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ぼくらはあの頃、アツかった(19) リプパンはずし機全盛期。ホールに舞い降りたハットの妖精が呼び込んだ「スパイダーマン2」の大当たり。

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 筆者が通っていたホールに、オシャレなハットを被った若者が居た。常連である。白シャツのボトムはサスペンダーで吊り上げ、短めの裾の足元は裸足にブーツであった。足立区のオシャレ番長。筆者は彼の事を心の中でそう呼んでいた。

 当時筆者はスパイダーマン2にやたらハマっており、仕事の終わりに必ずと言って良いほどホールに立ち寄っては勝ったり負けたりしていたのだが、その都度彼──オシャレ番長と出くわしていた。

 最初は「やたらオシャレな若者がいるなぁ」程度の認識だったが、あまりにも顔を合わせるのでいつしかお互い顔を覚えてしまい、いつしか我々は会釈を交わす間柄になった。

スパイダーマン2を打つ。
負ける。つまらない気持ちで帰る。
スパイダーマン2を打つ。
オシャレ番長を見つける。会釈する。勝つ。気持ちよく帰る。
スパイダーマン2を打つ。
オシャレ番長を見つける。会釈する。勝つ。楽しく帰る。
スパイダーマン2を打つ。
負ける。小石を蹴りながら帰る。

 筆者は気づいた。

 オシャレ番長を見かけて会釈すると、何故か勝てる事に。

 それからはしばらくオシャレ番長と勝率の因果関係に注意しながらスロっていたのだが、研究の結果、オシャレ番長の登場方法自体に信頼度のようなものがある事が分かった。彼自体が一つの演出のようなものだったのである。

 遠目で見かける、というのは一番良くある演出であったが、これは弱い。

 また、オシャレ番長が打っている時に隣で打つというのも何度か体験したが、これは一見激熱のように見えてあまり強くなかった。

 意外にも一番強いのは「筆者が打っている後ろをオシャレ番長が横切る」というもので、これが来ると大体勝っていた。

 また、一度オシャレ番長がジーパンを履いてるというレア演出とも遭遇したが、この時も出玉が炸裂したように思う。

──ある時筆者は友人にその話をした。酒の席の与太話である。友人A君はオシャレ番長について興味を持ち、やがて「俺もオシャレ番長のご利益に与りたい」と言い始めた。最初はなんだか「自分だけのオシャレ番長」が取られるような気がしてちょっとイヤだったが、結局A君の勢いに負ける形で翌日の仕事終わりに、二人してホールへと突撃する事になった。
夏だった。

 ホールに向かう途中の公園では町内会が主催していると思しき夏祭りが行われていた。筆者はモロコシを食った。A君はフランクフルトを食べた。満天の夜空。太鼓の音。鉄板と油。くすぐったいような夏の匂い。三十分ほど寄り道してホールに到着して、二人して並んでスパイダーマン2を打った。

 千円。二千円。三千円。次々とサンドに飲ませる。当たらない。この時間まで放置されていた台である。どうせ低設定だ。低設定のスパイダーマン2の当たりは決して軽くない。ボーナス合成出現率は1/350とかその辺である。A君と二人して無言で打った。当たらない。当たらない。やがて九時を過ぎた頃だ。ホールを見渡すと、シマの端っこの休憩スペースに人影があった。筆者は思わず声を上げそうになった。オシャレ番長である。

 A君の肩を叩き、顎で示す。

「あれか……?」
「そうだ。あれだよ。オシャレ番長だ」
「浴衣着てるぞ」
「アイスも食ってるな……」
「これはどうなんだ? 熱いのか?」
「わからん。わからんが激レアだよ。初めて見た」

 唾を飲み込み改めて台に向かう。今までと違う気持ちでボタンを押す。レバーを叩く。20Gほど回したあたりで、液晶に映り込む影。まさかと思って振り返ると、オシャレ番長がアイスの棒を咥えたまま後ろを横切った所だった。

やばい! 横切り演出まできた! A君も気づいて目を見開く。勢い、台に向かう。レバーを叩く。ウソのような本当の話だ。その後、一分もしないうちに二人とも当たった。その日の勝負は収支的には大幅なマイナスだったが、オシャレ番長の効果を検証するという意味では明らかな勝ちであった。

 A君とはその後、オシャレ番長の効果検証を一年に渡って続けたが、共通の結論として「オシャレ番長演出の信頼度は魚群並」という回答が出た。

 居ない日はガッカリし、居る日はワクワクする。

 いつしか目的と手段がないまぜになり、我々は「オシャレ番長の様子を見る為に」ホールに通うようになっていたものである。

リプパンはずし機全盛期。スパイダーマン2。リングにかけろ1。赤ドン──。

 五号機初期に我々スロッターが見たうたかたの夢の時代だった。あっという間に規制されて消えてしまったが、その後のART大正義時代へと続くブリッジとして、筆者の心には柔らかな春の日差しのように思い出される。

 そう。いつしかホールで見かける事もなくなった、あのオシャレ番長のハット姿と共に。

【あしの】都内在住、37歳。あるときはパチスロライター。ある時は会社員。年末くらいからライター一本で頑張ります。ブログ「5スロで稼げるか?」の中の人。

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