パチンコ「隠れた傑作」が生んだドラマ……波瀾万丈の大当りラウンドを乗り越えろ!!
ただ、5カウント時の貯留開放でV入賞を逃しても、7カウント目から再び貯留ストッパーが発動するという安心設計がなされていた。
と油断させといて、10R以降は貯留ストッパーが発動しながらも海賊船が通常時のように左右に可動する試練の時を迎える。こうなると、船外へ弾き出される玉がそれまでに比べると圧倒的に増え、安定した貯留がままならなくなる。まさに「荒波を航海する船」といった様相を呈すのである。
この『バイキングキッド』は羽根物の中で間違いなく3本の指に入る。ひょっとすると1番好きかもしれない機種なのだが、ひとつだけ、ただ一遍の悲しい思い出が存在する。
その日も近所のパチンコ屋で『バイキングキッド』を打っていた。その台は、もともと役物のデキも良好。この日はさらに釘までツイていて、あっという間に定量間近まで玉が出た。
投資もわずかで、今日は大勝。といっても親のスネをかじって生きている若造の世界の範疇であるが、勝利はほぼ確定していたので意気揚々と打ち止めを狙って玉を弾いていたその時、突然後ろから声をかけられた。
その人物は同級生で、2メートルはあろうかという大男だった。狡猾さと凶暴性を併せ持ち、その性質と爬虫類を思わせる顔つきからか、皆に蛇蝎のごとく嫌われていた男である。男はなぜか大して親しくもないのにずっと喋りかけ続け、しまいには隣の台に腰を下ろしてこちらの出玉状況をちらちら確認してくるではないか。
当初はこの台が打ち止めになったら即座に台をキープするための所業だろうと想像していたが、男の友達が登場したことで何やらきな臭い空気が漂い始めたのである。この友達が来た後は、大男は彼を会話の中心に据え、「こいつ高校ん時の知り合いやねん。よう世話したってん」だの「俺に貸しがある」だの虚言を弄し始めたのである。さらに、これを受けて大男の友達が「ようけ出てるみたいやしおごってもらおうか」などと宣う始末。