーム性が大嫌いだったんだもの。
ガイド編集部としては、私がニイガタ電子の3号機「リノ」が大好きだったから担当ライターに指名してくれたんでしょうが、はっきり言って両者は「黒バラのリノさん」と「橘リノさん」くらい違います。
機種名や表面上の連チャン(5G連)こそ同じに見えるけど、私は事あるごとに「他人様が引いたボーナスなんていらないから、自分が引き当てたボーナスを誰にも渡したくない!」と吠えてました。編集長も良かれと思って私を担当ライターに任命したのに、まさか手を噛まれるとは思わなかったでしょうね。
私にはスーパーリノのシステムがどうしても納得いかなかったんですよ。というのも、この機種は「合法連チャン」をセールスポイントにしているのに、ベーシックのシステムが3号機時代の「非合法連チャン機」に似過ぎてました。ここで言う非合法連チャン機とは、今は亡きアークテクニコの3-1号機『ワイルドキャッツ』です。
以下、回想。
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時は平成3年(1991年)の春。当時、私は大分県大分市で土木建築資材の営業マンをやりながら、休日には朝からスロを打つ「腰掛けスロッター」でした。ホームグラウンドにしていたL店がワイルドキャッツの新装を行ったのが水曜日。この日は仕事帰りに様子見に立ち寄ったのだけど、あまり景気良くは出てません。
めずらしいなぁ…。バニーガール(オリンピアの2-1号機)の新装の時は、短時間営業ながら大半の客がドル箱を重ねてたのに、ピッカピカのワイルドキャッツのシマを見渡しても出ている客は少数です。
当時の新装は、今と違って嘘偽りのない「出血大サービス」でした。ようするに、新台さえ取れればウハウハなのだけど、何か重大な理由でもあるのかしらん?(※注・新装初日の短時間営業では貯金が溜まりにくいから連チャンしない)
それでも、週末になるとスロッターの血が騒ぎ、翌・日曜日には開店の1時間前から並んで、前日夜の下見をもとに高設定の据え置き狙いで台を確保しました。当時は新装で瑞穂製作所の「コンチネンタルⅠ」がブイブイいわせていた頃ですから、名機「アニマル」を輩出したアークテクニコの新台には否応なしに期待感が膨らみます。
すると、期待に違わず…と言って良いのかどうか、とにかくすげぇビッグが連チャンしました。最初は少しだけハマって3連チャン、次はドカンとハマって7連チャン、その次は適度にハマって4連チャン、そのまた次はわりと早めにビッグを引いて2連チャンと、面白いことにハマリと連チャンが交互に訪れるんです。しかも、ハマリの深さと連チャンがしっかり釣り合ってるのが興味深い。
当初は連チャンの秘密が「貯金方式」だったなんて思いもしなかったから、面白い出方をするなぁ…としか感じなかったけど、数ヶ月後に「パチスロ必勝ガイド」の解析記事で注射プログラムの全貌を知った時には思わず頭を抱えました。
《嗚呼っ! あの日、手持ちのお金が尽きて泣く泣く捨てたワイルドキャッツは、いったいいくつ貯金しやがったんだろう?》
さすがに、「オレのカネ返せ!」とまでは思いませんでした。てゆーか、誰かにあげてしまった分は、おそらくそれ以上を誰かから頂戴しているので(トータルで勝っているという事実が何よりの証拠)、今さら文句を言うのは筋違い…というか後出しジャンケンなのだけど、連チャンに騙されて釈迦の掌で踊らされていたのは精神的に堪え難いのよ。その頃は「自分はパチスロが上手なのだ」と勘違いしていたから、好きだった反動から「嫌い」を通り越して「大嫌い」になってしまったのよね。
その後、注射を飛ばされて連チャンしなくなったワイルドキャッツを、L店の常連は「マイルドキャッツ」と呼んで見向きもしなくなりましたとさ。
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回想、了!
こんな暗い過去があったから、私はスーパーリノも好きになれなかったのよ。そもそも、両者は似たようなシステムなのに、合法と非合法の境界線はどこにあるのさ…って。
ただ、今になって冷静に考えると、私はもう少しスーパーリノを打ち込んでおくべきだったと思います。担当ライターでありながら「データ取りでしか打ったことがない」なんて、すごく恥ずかしい話です。
かつて、パチスロ必勝ガイド編集部には「プライベートで他のライターの担当機種を打つくらいなら、自分の担当機種を打って経験値を積め」という鉄の掟がありました。
今や機種物はフリー編集がネーム込みでグロス受けする時代になり、サムネ作りのスキルを持たないフリーライターは記名原稿を書くのみだけど、恵まれていた時代にやり残したことがあるように感じて今でも少し胸が痛むのです。
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