DDT打法がバリ効きの「超激甘マシン」が登場【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第66話:ファイヤーコング】
第66話 ファイヤーコング
その昔、「4号機2大攻略法」と呼ばれる攻略法がありました。言わずと知れた「DDT打法」および「リプレイハズシ攻略法」のことです。
ユニバーサル販売の「クランキーコンドル」を始祖とする、いわゆる技術介入機を打つ際にはこれらが必須でした。元々が機械割に組み込まれている要素につき攻略法と呼ぶには些か語弊もありますが、通常時&ビッグ中を適当に消化すると「メーカーが想定する市場値」より低い出玉率になるので、これはもう4号機のマスト攻略法と言って差し支えありません。
事実、これらの打ち方がまだ世間一般に浸透していなかった1995年当時、クランキーコンドルの設置店では「全台設定6にしても出てくれない」と嘆く店長さんが多かったそうです。
それまでのパチスロは、通常時&ビッグ中ともにフリー打ち(おやじ打ち)で消化するのが一般的でした。もちろん、職業プロや上級者の皆さんは小役を取りこぼさないように通常時からしっかりと目押ししていましたが、一般客の場合は適当に打ってリーチ目が出たら目押しが上手な人にボーナスを揃えてもらう…みたいな文化があり(お礼に缶コーヒーを渡す人もいました)、当時はそれほど「目押し」という技術が重要視されてなかったんですよね。
しかし、技術介入の重要性が知れ渡ると状況が一変します。若者を中心に目押しの鍛錬に励むお客さんが激増し、世の中は未曾有の技術介入機ブームに突入しました。その牽引役を担ったのが前述したユニバーサルグループであり、クランキーコンドル以降もスーパーモグモグ2、タコスロ、ゲッターマウス、クランキーコンテスト、CCエンジェル、レッツと立て続けにヒット作を輩出し、ユニバーサルは天下を取りました。
ちなみに、通常時のDDT打法に関しては、当時は小役補正機能(コインのIN&OUTを常に監視して、小役の払い出しが基準値を下回れば小役高確率状態へと移行し、上回った場合には小役低確率状態に移行してコイン持ちを一定に保つ機能)が搭載されており、小役を取りこぼしても丸損にはなりませんでした。
ただし、小役高確率状態に滞在している間にビッグを引くと、差枚数カウンターがリセットされて初期値に戻るため、通常時は常にDDT打法を実践するのが望ましかったんです。
後に大量獲得タイプの「大ハナビ」で小役補正機能が廃止されて以降はDDT打法の重要性が見直されましたが、それまではリプレイハズシよりも一段低く見られていたことは否定できません。
しかし、1998年(平成10年)になってDDT打法がバリ効きの、超激甘マシンが登場しました。今回はそんな機種の昔語りです。
以下、本編。
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時は平成10年の9月。オリンピアから同社初の大量獲得タイプとなる『ファイヤーコング』がデビューしました。この機種はDDT打法とリプレイハズシの効果が異常なまでに高く、フル攻略で実戦すれば設定1の機械割が110%を超えたんです。
この年、12月にデビューした「ビーナスライン」は、ファイヤーコングの技術介入効果を大幅に強化した機種で、後にホール側に「シマ封鎖」や「女性専用台」という対策を取られて物議を醸しますが、ファイヤーコングは設置店舗が少なく導入台数もあまり多くなかったため、当初はさほど問題になりませんでした。
ファイヤーコングがシマ封鎖の憂き目にあったのは、ビーナス騒動が佳境を迎えた頃です。事実、私は10月末から11月にかけてファイヤーコングを数回打ってますが、開店時刻を過ぎて重役出勤で打ちに行っても普通に空き台に座れましたもの(※注・ビーナス騒動については当コラムの第41話で綴っています)。
実戦店は新宿歌舞伎町にあったグリンピース5さん。私がファイヤーコングを初打ちしたのは新装から1ヶ月くらいが経過した頃ですが、どうやらゲーム性を紹介するメーカー小冊子が不足してしまったようで、苦肉の策でコピーの小冊子が用意されていました。
正直言って、個人的にはさほど甘い機種だと思いませんでした。この頃の私は4号機の初代ハナビ(アルゼ)に夢中になっていた頃だし、ファイヤーコングを打ったのも同業者(ガイドライター)のポロリプロが「甘いから絶対に打つべき!」と絶賛してたからです。
通常ゲームを彩るチャンス予告にしても、トップパネルのランプなんて全くアテにならないわ、ストップボタン押下時に発生するフラッシュも鬱陶しいだけだわ、メダル投入時のサウンド変化も期待度が低い。てゆーか、これってただの完全リーチ目マシンじゃん!
そう気づいてからはチャンス予告なんて気にせず、ひたすら出目演出を楽しんだんですけどね。残念なことに収支の方は勝ったり負けたりで、とてもじゃないけどポロリプロが絶賛するような甘い機種だとは思えませんでした。
おそらくですけど、ファイヤーコングが大量獲得タイプだったのが収支が安定しなかった原因じゃないかと思います。いくら計算上は甘くても、それはあくまで「内部確率通りに両ボーナスと小役を引く」という必要条件を満たしてこそ。しかも、実戦店のグリンピース5さんは等価交換ですし、いくら太っ腹なグリンピーさんでも、甘いと噂が立つほどの機種に高設定を投入するかは甚だ疑問です。
おそらくは設定1だらけのシマで、私はのたうち回ってたんじゃないでしょうかね。それでも出目演出がすげぇ面白いのは間違いないし、納得して勝ったり負けたりしてました。
でもって、ある日のこと。いつものように開店から少し過ぎた頃にグリンピーに行くと、例によってファイヤーコングのシマは人影がまばら。それで私は居心地の良い左カド(前日に私が打って2万チョイ勝った台)の下皿にキープアイテムを置いたんですけどね。椅子に座ろうとした瞬間に、誰かにポンポンと肩を叩かれました。振り返ると若いお兄さんが立ってます。
「その台、僕がキープしてますよ」
えっ…と思って下皿を見返しても、置いてあるのは私の百円ライターだけ。台の左右に缶コーヒー等も置いてないし、これって因縁をつけられてるのかな? しかし、彼が指差す先を見ると、棚の上にあるドル箱の中に写真週刊誌のフライデーが入ってました。
あーなるほどね。だけど、こんなん気づくかい! もっとわかりやすく下皿に何か入れときなさいよ…と思ったんですが、私は素直に謝罪して台を明け渡しました。打ち始める前だから台に固執する気はありません。だって、まだ他にも空き台がありましたからね。揉めるより先に台移動した方が良いと判断したんです。
後になって知ったことですけど、この時の彼はどうやら酒井さん(ルーキー酒井さん)とこの若い衆だったみたいです。当時、酒井さんは「パチスロ虎の巻」という攻略情報誌を主催しており、そこの若手ライターが打ちに来ていた(データ取りか否かは不明)…と、後に酒井さんご本人に聞きました。嗚呼、喧嘩しなくて良かった。そう思って胸を撫で下ろしたのは言うまでもありません。
ちなみに、ルーキー酒井さんは元・パチスロ必勝ガイド副編集長で、時期的に私と入れ替わりだったんですが、当然のことながら面識はあります。というか、どういう経緯だったか失念しましたが、白夜書房のライター契約および報酬の仕組みを私に教えてくれたのは酒井さんだったんですよ。最初の頃はよく「文章が固い」と叱られました。年齢は私より若いですけど、私にとっては「面倒見の良いアニキ」的な存在だったりします。
それにしても、酒井さんの部下とファイヤーコングの台取りでぶつかるとは、世の中は本当に狭いなぁ…というお話でした。
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