パチスロ必勝ガイドの「内部事情」・偉大な「誌上プロ」について回想【特別対談『ドラゴン広石×ゴトロニ×濱マモル』②】
前回は新台などについて、あれこれと語り合ったドラゴン広石氏・ゴトロニ氏・濱マモル氏の3人。今回は「パチスロ必勝ガイド」にまつわる思い出などを振り返っていただいた。
- <特別対談②目次>
- 昔のテープ起こしはカセットテープだから…
- 知られざるパチスロ必勝ガイドの「内部事情」
- 編集部に顔を出すと、図書館みたいに静かでした
- 夜中に『明日夕方までに20ページ書いて』と連絡が?
- ゴトロニのおかげで飯が食えてるのかなって
- 当時はなんでもありだったから。
- 偉大な「誌上プロ」田山幸憲氏について回想
■昔のテープ起こしはカセットテープだから…
ドラゴン広石(以下、広石)「これ(レコーダー)、濱さんの自前?」
濱マモル(以下、濱)「そうですよ。もう10年以上、使ってます」
ゴトロニ(以下、ロニ)「インタビューものを書ける人って、ホント尊敬しますよ。俺、100%ムリです」
濱「こういうインタビューものって、テープ起こしが作業の8割ですからね」
ロニ「みんな、いいますよね。それ」
広石「最近はさ、ソフトで勝手にテープ起こしをしてくれるやつがあるじゃん。あれが使いたくて使いたくてしょうがないんだけど、最近、する機会がなくてさ」
濱「でも、パチ・スロ系のトークは専門用語が多いんで、完璧に起こしてはくれないですよね」
広石「それはもちろん。だから最後に調整しないとね」
濱「だから、テープ起こしをしてくれる業者さんもあるんですけど、以前にお願いしたら、半分くらいが〇分〇秒『××××』みたいな感じで、結局、自分で起こすのと同じくらいの時間がかかっちゃうんですよ」
広石「でも、打ち込む作業を考えたらねぇ」
濱「まぁ、それはそうなんですけど、お金を払うほどのメリットはないかなぁと感じました。通常のインタビューでしたら、活用できるでしょうけど」
ロニ「中には、テープに録ってあるから『話を聞いて記事にしてくれませんか?』みたいな依頼もありますよね。それは、受けたはいいけどホントに大変だったって人もいれば、インタビューしてくれた人がうまくて、流れをそのまま書けばよかったって人もいたり」
濱「結局、書く人がインタビューをするのが一番ですよね。その場にいて進行しないと、あとでデータだけをもらっても大変。展開がぐちゃぐちゃだったりするし」
広石「たしかに。でも、便利になったよね。昔のテープ起こしはカセットテープだからね」
濱「おおっ!まさにテープ起こし」
広石「いちいち巻き戻して、それでプレイを押して聞いて。『あれ?』って思ったら、また巻き戻して。それを繰り返してたんだから、平成ひとケタの時代は」
ロニ「それは大変」
■知られざるパチスロ必勝ガイドの「内部事情」
広石「そもそも、ボイスレコーダーも当時はめちゃくちゃ高価だったのよ。当時は原稿もフロッピーで持っていったもんな」
濱「ゴトロニさんも、フロッピーを持っていた経験はあるんですか?」
ロニ「はい、ありますよ」
広石「1999年くらいまではギリギリ残ってたかも。フロッピーが」
ロニ「メールだと、まだ危ういんですよ。すんなり届かないというか、トラブルがあったり」
広石「だから、電車に乗ってフロッピーを届けるんですよ。締め切りは待ってくれないから」
ロニ「今みたいにバイク便なんて、ないですからね」
広石「あの頃は、フロッピーを届けるための交通費ももらってたもん」
濱「へー」
広石「出してくれてたんですよ。フロッピーがないと困るから。だから、それだけはありがたかったな。その後ですよ、インターネットで原稿を送るようになったのは」
濱「でも、しばらくサムネはFAXでしたよね?」
ロニ「そうでしたね。で、実戦のデータ採りなんかもFAXで送ってましたよね」
濱「昔って、先行導入の地方実戦とかあったじゃないですか」
広石「ありましたね」
濱「その時とか、やっぱり地方だとテンションが上がるんで、実戦後は飲むじゃないですか、朝方まで。で、ほぼ寝ないでホールに並んで、並びながら前日のデータをまとめてコンビニでFAXを送って、実戦後は少し仮眠して、また飲む。これを数日、繰り返してました」
広石「若さゆえですね。今はそんなこと、できないわ」
ロニ「まぁ今は無理かなぁ」
■編集部に顔を出すと、図書館みたいに静かでした
広石「濱さんは何年にガイドに入ったんでしたっけ?」
濱「多分、2002年とか、それくらいだと思います」
広石「じゃあヒゲ園長は知ってるか。失踪しちゃいましたよね」
濱「懐かしいですね。たしか、編集部が電報を打ったんですよね」
広石「電話をしても出ないから。メールを打っても全く音沙汰無しだから、所在がつかめなくてね。すごい時代だったよ」
ロニ「連絡が取れなくなるような人ではあったんですよね、元々。でも、ヒキが強い人でしたよね。独自の理論もあって、面白かった。人間的にはとてもじゃないけど、褒められるもんじゃないですけど」
広石「全然、褒められないね。でも、あの人は編集部にすごい認められてたんだよ。俺、内池(現・沖ヒカル))さんに言われたもん。一番最初に書いた原稿が、一切直しなしで通ったのは園長ひとりだけだって。『この人は化けますよ』って。どう化けたかはアレだけど」
ロニ「ということは、広石さんも直されたんですか?」
広石「無茶苦茶、直されたよ。『30点ですね』って言われたんだよ、一番最初に書いた原稿は。こんなに厳しいのか、プロの世界は…って思った」
ロニ「大概、少なからず直しは入りますよね」
広石「少なからずじゃないよ。一語一句残ってないんだから。本になって載ってて。ただ、それで原稿料は振り込まれてるから、なんだったんだろうなって」
ロニ「でも、最終的にダメだと思われたら、絶対に仕事を振られないですから」
広石「ああ、そうなるね。だから、まだ生き残ってる人たちは一応、認められてはいるんだよね」
濱「アタシは原稿を書かせていただけるまでは、吉良(当時の編集長)さんと書いては直され、書いては直され…を繰り返してました」
広石「それ、すごい恵まれてるよ。吉良さんに見てもらえるなんて」
濱「当時は、みなさん大御所の方たちがガッツリ原稿を書かれてて、入り込む隙間がなかったんですよね。だから、どうやって書かせてもらえるようになるかって考えたら、編集長に認めてもらうしかないなって」
広石「でも、吉良さんに相手をしてもらえたっていうのはすごいよ。できなかったもん、僕らはそんなこと」
濱「怖いもの知らずだったんでしょうね」
ロニ「自分よりも前の人だったら、めちゃくちゃ怖いって口を揃えますからね。特に巨人が負けた次の日とか」
広石「今では丸くなったけど、昔はね。我々フリーの人間がいる時は怒らないけど、いなくなると不機嫌全開になるって話を聞いた。だから、編集部から『帰らないでください』ってお願いされたりね」
濱「わはははは。たしかに編集部に顔を出すと、図書館みたいに静かでしたもんね」
ロニ「外気温より8℃くらい低いと思います」
広石「それくらい徹底してたんだよね、吉良さんって」
■夜中に『明日夕方までに20ページ書いて』と連絡が?
ロニ「パチスロ必勝ガイドの編集部はしっかりしてると思います。ここはもう、ブログで言うなら、赤文字の特大くらいで」
広石「ホント、そうよ。パチンコ必勝ガイドとパチスロ必勝ガイドの違いは、そこにあると思う。よく言われることだけど、パチンコ必勝ガイドって全然、定着しないの。ライターも編集部員も」
ロニ「あー、たしかに」
広石「だから、僕がガイドに入った当時の編集部員で、まだいる人ってホントに少ないよ」
濱「あ、まだいる方っていらっしゃるんですか?」
広石「フリーになってるけどね。あと、パチンコ必勝ガイドクラシックを作った人とか」
濱「パチンコ必勝ガイドクラシック、面白かったですよね」
広石「パチスロ必勝ガイドクラシックは二度と作らないって言ってたね」
濱「パチスロはパチンコと違って、3号機までは機種数が少ないですしね」
広石「覚えてる? パチスロ必勝ガイドクラシックって2週間で作ったんだよ。で、前日に編集部から電話がかかってきて、『2ページ空いちゃったんで、なにか書いてください』って」
ロニ「わはははは。そのオファーは失礼ですね」
広石「でも、ひとまずやったよ。でっち上げたみたいな記事になったけど」
濱「アタシも、パチスロ必勝ガイドクラシックVol.2の時かな? 急遽、連絡をいただいて、まぁまぁなボリュームの原稿依頼をいただきました。まぁありがたいですよね」
広石「でも、『明日の朝までに書いて』って依頼はなかったでしょ?」
濱「ありましたよ。増刊の時とか、夜中に連絡をいただいて『明日夕方までに20ページ、書いて』とか」
広石「さすがに、そこまでひどいことはなかったなぁ」
ロニ「相手を見てますよね。無理が利きそうな人に連絡をする」
濱「まぁ当時は若かったし、寝ずに書くってこともできましたしね。だから、アタシはサムネをギリギリに作る編集の方と組むことが多かったように思います」
広石「じゃあ、俺は気を使われてたのかな」
濱「そりゃそうですよ、我々も気を使ってます」
広石「ごめんね。気を使ってくれてるのは、すごいわかる」
濱「いやいや、ウソですよ。あ、いや、ウソですっていうのもおかしいな」
ロニ「わはははは。でも、総じてガイドの編集部員はレベルが高いですよね。すごいしっかりしてると思う」
■ゴトロニのおかげで飯が食えてるのかなって
広石「それはそうと、ゴトロニが入ってきた時も衝撃だったよ。98年組って言われてたっけ?」
ロニ「無道さんと、中武(一日二膳)さん。ポロリはちょっと早いんですよね、入ったのが」
広石「高田馬場で歓迎会をやったでしょ。その時、ものすごい分厚い大学ノートを見せられて。機種に関する考察がびっしり書いてあるの。すげーなって」
ロニ「当時、文章を書くのはダメだって自分で蓋をしてたんですよね。だから、データ採りだけはしっかりしようって」
広石「あの大学ノートを見せられて、『この人には絶対に負けてるから。負けないようにしたい』って思って。それから全部データを残すようにしてる」
ロニ「あ、そうなんですね。今、過去のデータを引っ張り出してきてコラムを書いてますよね」
濱「回胴絶景ですね」
広石「あれはだから、君の影響で残したんだよ」
ロニ「えー、それは嬉しいですね。僕は今までのデータ、どっかにいっちゃいましたけど」
濱「アタシもです。取っておけばよかったなぁ」
ロニ「広石さんのコラムを見て、そういう手法もありだなって思いましたよ」
広石「いやー、だから今、考えてみたらゴトロニのおかげで飯が食えてるのかなって」
ロニ「あら、ありがとうございます」
広石「いや、こちらこそ」
ロニ「当時から広石さんは大先輩で年齢的にも上なのに、『君、すごいね』って話をしてくれて…」
広石「だって、それくらい衝撃を受けたから。それまで、そういう人っていなかったから、ガイドには。技術的な人たちばかりの中に、理詰めでいく人が入ってきて。今まで僕の周りにいなかったタイプで、すごいことをやってるなって思って。
それから、ちょっと自分の生活態度も改めて、データも今まで使い捨ててたのを残して。それが今、役に立ってるわけですよ」
ロニ「データが1枚あるだけで、信憑性が変わりますよね。実際に打ったんだぞって」
広石「僕ね、パチmax!さんでコラムを書くにあたって、ひとつだけ徹底してることがあるの。まず、必ず自分の体験談を絡める。聞いた話とか、紙の上だけのアレじゃなくて、必ず自分がやって、こうなったっていうのを書いてる」
■当時はなんでもありだったから。
濱「そういえばアタシ、ライターになって一発目のデータ採りはロニさんと一緒で。『ツインズ』ってBタイプのAT機だったんですけど、ボーナスが当ってるのに、ずっと揃えないで出目を調べ続けてるんですよ。不遇台記事の実戦なのに」
ロニ「わはははは。絶対に使われないやつ」
広石「それはね、1回問題になったことがあるんだよ、『タイムパーク』のデータ採りで。ボーナスが成立してるのにハズしまくってて、ボーナスをストックしまくってるの。あれ、RTのプチストック機能があるじゃない。ボーナス後に『1G連・1G連・1G連…』って。そういうゲーム性じゃねぇよって」
濱「わはははは」
広石「現実的にあり得ないってデータになって、ちょっと物議を醸したことがあったね」
ロニ「まぁでも、上手いことやってくれるんですよ、編集部は」
広石「面白ければ、なんでもいいんだけどね。当時はなんでもありだったから。今はいろいろいわれるけどさ」
濱「コンプライアンスがうるさい時代ですからね」
■偉大な「誌上プロ」田山幸憲氏について回想
広石「当時、我々はパチスロ必勝ガイドってところに辿り着けたのがラッキーだったんじゃないのかな。ほかだったら認めてくれないよ」
ロニ「それはありますね」
広石「末井(昭)さんのすごいところだよね。『面白けりゃいいんじゃないの?』で終わる人だから。あと、僕はガイドに入るにあたって、田山(幸憲)さんの存在が大きかったな」
ロニ「僕も田山さんに会いたくて溝の口まで行ったりしました。実際には会えませんでしたけど」
広石「今もみんなに慕われてて、命日には集まってお墓参りしてお酒飲んで。田山さんのすごいところは、昔のプロの美学があった」
ロニ「読み物も面白かった」
濱「きれいな文章でしたよね」
広石「素晴らしかった」
ロニ「やっぱり人柄ですよね。定職に就かず、酒も喫煙もする。人間性としては決して褒められはしないんだけど」
広石「『一日の稼ぎはその日の飲み代だけでいい』ってね。あとは翌日の種銭だけ残して。普通のプロはそれ、できないよ。だって、部屋とか借りてたら家賃とかがあるじゃん。でも、田山さんは実家暮らしで持ち家だったから、そういうことができたんだよね」
濱「今の軍団に聞かせてやりたいですね」
広石「夕方にはヤメるんだよ、いくらいい台を掴んでても」
ロニ「昔のパチプロは多かったですよね、そういうの」
広石「あとは『常連にお任せする』ってね」
ロニ「だからプロの人たちがお店から煙たがられずに打てたんですよね。あと、土日は行かないとか」
広石「田山さんは、まさにそう。俺、田山さんに言われたんだよね。1回だけ忘年会でご挨拶させていただいた時に、『君はパチプロになりたいのかい?』『パチプロなんて、なるもんじゃないよ。店からは煙たがられるし、一般客からは嫌われるし、いいことなんてひとつもないよ』って」
濱「説得力がありますね」
広石「でも俺、ちょっと困ったんだよ。別にパチプロになりたいわけじゃなかったし。その忘年会、ゴトロニもいたよね?」
ロニ「いました。僕も、お会いしたのは、あれ1回きりです。こっちが勝手に思い込んでる部分はあるんですけど、もう別格でした」
広石「別格っていうか、神格化されてたよ。だって、パチンコ・パチスロライターなら、誰もが全員知ってる存在だったし、あの文章の格調の高さは真似できない。さすが東京大学だなって」
ロニ「頭がよすぎちゃって…ってこともあるんでしょうね」
広石「それ、俺の中ではゴトロニもすげー頭がよすぎて違うところにいっちゃってる人に思える」
ロニ「いやいや、昨日の昼ごはんも思い出せない人間ですから」
濱「それはただの老化じゃないですか」
広石「わはははは。まぁとにかく、田山さんは全てのパチンコ・パチスロライターの憧れだったことは間違いなく、尚且つ、亡くなられて20年以上経つのに、いまだにお墓参りをすると年々、人数が増えてくる。その影響力がまだあるというか、俺が田山さんを忘れることは絶対にないし、若い人にも田山さんの著書を読んでもらいたいなって思いますよね」
〇〇〇
知られざるパチスロ必勝ガイドの内部事情に言及すると共に、誌上プロの元祖ともいえる田山幸憲氏についても回想した今回。次回、3人が集まった際は、どんなトークが飛び出すだろうか。
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