「20コマの絵柄配列」を採用した純Aタイプ機【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第80話:花火の親方】
ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ
第80話 花火の親方
現在のパチスロは「1リール20コマ」のマシンが圧倒的多数を占めます。アクロスの「Aプロジェクト機」や北電子の「ジャグラーシリーズ」、パイオニアの「ハナハナシリーズ」など、いわゆるボーナスタイプ機は昔ながらの「1リール21コマ」の絵柄配列を採用していますが、現在主流のAT機はほぼ全てが「1リール20コマ」に移行しました。どうしてそうなったのかというと、リール制御を組む際に都合が良いからです。
具体的に説明すると、従来の21コマ機は全方位360度をコマ数の21で割り切れません。従って、リールの制御角が各コマで完全な均等にはならないんです。それに対して、20コマの配列ならリプレイやベルなどのメイン小役を各リールに4個ずつ均等に配置するだけで、どこからどう押しても取りこぼしを回避することができます(引き込みアシストが最大4コマあるため)。つまり、20コマの配列がAT機に多いのは、制御角が均等になる=360度を20コマで割り切れるからなんですね。
一方で、ボーナスタイプの場合は出目に多彩なバリエーションがあった方が、単調になりにくいぶん打っていて面白く感じます。もちろん、敢えて21コマにする以上、必ずどこかに制御角のひずみが生じますが(そのため各絵柄を均等に配置しただけでは取りこぼしが発生する)、それはそれで「出目演出の個性」として多くのプレイヤーに受け入れられてきました。だからこそ、今なお21コマ機がなくならないんですね。
でもって、AT機で初めて「1リール20コマ」を採用したのはサミーさんの5号機『パチスロ攻殻機動隊S.A.C』らしいです。これ以降は20コマのAT機が主流になって現在に至るのですが、実はパチスロの歴史を振り返ると、あるんですよ。4号機時代に唯一、20コマの絵柄配列を採用した純Aタイプ機が…。今回はそんな機種の昔語りです。
以下、本編。
アルゼの純Aタイプ機『花火の親方』
時は平成13年(2001年)の3月中旬、ホームグラウンドにしていた荻窪のD店が、新装でアルゼの最新機種『花火の親方』を大量に導入しました。当時、私はハナビシリーズの担当ライターを任されることが多かったんですが(初代ハナビ、大ハナビ、ドンちゃん2、デカドンちゃん2は全て私が機種物を書きました)、なぜだか花火の親方のみ担当から外されたんですよ。
ガイド編集部にどういう思惑があったか私は知りません。ハナビシリーズのスピンオフ作品だから他のライターさんに任せたのか、それとも私が人気シリーズの担当を歴任するのを嫌ったか…今となってはどうでも良いんですけど、歴代の担当としてはやっぱり打ってみたいじゃないですか。
当時、パチスロ必勝ガイドのライターには、努力目標みたいな暗黙のルールがありましてね。つまり、「他のライターさんの担当機種を打つカネと時間があるなら、むしろ自分の担当機種を打ち込んで経験値を積め」というやつです。
もちろん、暗黙ルールであって強制ではありませんから、気になる機種はプライベートで打ち込んだりもしましたが(ディスクアップやキャッツアイなど)、それ以外の非担当機種…たとえばウイルスショック(アルゼ)、スカルヘッズ2(メーシー販売)、チェリー12X(アルゼ)、ジロキチ(アルゼ)、トゥインクルステージ(エレクトロコインジャパン)、ナイン(エレクトロコインジャパン)などは、最後まで打つ機会がありませんでした。
閑話休題。何はともあれ、朝早くから並んだ甲斐あって「花火の親方」のカド台を楽勝でゲットしました。あとは出目演出を楽しみつつ、少しでも勝てればいいなぁ…な~んて考えてたんですけどね。
困ったことに、リールが狙った位置に止まってくれません。本機では、左枠上にBAR絵柄を狙ってハサミ打ち→波(6枚役)がテンパイしたら中リールもフォロー…というのが絵柄配列上の最適な小役目押し手順ですが、左枠上に狙ったはずのBAR絵柄がリールの遥か上方に停止してたのよね。これにはすげぇ驚きました。
この機種は初心者でも簡単に目押しができるように(ボーナス絵柄を自力で狙って揃える楽しみを提供するため)、リールのコマ数を従来の21コマから20コマに減らし、そのぶんリールの回転速度を「1分間に70回転」に落としたんです。従来機の回転速度は「1分間に80回転」ですから、いつもの感覚で目押ししようとすると、必然的にこうなっちゃいます。
細かく説明しても意味はないので端折りますが、当時の規定ではこうなるんですよ。ついでに言うと、リールの回転速度を落としたせいでスベリコマ数も制限され、従来機では最大4コマあった引き込みアシストが、20コマ機の「花火の親方」では最大3コマまでしかスベれなくなりました。これって、逆に不親切なんじゃね?
もちろん、絵柄は見えすぎるほど見えるので、しばらく微調整を続けている内に目押しのコツは掴めましたが、少しでも気を抜くと左リールのBARは枠上の遥か彼方。パチスロを長年打ち続けて染みついた1周のタイミングは、そうそう簡単に修正できるものではないみたいですね。朝イチに「花火の親方」に座った若者客は次々と席を立ち、どうやら目押し上級者には優しいマシンではない…と私も理解しました。
ところが、納得したから自分もヤメよう。そう思った瞬間に、嫌がらせのようにリーチ目が停止してビッグが降臨! 持ちコインができた以上は打つしかなくなりました。
無理して打ち込まずに流せば良かったよ(涙)
その後、投資2Kで延々と下皿プレイを繰り返し、最後は飲まれてヤメたんですが、私は途中から全くリールを見ていませんでした。いや、正確に言うなら見ることができませんでした。
リール1周の正しいタイミングを正確に刻み続ける感覚に、親方のリール速度がノイズのように容赦なく割り込んでくるため、絵柄を目で追っているとまるで乗り物酔いのように気分が悪くなるんです。
小役の取りこぼし上等、リプレイハズシなんて知ったことか! 下皿の出玉がようやく飲まれたその瞬間、心からほっとしました。てゆーか、無理して打ち込まずに流せば良かったよ(涙)。
余談ですが、花火の親方で吐きそうになった日の帰り道、口直しに自宅近くのホールで大好きな『キャッツアイ』を打ったんですけど、今度はリールの回転がおそろしく速く感じて全く目押しができませんでした。これってかなりマズいんじゃね?
幸いにして、一晩寝た翌日には1周の感覚が元に戻っていたのだけど、さすがにこの機種を二度と打つ気にはなれませんでした。そもそも、花火の親方を打って目押しが上達したという初心者の話なんて聞いたことがないし、どうやら上級者のみならず初心者にとっても余計なお世話だったようですね。
あっという間に姿を消した不遇台に…合掌!
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