世間を騒がした「破壊的な攻略法」若気の至りで攻略しまくった結果、とんでもない事態に…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第13話：サファリラリー】

第13話：サファリラリー

　情報拡散能力に長けたインターネット社会では、パチンコ＆パチスロに攻略法が発覚すれば一瞬でプレイヤーの間に広まります。メーカー開発陣の技術もノウハウも格段に向上した現在では、機種の根幹を揺るがす攻略法など存在し得ないのですが、昭和から平成の初期にかけては技術が未成熟だったこともあり、稀に破壊的な攻略法（大抵はバグだが仕込みも多かったらしい）が発覚して、世間を騒がすこともありました。

　ただし、当時は情報発信の主な媒体が紙（いわゆる攻略雑誌）だったため、一般のプレイヤーが攻略法の存在を知る頃には、対策されてすでに終わっていることが大半でした。攻略法の恩恵を享受できたのは、当該機種にネタを仕込んだ人、入手したネタを高額（数百万単位の金額）で販売して荒稼ぎした人、打ち子を使って広く薄く抜いた攻略プロ組織の元締めくらいに過ぎず、攻略法の末期に情報を入手した末端プロは、すでにネタ元に近い人たちが攻略法の終焉を察して全力で抜きにかかっているため、ほんの数日くらいしか使えなかったり、使おうと思ったら店側が雇った怖～いケツ持ちのお兄さんが出てきて痛い思いをしたそうです。

　ちなみに、これは私が懇意にしている元プロから聞いた話です。私はそういう筋の人とは全く交流がなかったため、トロピのBARセット打法も、ユニバ系2号機の世界全滅打法も、コンチⅠ＆Ⅲの4枚掛けセット打法も、リノのカミカゼセット打法も、スペバト＆スペスペのボフセット打法も、全てが終わった後に「こんなことがあったんだよ」と話を聞いただけでした。今から思うと少し残念な気もしますが、組織に属さないピンの末路は悲惨だったという話を聞くと、命あっての物種だと思う気持ちの方が遥かに強いです。

　さて、前述したように、当時の破壊的な攻略法は「一般客が知る頃には終わっていることが大半」だったのですが、ごくごく稀に例外もありました。その一つが、エーアイの2号機サファリラリーの「BAR→７変換打法」です。今回は、その思い出話を紹介しましょう。

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1枚掛けで7絵柄を狙い続けると…

　サファリラリーには1枚掛け時のリール制御に致命的な欠陥がありました。具体的にその内容を説明すると、REGの内部中（REG成立ゲーム以降）に1枚掛けで7絵柄を狙い続けると、いずれビッグボーナスが揃ってしまうんです。しかも、揃ったビッグは普通にビッグとして消化することが可能で、終了後に何も証拠は残りません。

　当時、どこかの雑誌が解析してたんですが、サファリでは1枚掛けで小役フラグが成立した際に所定の条件を満たすと、フラグ不成立のボーナスが揃ってしまうそうな。

　REG成立を確認したら（REG確定のリーチ目で確認）、当該ゲームで慎重にREGをハズして、次ゲームから1枚掛けで7絵柄を中段に狙います。このとき、左リールのみは要ビタ押し。ビタが正確なら必ず7が中段に停止します。中リールにはランダム制御が入るため必ずしも7が中段に止まるとは限りませんが、上手いことテンパイしたら右リールにも7絵柄を狙います。当時の記事では「全リールにビタ押し」と紹介されてましたが、実際には「内部的に選択されたスベリコマ数と合致すれば揃う」ので、中＆右は比較的アバウトな目押しでも構いません。これに関してはガイドの目押し職人ことタケちゃん（中武一日二膳さん）が、ご本人が所有している実機で試して裏をとってくれました。

　でもって、どうしてこの攻略法が長持ちしたのかというと、他の攻略法はプログラムの不具合を修正するだけで対策が可能だけど、サファリの場合はリール制御そのものを作り直す以外にどうしようもなかったから。ある意味、新機種を一から作るようなものです。なので設置店が行える対策は、シマに「1枚掛け禁止」の張り紙を貼るorシマの監視を強化して不届き者がいたら叩き出すことくらい。あとは台そのものを撤去するしかなかったんです。

　そんなわけで、多くの店は台を撤去しましたが、中には入れ替える費用を捻出できない小規模店もあるわけじゃないですか。そんなお店でサファリを発見したのが全ての始まりでした。

ああ、こりゃ本物のヤ◯ザだ。このまま生きて帰れないかも…。

　当時（平成5年2月）、私は大分市で某商社の営業マンをやってたんですが、ある日の仕事帰りにふらりと立ち寄ったパチスロ専門店でサファリを発見したんです。シマの客付きは非常に悪く、とくに1枚掛け禁止の張り紙も見当たらない。だったら、話に聞く攻略法を試してみようかな…と思い立ったんです。すでにガイドの記事などで手順は知っていたけれど、試せる環境の店がなかったので実践したことはありませんでした。

　すると、ほどなくして小役の集中を経由してバケが成立。次ゲームから1枚掛けで7絵柄を狙い続けると、小役の集中で獲得した100枚チョイの出玉を使い切る直前に7が揃いました。その瞬間は感動しましたねぇ…。あまりにも揃わないのでガセネタじゃないかと不安になりかけていただけに、当時まだ二十代だった自分は舞い上がっちゃったんですな。そこから先は抜きまくり。そもそもバケを自力で引かなきゃならない攻略法ゆえ、ノーマルのサファリでは効果なんてたかが知れているんですが、この店のサファリは注射（裏プログラム）で連チャン性を強化された通称・アニマルサファリだったため、交換率が7枚かつ3時間ちょいの実戦だったにもかかわらず5万6千円も勝っちゃったのよね。嗚呼、若気の至り！

　その翌日から、仕事帰りにこの店に直行してサファリで抜いてたんですが…数日後、バケ成立を確認して1枚掛けを始めた途端に、誰かに強く右肩を掴まれました。驚いて振り返ると、歳の頃は四十前のおじさんがニコニコ笑いながら立ってます。

「お兄ちゃん、この台で勝つのがウマいねぇ。でも、他のお客さんが迷惑してるんだよ。ちょっと事務所に…」

　あ…うぁ…がぁ……って感じで、全く言葉になりませんでした。これまでにも、他の店で店員さんに高圧的な態度で怒鳴られたことは何度かあるし、そういう相手に対しては毅然とした態度で接すれば事態は収まったんですが、何しろ今は攻略法を実践している最中で後ろめたいし、肩を掴んだ相手はニコニコしながら穏やかに、しかし有無を言わせぬ圧力で迫ってきます。

　ああ、こりゃ本物のヤ◯ザだ。このまま生きて帰れないかも…。

　この時だけは本気で死を覚悟したんですが、事務所の奥で腹に何発か良いのを貰って、土下座して、二度とこのお店には近づきません、全て私が悪うございましたと一筆入れた後に、店の裏口から解放されました。たぶん事務所にいたのは30分くらいだと思うんですが、私には2時間にも3時間にも感じられました。そして、二度と私はこの店に近づきませんでした。

　ちなみに、この程度の制裁で済んだのは運が良かったらしいです。冒頭で紹介した元プロの知り合いは、世界全滅打法で捕まった際に事務所ではなく倉庫に連行され、後ろ手に縛られて麻袋みたいなものを被せられ、身動きできない状態で数人にボコボコにされたそうです。

　ところが、その知り合いは前職でホール主任をしていたために、その筋の方とも付き合いがあり、たまたま幹部の方に気に入られて「困った時は尋ねて来い」と名刺を渡されていたとのこと。そして、名刺を財布に入れたまま放置していたため、財布を開けた誰かが、オイやめろ、大変だぞ、コレ見ろよ…となって、すぐに解放されたそうな。どうやら、その名刺の幹部はその筋では実力者だったようです。さらに、兄ちゃん悪かったなぁ、この事は言わんといてくれ、堪忍してやと頭を下げられて、ちょっと厚めの茶封筒を渡されたそうです。まさか名刺のおかげで命拾いするとはね…と、その知り合いは遠い目をしながら、酒の席で思い出を淡々と語ってくれました。

　確かにそんな経験に比べたら、私のエピソードなんて大したことありませんね。

　だけど、一つだけわかったことがあります。

　生きてるだけで丸儲け。命あっての物種ですな。