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「連チャンエキス」を注入されて〝裏モノ”に…怒涛の連チャンを演出!!【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第48話:キューティーフルーツS~後編】

「連チャンエキス」を注入されて〝裏モノに…怒涛の連チャンを演出!!【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第48話:キューティーフルーツS~後編】の画像1

第48話 キューティーフルーツS~後編

 前回のコラムでは、サミー工業の2-2号機『キューティーフルーツS』の技術介入要素について紹介しました。

 2号機時代は一部のユニバ系機種で発覚した世界全滅打法(特定の手順を踏んでビタ押しを行うことで自在にビッグを揃えられる攻略ネタ)や、サファリラリーの「BAR→7変換打法」などを除けば、技術介入と呼べる打ち方はほとんどなかったんですが、キューティーフルーツSとオリンピアのバニー姉妹(初代&スーバニ)に発覚したフルーツゲームの完全取り切り打法は、4号機の「リプレイハズシ攻略法」に匹敵する技術介入だったと私は思います。

 だけどね、バニー姉妹と比べて難易度が非常に高かったキューティーフルーツSは、特に注目されることもなく、さほど人気も出ないまま次の新機種に入れ替えられました。今風に言うのなら「稼働貢献を終えた」って感じでしょうかね。

 まぁ、2号機時代は「各メーカー2機種まで」という機種数の制限があったため、現在のように「新台が数週間でハズされる」なんてことはさすがになかったですけど、ホール側としては稼働のない不人気機種を設置しておいても電気代の無駄なので、なるはやで高稼働を見込める人気機種に入れ替えたいと思うわけです。

 そんなわけで、キューティーフルーツSは徐々にハズされていったんですが、ある時を境に急激に設置台数を伸ばします。そして、この時に導入された台は本来の「遊べる台」というイメージからかけ離れた「連チャン機」に姿を変えており、超荒波の爆裂台として一部のプレイヤーから高い支持を受けました。

 ようするに、いわゆる「闇の商人」に連チャンエキスを注入されて「裏モノ」に化けたわけです。ただし、特にめずらしい話じゃありません。「旬を過ぎてから再設置されて爆裂化」というのは、当時の不人気台が裏モノ化する際の定番パターンでしたからね。

 ビッグバン(日活興業)、ムサシ(パイオニア)、リスキーダック(タイヨー)、デートライン銀河(興進産業)、フラッシュ(ニイガタ電子精機)…これらは全て定番パターンで増殖して人気を博しました。

 企業としてのコンプライアンス理念がどうとかの話はさておき、2号機時代はそういうものでしたから仕方がありません。まぁ、次代の3号機が最初から「裏」を仕込まれたイリーガル機しか登場しなかったのに比べれば、少しはマシかな…と思ったりもするわけです。

 少し話が脱線しましたが、今回はここからが本題。爆裂化したキューティーフルーツSと私がホールで初めて対峙した時のエピソードです。

 以下、回想。

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 時は平成4年の春先。私は大分県大分市にある某商社で、土木建築資材の営業職に従事していました。もともとは事務職を希望して入社したんですけど、この会社の創業者で絶対的な権力を握る会長が「専門バカになるべからず!」という信念を持つ「困ったちゃん」でしてね。

 事務仕事は得意だけど口下手で人付き合いの下手な社員には営業職に就かせ、逆に社交性に秀でた社員には事務職をあてがう…という、どう考えても適材適所とはほど遠い人事を鶴の一声で決めてました。

 そんなわけで、私も慣れない営業仕事で主に県北周辺を営業車で回っており、唯一の楽しみはストレス発散の意味も含めた終業後のパチスロでした。打ち始めるのは基本的に夜7時前後。とりあえず上司に定時報告を入れて、このまま直帰する旨を伝えてから私の勝負が始まります。短時間勝負ではあるけれど、だからこそ逆に大負けすることもなく、当時はこのスタイルが私に合ってると思ってました。

 そんなある日、いつもより少し早めに業務を終え、しばらく立ち寄っていなかった別府市のB店に足を踏み入れたところ、めずらしい新台のシマが目に入りました。新台といっても直近の新装で導入されただけの2号機です。世の中はすでに3号機時代に移行して久しいのに、なんでまたこんな台を…と思った相手が「キューティーフルーツS」でした。

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サミー工業の2-2号機『キューティーフルーツS』。ノーマルのスペックは「バランス重視方の遊べる機種」というイメージだが、闇の商人の手で爆裂化した裏モノは、いわゆる貯金方式で超弩級の大ハマリと怒涛の連チャンを演出していた。(写真は「パチスロ大図鑑2001/ガイドワークス刊」より)

 すげぇ期待しますよね。新装で導入されたのが時期はずれのマイナー機とくれば、これはもう裏モノの定番パターンです。だけど、打ってみたいけど空き台はなし。仕方がないので少し離れてピーピングしていると、しばらくしてカド台でハマっていたサラリーマンが席を立ちました。

 いそいで駆け寄ると、下皿にシガレットのボックスが置かれてます。なんだ、両替に立っただけかい? しかし数分経っても戻ってくる様子はなく、気になってシガレットを見ると中身の入ってない空箱でした。

 それを見て、隣の台でドル箱を重ねて上機嫌のオヤジ客が話しかけてきました。

「さっきのお兄ちゃんはね、昼過ぎくらいからずっとその台を打ってたけど、1回も7がでちょらんのよ。ワシが見とっただけでも7万は使うちょるかのう。どうせもう戻って来やせんから、店員にどかしてもらうとええ。まぁ、仕事をサボってスロットを打ったらロクなことがないってこっちゃね」

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 なんかすげぇイラっとする言い回しだけど、おっちゃんの言う通り店員さんを呼んで事情を説明すると、一応は店内アナウンスで呼び出しをかけて撤去してくれました。ついでに少しコインを抜きましょうと、店員さんが台の扉を開けると、ザバーとコインが溢れてきたんです。

 それを見て、隣のおっちゃんが笑う笑う。たぶん、あのサラリーマン氏にもこの調子で余計なことばかり言ってたんだろうね。そりゃあ腹いせに空箱を置いたまま帰りたくもなるよ。頼むからもう黙っていてくれよ、おっちゃん!

 そんなわけで初打ちを迎えたキューティーフルーツSでしたが、前任者がそんなにハマっていたなら簡単に喰い付くわけがない…と思いますよね。ところが、わずか3千円でビッグを引き当てると、出るわ出るわのビッグオンリー17連チャン。打ち始めが午後6時過ぎだったのに、夜9時には約5千枚ものコインをドル箱に重ねてました。

 でもって、例のおっちゃんはというと、最初のうちは上機嫌で話しかけてきてたのが、コチラの台が出始めると不機嫌になり、終いには説教を垂れ始めたから始末が悪い。まったく今どきの若い者は…って、あまりにも鬱陶しいから連チャン終了を確認した上で即座に台を明け渡しました。その後、おっちゃんが台移動してきたところまでは見ていたけど、おそらくは閉店までハマり続けたと思います。

 というのも、打ってる最中から察しはついてました。この出方はまさに貯金方式そのものじゃないか! それも、ワイルドキャッツ(第46話を参照)とは違った「ゲーム数吸い込み」の極悪バージョン。今日は運が良かっただけ。とてもじゃないけど、仕事帰りに短時間勝負できるような台じゃありませんな。

 ちなみに、下の写真は知り合いのプロに貰った手書きの吸い込みテーブル表です。

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裏キューティーフルーツSには、本来の6段階設定の他に「吸い込みゲーム数」を定めた6種類のテーブルが存在し、両者の組み合わせで36段階の設定が可能だった。通常時にフラグ成立したビッグは超高確率で貯金され、テーブルで決定されたゲーム数を消化した時点で「放出モード」へと移行。以後は全ての貯金を吐き出すまで連チャンが発生し、終了後は再び吸い込みゲーム数を決定して「貯金モード」に突入する。このシステムは興進産業の『デートライン銀河II』とほぼ同じプログラムで、テーブル5の最大値が選ばれてしまうと「丸1日吸い込んで翌日一気に放出する」こともある。まさに天国と地獄だ。

 昔は本当に「なんでもアリ」の業界だったけど、その怪しさもパチスロの持つ魅力の一つだった…と、あれから三十余年が過ぎた今では懐かしく感じなくもありません。

 それではまた次回!

ドラゴン広石

ドラゴン広石

ドラゴン広石(昭和38年12月生まれ)
平成7年に白夜書房「パチンコ必勝ガイド」編集部の門を叩き、パチスロの知識と経験、目押し力を買われて「パチスロ必勝ガイド」のライターに採用された。リアルタイムで「パチスロ0号機」を遊技した経験を持つ、唯一のパチスロライターである。令和4年現在でライター歴は27年。代表作に「枠上人生」、「浮草家計簿」(連載中)、「回胴絶景」(連載中)など。1日の最大勝ち額~プラス41万3千円(クラブロデオT)、1日の最大負け額~マイナス12万9千円(初代・北斗の拳)。

Twitter:@dragon_hiroishi

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