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「どうせ北斗を打つなら仕事にしちゃえ」という軽いノリだったが…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第52話:人生で一番負けた日】

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第52話 人生で一番負けた日

 大勝ちと大負けは表裏一体です。初心者に優しく「遊べるマシン」の代表格であるジャグラー系のボーナスタイプでは、万枚オーバーなんていう超ド派手な勝ち方がほぼない代わりに気が遠くなりそうな大負けもなく、逆に一撃の瞬発力に長けた「ツラヌキスペックの高純増AT機(要はスマスロ)」は時としてコンプリート機能が発動するほど大量出玉を吐き出す可能性がある代償に、ここぞという場面でチャンス役のヒキと展開に恵まれなければ高設定でもズブズブに負ける可能性があるってこと。

 個人的にジャグラー系は大の苦手なのですが、だからと言って世の中の全てのパチスロが荒波機種になっても困るので、今はほど良くバランスの取れた勢力図じゃないかな…って思います。

 ただね、攻略情報誌の立場からすれば、飯のタネになるのはやっぱり荒波機種なんです。決してジャグラーの底が浅いわけではないのだけど、なにしろ「GoGoランプが光ればボーナス成立」という非常にわかりやすいゲーム性につき、読者さんの興味を引き続けるには限度があります。それゆえ、自分たち攻略情報誌の実戦スタッフが、編集部からデータ取りを依頼される際には必然的に荒波機種が多くなるんですな。

 しかし、ここでまた問題が出てきます。データ取りには「特定の1台を長時間打った際の出方を調査する」という目的も含まれるため、どんなに投資がかさんでも台移動は絶対に不可。現在はメーカーさんにお願いしてショールームで実戦することも出来ますが、4号機時代には必要なサンプル(小役出現率やリプレイハズシデータなど)を採取し終えるまで無制限の投資を強いられたのです。あゝ無情!

 そんなわけで、攻略情報誌のスタッフは「人生で最大の負け額」をデータ取りで記録しているケースが圧倒的に多かったりします。それが実戦人の仕事でしょ…と言われればその通りなのだけど、大負けした末に生活に支障を来すようになると、「いったい俺は何のために仕事をしてるんだろう」って悩みます。今回はそんなエピソードです。

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 時は平成16年(2004年)の4月のこと。前年の10月より設置が始まった『パチスロ北斗の拳』は、その圧倒的な出玉性能と自力感の強いバトルボーナスのシステムが多くのプレイヤーに支持されて、名実ともにパチスロ界の頂点に君臨していました。

 春先になるとすでに一通りの解析数値が出揃ったのですが、これほどの人気機種になると手を替え品を替えいろんな企画を用意して、なるべく長くページを引っ張ることになります。

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サミーから登場した初代『パチスロ北斗の拳』。基本仕様はボーナスストック+Cタイプ仕様のAT機で、大当りを引くと「10GのAT&8回のJACゲーム」を1セットとするバトルボーナス(BB)が連チャンすることで出玉を伸ばしていく。BB連チャンは全4種類ある継続率で管理されており(66%・79%・84%・89%)、JAC中に繰り広げられるラオウとのバトルでケンシロウが負けない限り継続する仕組みだ。設定差があるのはBB初当り確率とBB終了時のモード振り分けのみ。BBの継続or終了は継続率および己のヒキで決まるため、ある意味で究極の自己責任マシンだった。ちなみに、継続が20セットを超えて以降は終了時に必ず「ラオウ昇天演出」が発生するため、バトルに突入した時点で継続が確定する。(写真は「パチスロ大図鑑2001~2007/ガイドワークス刊」より)

 そして、このとき編集部が考えた企画が「真の北斗打ち決定戦」という企画でした。勝ち負けなんて問題ない。実戦を通して読者さんに我々の北斗愛を魅せよう…って感じで、早い話がお笑い系の企画なんですが、そんな実戦に私も招集されちゃったのが不幸の始まりでした。まぁ、当時の私は原稿がない日は基本的に北斗を打ちに行ってましたから、どうせ北斗を打つんだったら仕事にしちゃえと、そんな軽いノリだったんですけどね。

 私が実戦店に選んだのは江古田の某店。この頃、私は沼袋に住んでおり、交通の便が良いので(バス1本で行ける)普段からこのお店に通っていました。

 実戦日の朝イチ、とりあえず得意ワザの設定上げ狙いで前日に大きく凹んでいる中カドに座ったところ、高確スタートが見て取れた上に(何も引かずに大オーラ・青を確認)、投資5Kで初BBを射止めました。
「どうせ北斗を打つなら仕事にしちゃえ」という軽いノリだったが…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第52話:人生で一番負けた日】の画像3 残念ながらこのBBは単発で終わったのだけど、前日のダメ台がリセットっぽい挙動を見せたってことは、設定上げに期待できるんじゃね? この瞬間は大いに盛り上がりましたよ、ええ。

 ところがどっこい、人生ってままならないものなのよね。初当り3回目までは高設定っぽい感じがしたのだけど、そこから台の挙動が豹変。少しずつ初当りゲーム数が深くなり、果ては天井(1999G+前兆)まであと少し…という状況で引いた赤7揃い(虹オーラ)が、わずか3セットで終了した瞬間に敗北を受け入れました。

 いや、天井の恩恵など何もない初代北斗で虹オーラを引いたのは偶然だけど(現在のスマスロ北斗は天井到達時に北斗揃いの選択率を優遇。赤7が揃った場合は最低継続率が否定される)、起死回生の一撃となるべき場面で引いた推定・高継続率のBBが不発に終わると気分も盛り下がります。

 そして、最終的な結果はご覧の通り。

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当時の実戦データ

 いやはや、朝イチに自宅を出る時に12枚の万札と10枚の千円札が財布の中にあるのを確認したのだけど、今じゃ小銭がチャリチャリと悲しい音を立てるだけ。財布の中から紙幣が全てなくなるまで打ったのはこの時が初めてですが、これほど漢らしい実戦データを採取したにもかかわらず、企画の見届け人が下した判定は「ドラゴンは漢ではない!」ときたもんだ。

 やっぱりアレか、帰りのバス代と晩飯代に千円だけ残して実戦を切り上げたのが悪かったのか? でも、江古田から沼袋まで歩いて帰るのはキツいし、不名誉な評価も甘んじて受けよう…って、怒るでしかし!

 今はなき横山やっさんの口調になったのはさておき、この時に記録した12万9千円負けが、今もなお破れない私のワーストレコードです。まぁ、仕事じゃなければこんなに負ける前に諦めてるというか、そもそも小役出現率が設定1の内部確率を遥かに下回っていたから(6180G回して2チェが22回、4チェが39回、スイカが47回)、本来ならもっと早めに撤退すべきだったんですけどね。

 こうして、私の「人生で一番負けた日」は静かに幕を降ろしたのでした。

 合掌!

ドラゴン広石

ドラゴン広石

ドラゴン広石(昭和38年12月生まれ)
平成7年に白夜書房「パチンコ必勝ガイド」編集部の門を叩き、パチスロの知識と経験、目押し力を買われて「パチスロ必勝ガイド」のライターに採用された。リアルタイムで「パチスロ0号機」を遊技した経験を持つ、唯一のパチスロライターである。令和4年現在でライター歴は27年。代表作に「枠上人生」、「浮草家計簿」(連載中)、「回胴絶景」(連載中)など。1日の最大勝ち額~プラス41万3千円(クラブロデオT)、1日の最大負け額~マイナス12万9千円(初代・北斗の拳)。

Twitter:@dragon_hiroishi

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