見た目はパチンコだが「内部システム」はパチスロ…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第86話:パチコン】
ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』
■第86話 パチコン
その昔、1990年代の初頭に登場した遊技機に「パチコン」と呼ばれる機種がありました。タイプミスじゃありません。「パチンコ」ではなく「パチコン」。当時はそれなりに話題になったので、私と同世代の読者さんなら記憶の片隅に残っている方もおられるかも知れませんが、これがなかなかドイヒーなゲーム性でしてね。
何がそんなにひどいかって、とにかく大当りにメリハリがないんですよ。良く言えば「安定した出方」、悪く言うなら「面白味のないダラダラとした出方」って感じですね。
具体的に解説しましょう。パチコンはユニバーサルグループが製造・販売したパチンコ機なのですが、当時のユニバさんは日工組(日本遊技機工業組合)に加盟しておらず、同組合が管理しているパチンコ関連の特許を使用できなかったんですよ。
それで、苦肉の策として「見た目はパチンコだが内部システムはパチスロ」の遊技機を開発しました。そう、それがパチコンでした。
従って、パチコンはパチスロと同じく6段階の設定付きです。後に「CR機」が登場した際に3段階設定が認められましたが、CR機では数字が小さくなるほど大当り確率が優遇されたのに対し(つまり最高設定は1)、パチコンはパチスロと同じく設定6が最高設定となります。
ここまではまぁ問題はないんですけどね。パチコンにおける最大の問題は、大当り確率が低いだけのノーマル機だったことでした。
CR機のような確率変動システムは搭載されていないため、大当りを引いてもまとまった出玉を得られる可能性は低いんです(連チャンは全て自力)。しかも、電チューの役割が「回転率を一定に保つ機能」に過ぎず、回り過ぎていたら電チュー開放確率が低下し、回転率が所定の数値を下回ったらパコパコ開いて玉持ちが良くなる…という内容でした(デジタル回転率が1分間に約6.5回転になるように補正される)。
ゆえに、パチンコで当たり前のように行われていた釘調整も不要。もちろん、お店側としては営業が楽になるんですけど、当時は何しろオマケ付き連チャンデジパチの全盛期です。
「F・レクサスⅥ D」や「F・ボルテックス」、「キャスター」や「ドンスペシャルB」などの魅力的な連チャン機が、互いにしのぎを削っているパチンコ業界で戦うにはあまりにも力不足でした。
そんなわけで、史上初のパチコン『GIGA』は、話題にはなりましたがヒットせず。私も渋谷の某店で一度しか打ったことがありません。
プロの方々も「技術介入が一切効かない台なんて打つ価値がない」というスタンスであり、パチコン『GIGA』は後継機の『ジェネシス』と共にひっそりと闇に消えていきました。合掌!
■史上初のパチコン『GIGA』
■一部マニアの評価が高い『CR乙姫4』
その後、ユニバーサルグループはパチンコ市場への進出を断念したのか、本業である「パチスロの製造・販売」に精を出していたのですが、5連リミッター機の時代になって突如としてパチコンを復活させます。
この時にデビューしたのが、一部マニアの評価が高い『CR乙姫4』でした。
なぜ、わざわざパチンコ暗黒期と揶揄される「5連リミッター機」の時代になって、再びパチンコ市場に手を出したのか、当時の私には理解できませんでしたが、これはもしかして勝負師が行う「逆張り」だったのかな…と今なら思います。
つまり、業界全体が低迷している今こそが覇権を握るチャンスだと捉えたんでしょうね。実際、『CR乙姫4』は綺麗な液晶デバイスで登場キャラの複雑な動きを表現しており、既存のパチンコメーカーさんの機種に決して引けをとりませんでした。
しかも、ここまでやるか…ってくらいに液晶演出がぶっ飛んでいて、リーチ演出中や大当り中にやたらとポロリが頻発します。ここらへんの演出に関しては打ち手の好き嫌いが分かれるところですが、男性客の多くには好意的に受け入れられたんじゃないでしょうかね、ええ。
当時、すでに私は「パチスロ必勝ガイド」に所属しており、台割会議でCR乙姫4の担当ライターに志願しました。だって、パチコンは中身がパチスロという建前だから、パチスロライターが担当しても問題ないはずです。
しかし、編集長に「それはパチンコ必勝ガイドに任せましょう」と言われて諦めました。いや、それはそうですよね。もしも認められたらラッキー…って感じで挙手したので、こうなるのは想定内でした。
■運良く千円で確変大当りを引くも…
それでも、私はめげずにプライベートで打ちに行きましたよ。通ったのは荻窪にあった某店です。この機種も例によって「出玉管理は設定で行うので釘調整は不要」という建前でしたが、どの店も全台を最低設定にして釘調整で出玉を管理していたと思います。その方が管理が確実ですからね。
ただ、釘調整をしくじるとパンクのリスクが高まるのが難点でした。この日、私はいつものように朝からCR乙姫4を打ち始めたところ、運良く千円の投資で確変大当りを引いたんですよ。
ところが、アタッカーに玉が寄らずV入賞を逸しちゃったんです(アタッカー入賞時に液晶画面に「V」表示が出なければV逸)。その瞬間、思わず声が漏れたのは言うまでもありません。嗚呼!
どういうことかというと、パチコンは「Vゾーン入賞による次ラウンド継続」というシステムが使えないため(日工組が管理するパチンコの特許に抵触する)、苦肉の策で「ラウンド開始時の最初の5秒間にアタッカーに入ればV入賞とみなす」となっていたんです。ゆえに、ラウンド間の止め打ちなんて絶対に厳禁。下手に玉突きでも起こして5秒間のチャンスタイムを逃すとパンクしちゃいますからね。
もちろん。普通に連続打ちすれば間違いなくVを得られるんですが、釘調整が悪いと上手くアタッカーに玉が寄らないこともありました。ただ、前日も同じ台を打って普通に入賞したので、おそらくは昨日の夜にシメられたんじゃないかな? そういえば、新装から連日かなり出していたし、そろそろシメ時なのかも知れません。
ちなみに、最初のV入賞を逸しても救済措置がありましてね。この機種の大当りラウンドは最大30秒間ですが、アタッカー開放後の25秒から30秒までの5秒間も、ラウンド開始時と同じようにV獲得のチャンスゾーンとなるんですよ(ただし、当然のことながら10カウントすればチャンスは消滅)。
そこで私は玉を打ち出すのをやめ、頭の中で静かにカウントしました。そして、ラウンド開始から推定22秒を過ぎた付近でハンドルを捻りました。あとは正確にカウントできていたか、そしてアタッカーが玉を拾うかが全てです。
待つこと数秒、見事に「V」が表示されて安堵しました。いやはや、仮にパンクしても確変の権利までは消滅しないと思いますが、せっかく引いた大当りは綺麗に消化したいじゃないですか。そして、もちろん確変終了で即流ししました。だって、大当り中にパンクを心配しながら打つなんて楽しくありませんからね。
その後、2001年になってユニバーサル(当時はアルゼ)傘下のミズホが日工組に加盟したことにより、パチコンを製造する必要がなくなったユニバさんは正式にパチンコ事業へと参入しました。これにより「パチコン」は完全に消滅したのです。
あらためて合掌!
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