パチスロ「単なるデザイン違いの焼き直しと思っていたが…」~4号機名機伝説~『ビガー』前編【アニマルかつみの回胴青春時代Vol.108】
伝統ある「ペガサス」の名と訣別し、新たなシリーズ展開によるシェア拡大を目指してリリースされたパル工業の4号機第3弾『C51SP』。
3号機時代の同社のマシンと同様、本作はデビューからほどなく裏モノ化し、「ビッグ成立の前触れとしてリプレイが異常に偏って出現する」というバージョンが各地に出現。話題となった。
そんな風に『C51SP』が攻略情報誌の誌面を賑わせていた1995年春、早くも続編となる新作がリリースされた。
夜のニューヨークはマンハッタンをイメージさせるダークブルーをバックに星条旗がはためく大胆なパネルデザインが印象的なマシン、『ビガー』である。
『ビガー』
『C51SP』からの流れで、パチスロ必勝ガイドでの本作の担当を任されることとなったのだが、まずは何より機種名に対して「…な、なんじゃそりゃ!?」というのが、個人的なファースト・インプレッションだった。
そもそも「vigor」という英単語は、「精力」や「活力」などを意味する名詞で、「ビガーパンツ」という男性向けのコンプレックス解消〇着がその昔、流行っていた。真っ先にそれを連想してしまったのである。
一方で、バブル期に「デートカー」としてもてはやされた同名のクルマがあったことも、ほんのり思い出した。
余談はさておき、基本仕様は前作を踏襲したスタンダードなAタイプ。絵柄が異なるだけで、役構成や払い出しから絵柄配列に至るすべてが『C51SP』と同じだった。
スペックに関しても同様。低設定域ではビッグ偏向、高設定になるほどREGの割合が上がり連続性が高まるという確率設計となっていた。『C51SP』を踏襲するのは、仕様やスペックだけではない。リール制御にも変更はなく、リーチ目は例によってシンプルな引き込み系がメイン。スベリを伴ってボーナス絵柄がテンパイすれば、2リール確定もしくは小役ハズレでボーナスとなった。 一方、攻略要素については、ビッグ中のメイン小役が12枚で期待増加枚数が3枚と高めなため、リプレイハズシが効果絶大。比較的簡単な手順で、テキトーに消化するよりも30枚ほどの獲得枚数増加が見込めた。これもまた、『C51SP』と共通の特徴である。
何から何まで前身機の『C51SP』と同じな「ビガー」。リリース当初は、誰もが「デザインが異なるだけの、単なる焼き直し」と受け止めていた。
初出の記事制作に際して、「何かネタはないだろうか」ということで、大阪のパル工業本社へ電話をして、前に『ペガサスワープG』の取材で対応してくださった広報担当の方に確認することとなった。
「うーん…『シゴイチ』との違いですか。うーん…そうやねぇ……」
受話器の向こうの相手の口調は、なぜか歯切れが悪かった。テンポの悪い会話が続く。
「うーん…ボーナス確率がコンマ数分のいち、違ったかな。あとは…うーん…そうやねぇ。チェリーが、少し出やすくなってるみたいやけどなぁ…」
悶々とした気持ちのまま、受話器を置いた。「チェリーが少しだけ出やすくなった」と言っても、どうせ取るに足らないほどの違いしかないだろう。過去のデザイン違いの兄弟機は、だいたいそうだった。
「…ったく。面白みのカケラもない台を受け持つことになっちまったぜ」
そんな気持ちでいっぱいだった。少なくとも、その時点ではまだ…。
ほどなく、編集部にほど近いホールに『ビガー』が導入されるという情報が舞い込んできた。きけば、首都圏ではトップ導入だという。記事の〆切りにギリギリ間に合うスケジュールだったので、攻略軍団「ショッカー」のコホ、リトルの二人と一緒に、データ取りを行うこととなった。
その日は、月イチ恒例の一大イベントということで、早起きして件のホールに向かった。すでに数十人の先客がいて、開店時間が近づくにつれ店の前は黒山の人だかりとなっていた。
「どうせみんな、前評判もない正体不明の新台よりも、有名どころの爆裂台に向かうだろう」
そんな風に思っているうち、10時の開店を迎えた。先客に続いて、かつて『ペガサス412』があったシマへとなだれ込む。
意外なことに、みるみるうちに先客たちで埋まってゆく『ビガー』のシマ。自分とコホはなんとか空き台を確保できたが、集合に遅れてきたリトルが台にあぶれてしまった。とりあえず、二人でデータ取りを開始する。
寝ぼけ眼をこすりながら、淡々とゲームを進めた。通常時の小役データ採取は、コホがDDT打法を担当してくれるので、自分はフリー打ちを担当することとなった。
「ふぁ~…早起きして眠いし…とっととノルマを果たして、一杯やって帰りたいぜ…」
夜明け近くまで原稿を書いていて、あまり眠っていなかった。たちまち睡魔が、まぶたに重くのしかかってきた。
ところが、である。小一時間経った頃だろうか。DDT打法でプレイしていたコホが、信じがたい「事実」を耳打ちしてきた。
「アニさん。これ、『チェリ連』ですよ」
予想だにしなかった「朗報」に、一瞬にして睡魔は退散。失われた最初の1時間を取り戻すべく、目をギラつかせひたすら、チェリーを狙った。(後編につづく)
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