「30兆円産業」と呼ばれるまで成長した底力なんでしょうね…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第51話:モンキーロック】
第51話 モンキーロック
パチンコには「見た目はそっくりなのにゲーム性が全く異なる」というケースがままあります。
わかりやすく例を挙げると、2021年の7月にデビューしたビスティの『P宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』がそうです。この機種はいわゆるミドルタイプの「V-ST機」なのですが、約1年後に登場したライトミドルタイプの『P宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち ONLY ONE』では「1種2種混合機」にモデルチェンジされ、その約2ヶ月後にデビューした甘デジの『P宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Light ver.』では再び「V-ST機」に戻されて、さらに約5ヶ月後に登場した甘デジの『P宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち ONLY ONE Light Ver.』は「1種2種混合機」へと姿を変えました。
これらは同じ版権を使って開発された機種につき、見た目はあまり変わらないのだけど、ゲーム性は完全なる別物です。もちろん、ホール側としても紛らわしいことは百も承知しているので、同時設置する際にはシマを離してスペック違いであることを強調したり、店内のPOPでゲーム性の違いを説明して対処しています。
当然のことですけど、それが遊技場としての説明責任だと思います。仮に何の説明もなくゲーム性の異なる同版権機種を並べて設置したとして、知らずに打ったお客さんが「俺はこのスペックの機種を打ちたかったんじゃない!」と怒りだしたら、裁判社会であるアメリカなら法廷で争う羽目になるかもしれませんからね。いや、知らんけど。
しかし、昔はもっと紛らわしい機種がゴロゴロしてたんですよ。
以下、本編。
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かつて昭和のパチンコ業界には、遊技機の役物を専門に製造する業者がありました。メーカー各社はそうした業者から役物を購入して自社の機種に使用することも多かったため、違うメーカーから「同じ役物を使った似たようなゲーム性の機種」が登場することもめずらしくありませんでした。三共と京楽にそれぞれ『ボクシング』という機種があったのは有名な話ですね。
でもね、ボクシングのようにゲーム性が全く同じなら問題はないんですよ。困るのは「同じ役物を使用していながらゲーム性が異なる機種」の場合です。
以前、パチンコ必勝ガイドの重鎮ライター・安田一彦プロと昔話をしていた時に、ニューギンの一般電役『センターアタッカー』のエピソードを語ってくれたんです。
安田さんは私と同じ1963年生まれの同学年でしてね。ライターとしての業界歴は私より何年か長いのですが、同じ時代にパチンコを覚えて現在に至る(しかも同じガイドワークス系のライター)ということもあって、長いこと交友関係が続いています。
そして、この「センターアタッカー」という機種は、安田さんが大学の長期休暇で里帰りの最中に打つ機会があり、地元のプロに「この機種でこんなに出したのか!」と驚かれたのが若い頃の自慢話だ…と仰っていました。
この機種のゲーム性は、「当り穴に入ると、左右のパンク入賞口に入るまで永遠に羽根っぽいヤクモノが開閉を続ける機種(パチンコ歴史辞典における原文表記ママ)」とのことです。
へぇ、この機種にそんな思い出があるんですか。若い頃の楽しかったエピソードって、歳をとると凄く懐かしく思えてくるんですよね…などと相槌を打ったんですが、実を言うと私もこの機種を打った経験があるんですよ。いや、そりゃあ同学年の同い年だから時代的に不思議でも何でもないんですが、私が打ったのは『モンキーロック』という京楽の機種だったような…。
しかも、私の知るゲーム性は「天または天横、もしくは両サイドの入賞口に入ると盤面下部のアタッカーが1秒間くらい開放し、そのときアタッカー中央の大当り穴(当時のデジパチのVゾーンのような形状)に入れば、中央のゴリラの手が20秒くらいランダムにスライド開放して出玉を増やすゲーム性でした。もちろん、役物内の左右入賞口に入ってもパンクすることはありません。
それで、安田さんのエピソードに出てきた「センターアタッカー」と、私が打った「モンキーロック」は別の機種なんだろうな…と納得したんですけどね。後にパチンコ必勝ガイド編集部がアド・サークル様の資料協力&監修を受けて出版した「パチンコ歴史辞典」に掲載された写真を見ると、私の記憶にある「モンキーロック」と瓜二つなんですよ。
そして、さらに言うなら私がこの機種を打ったのは1982年のこと。1年だけ広島に住んでいた時に、下祇園にあった「ニューマンモス」というホールで打ったのだから、絶対に記憶違いじゃありません(ただし、モンキーロックという機種名はシマの端に書いてあっただけなので、必ずしも正しい機種名とは限らないでしょうね)。
機種の登場時期が2年もズレている上にゲーム性も全く違う。ということはつまり、こんな紛らわしい機種が時間を置いて別メーカーから登場したってか?
そんなことを考えていたら、「懐かしの名機列伝」のサイトで下のような写真を発見しました。
同サイトの説明によると、センターモンキーには継続や開放条件が微妙に異なる兄弟機がいくつも存在しており、それぞれ「センターモンキー○号」と呼ばれていたらしいです。それが本当なら、安田さんの思い出の「センターアタッカー」も、私が打った「モンキーロック」も、「センターモンキー○号」のどれか…なんでしょうね。
また、当時は同じタイプの機種が京楽からも登場していたそうな。パチンコ歴史辞典から引用した写真は役物ゴリラの下に「MONKEY」と書かれてますが、センターモンキーの写真では「KYORAKU」になっているそうです。
ようするに、ニューギンと京楽が同じ業者から仕入れた同じ役物を使って、ゲーム性が微妙に異なるパチンコをいくつも製造していたのでしょう。今だったら何かしら問題が起きそうな気もしますが、当時は白黒をはっきりつけずグレーを良しとする時代でした。だからこそ、後にマニアの記憶を混乱させることになったのですが、こういうのもまた、いかにもパチンコっぽくて私は好きです。
かつて、正村ゲージを発明して「パチンコの神様」と讃えられた正村竹一氏は、パチンコの未来を考えて特許申請を行わず、「みんなで仲良う使やええがや」の一言で他の業者が同ゲージを使用することを容認していたといいます(諸説あり)。それが現代パチンコの原点であり、絶頂期に30兆円産業と呼ばれるまで成長した底力なんでしょうね。
…とまぁ、そんなことを考えつつ、また次回!
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