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「犯罪行為」が目の前で…【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第97話:盤面押し】

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ドラゴン広石コラム『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』
ドラゴン広石コラム『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』

■第97話 盤面押し

 その昔、パチスロ機の完成度が低かった3号機以前は「攻略法」の宝庫でした。絵柄配列の不具合と禁則処理のミスが原因で、変則打ちで特定箇所を狙えば永久に小役を抜ける機種があったり、ボーナス成立後の等倍返し処理の不具合により、ボーナス絵柄を外しつつ等倍返し役を狙えば機械割が100%を超える機種があったりもしたんです(どの機種を指しているのかはネットで検索すれば出てきます)。

 ちなみに、これらの攻略法は違法ではありません。遊技メダルを投入してスタートレバーを押下→ストップボタンを押して有効ライン上に役が入賞→配当が行われる…という一連の流れは「パチスロの通常遊技」を逸脱してはいないため、仮に攻略現場をホール従業員に見られて取り押さえられたとしても、警察に突き出されることはないんです。

 まぁ、実践するには相応の目押し力が必要でしたし、警察に突き出されることはなくても「出玉没収の上、出入り禁止」というキツーいお灸を据えられる可能性は高いので(店側はハウスルールにより健全な営業にふさわしくない客を出禁にできる)、攻略法の手順を知っていても実践したことはないプレイヤーが多かったのではないでしょうか。

■「完全なゴト行為」と認定されたものも存在

 ところで、数ある攻略法の中には「完全なゴト行為」と認定されたものもあります。その代表例がいわゆる「盤面押し」。これはどういうものかというと、変則打ちでビッグ絵柄を特定ラインにテンパイさせた後、盤面(リール窓のある中央パネル)を強引に押し込んで回転中のリールと接触させ、ビッグ絵柄が並んだ瞬間にストップボタンを押すと、マシン側が「ビッグが入賞したと勘違い」してボーナスがスタートする…というものです。

 有名なところでは、パイオニアの2-2号機『ムサシ』や、エーアイの3-1号機『ハンター』などがあります。当時のパチスロ必勝ガイドでは、この「盤面押し」のことを「ドスコイ攻略法」と紹介していましたね。ああそれと、私は「盤面押し」の実践経験はありませんので念のため。

パイオニアの2-2号機『ムサシ』。期待されてホールデビューしたが不人気ですぐに撤去され、しばらくしてからドギツい連チャン機として復活する…という、当時の裏モノの王道を歩んだマシンである。盤面押しゴトの発覚後、ホール側はリールユニットを筐体内部のレールから外して奥に下げる、極めて原始的な手段で対策した。これにより盤面押しは完全に封じられたが、リールが奥の方で回転している絵ヅラは妙にシュールで、あまり見てくれの良いものではなかった。
パイオニアの2-2号機『ムサシ』。期待されてホールデビューしたが不人気ですぐに撤去され、しばらくしてからドギツい連チャン機として復活する…という、当時の裏モノの王道を歩んだマシンである。盤面押しゴトの発覚後、ホール側はリールユニットを筐体内部のレールから外して奥に下げる、極めて原始的な手段で対策した。これにより盤面押しは完全に封じられたが、リールが奥の方で回転している絵ヅラは妙にシュールで、あまり見てくれの良いものではなかった。
エーアイの3-1号機『ハンター』。デビュー当初は「穏やかな出玉推移」が特徴のA-C機という印象だったが、後に王道的な流れを辿って爆裂化を果たす。50G内でダラダラと連チャンするバージョンが最も有名だが、兄弟機の「グレートハンター(裏)」と違って明確なリーチ目がなかったため(成立後に出現する小役揃いリーチ目はあり)、連チャン中はビッグまたはREGを交互に狙ってプレイする必要があった。本機も「ムサシ」とほぼ同様の手順で盤面押しゴトが可能である。(写真はともに「パチスロ大図鑑1964~2000/ガイドワークス刊」より)
エーアイの3-1号機『ハンター』。デビュー当初は「穏やかな出玉推移」が特徴のA-C機という印象だったが、後に王道的な流れを辿って爆裂化を果たす。50G内でダラダラと連チャンするバージョンが最も有名だが、兄弟機の「グレートハンター(裏)」と違って明確なリーチ目がなかったため(成立後に出現する小役揃いリーチ目はあり)、連チャン中はビッグまたはREGを交互に狙ってプレイする必要があった。本機も「ムサシ」とほぼ同様の手順で盤面押しゴトが可能である。(写真はともに「パチスロ大図鑑1964~2000/ガイドワークス刊」より)

 そして、時が流れて4号機時代に移行すると、各メーカーさんのセキュリティ対策が桁違いにレベルアップして、盤面押しゴトは鳴りを潜めたんですけどね…。

以下、本編。

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 時は平成9年(1997年)の6月。その日、私は有楽町の某店で『クランキーコンテスト』のデータ取りをしていました。目的はリプレイハズシデータのサンプルを増やすこと。コンテストは前身機のクランキーコンドルに比べて目押し難易度が非常に高く(要ビタ押しハズシ)、リプレイハズシの数値的な効果を実戦で検証するには人海戦術で臨むしかありませんでした。

ユニバーサル販売から登場した4号機『クランキーコンテスト』。JACの配当を14枚に抑えることで破格の攻略効果を搭載した技術介入機だったが、攻略に要求される目押しレベルがあまりにも高過ぎたために、前作「クランキーコンドル」ほどの人気は得られずに終わった。抜群の客付きを見込んで大量導入したホールは扱いに困り、長期間かけて広く浅く抜いて機械代を回収する選択肢を取ったと言われている。ゆえに、全台設定6で営業するホールも特にめずらしくなかった。まだ7枚交換が主流だった時代ならではだ。(写真は「パチスロ大図鑑1964~2000/ガイドワークス刊」より)
ユニバーサル販売から登場した4号機『クランキーコンテスト』。JACの配当を14枚に抑えることで破格の攻略効果を搭載した技術介入機だったが、攻略に要求される目押しレベルがあまりにも高過ぎたために、前作「クランキーコンドル」ほどの人気は得られずに終わった。抜群の客付きを見込んで大量導入したホールは扱いに困り、長期間かけて広く浅く抜いて機械代を回収する選択肢を取ったと言われている。ゆえに、全台設定6で営業するホールも特にめずらしくなかった。まだ7枚交換が主流だった時代ならではだ。(写真は「パチスロ大図鑑1964~2000/ガイドワークス刊」より)

 そして、担当ライターであるアニかつさん、それに私こと広石を含めた計6人で朝からブン回した甲斐あって、ハズシデータの大量採取に成功。当時のパチスロ必勝ガイドのデータ取りは午後8時までが時間拘束で、以後は各人の判断で終了しても良い…というルールでした。

 もっとも、誰だって仕事の残業は嫌ですから、明らかな設定6を掴んで閉店まで打ち切る必要が生じたケースを除き、大抵は午後8時でヤメて、皆で晩ご飯を食べに行くことが多かったんですけどね。

 この日も定時に上がることを皆で申し合わせたところ、誰かがトイレに立った直後に事件は起きました。

「大変だよ、セブンティセブンで盤面押しをやってるヤツがいる!」

 慌てて戻ってきたのが誰だったのか忘れましたが、聞けば『セブンティセブン』のシマで盤面押しを試みている連中を発見したそうな。実践しているのは4人組の男性で、実行役をはさんで両側に座った男は普通にゆっくりと打ち、実行役の後ろには立ち見客を装った壁役を配置しています。いや、確かに「セブンティセブン」と「トリプルセブンA」の兄弟機に盤面押しが発覚した情報は知ってるけど、あんなに目立つゴトを実践している連中を見るのは初めてである。
高砂電器産業の『セブンティセブン』と、同じく『トリプルセブンA』。前者は集中役を搭載したA-C機で、後者は純粋なAタイプ機である。両者とも「プラス式ボーナスシステム」と呼ばれる独創的なゲーム性を搭載しており、一直線に並んだ7絵柄の数が7点以上ならビッグ、6点だとREG、5点以下の場合はシングルボーナスとなる(トリプルセブンAの場合は12枚小役)。非常に画期的な演出だったが期待したほど設置は伸びず、盤面押しゴトの餌食になったことで撤去する店も多かった。なお、盤面押しゴトの発覚後は対策機として「セブンティセブンⅡ」、および「トリプルセブンA2」に基板改修された。(写真は「パチスロ大図鑑1964~2000/ガイドワークス刊」より)

高砂電器産業の『セブンティセブン』と、同じく『トリプルセブンA』。前者は集中役を搭載したA-C機で、後者は純粋なAタイプ機である。両者とも「プラス式ボーナスシステム」と呼ばれる独創的なゲーム性を搭載しており、一直線に並んだ7絵柄の数が7点以上ならビッグ、6点だとREG、5点以下の場合はシングルボーナスとなる(トリプルセブンAの場合は12枚小役)。非常に画期的な演出だったが期待したほど設置は伸びず、盤面押しゴトの餌食になったことで撤去する店も多かった。なお、盤面押しゴトの発覚後は対策機として「セブンティセブンⅡ」、および「トリプルセブンA2」に基板改修された。(写真は「パチスロ大図鑑1964~2000/ガイドワークス刊」より)
高砂電器産業の『セブンティセブン』と、同じく『トリプルセブンA』。前者は集中役を搭載したA-C機で、後者は純粋なAタイプ機である。両者とも「プラス式ボーナスシステム」と呼ばれる独創的なゲーム性を搭載しており、一直線に並んだ7絵柄の数が7点以上ならビッグ、6点だとREG、5点以下の場合はシングルボーナスとなる(トリプルセブンAの場合は12枚小役)。非常に画期的な演出だったが期待したほど設置は伸びず、盤面押しゴトの餌食になったことで撤去する店も多かった。なお、盤面押しゴトの発覚後は対策機として「セブンティセブンⅡ」、および「トリプルセブンA2」に基板改修された。(写真は「パチスロ大図鑑1964~2000/ガイドワークス刊」より)

■どれほどの力で押したら割れるんだよ!

 どうしようか…と皆で話し合いました。目の前で犯罪行為が行われている以上、店側に知らせるのが人の道であるとは思います。だけど、自分たちだってお店に許可を取ることなく勝手にデータ取りしているわけで、下手にチクったりすると無用のトラブルに巻き込まれかねません。それに、もしも連中にバレたら報復されるリスクだってあるし…。

 協議の結果、とりあえず帰り支度をした上で店員さんに知らせることにしました。全員が出玉を流して特殊景品に交換し、両替所でしかるべき手順を踏んだ後に再集結。じゃあ、ゴトの現場に行って店員さんを呼ぼうか…ってなったのだけど、セブンティセブンのシマにすでに連中の姿はなく、彼らが打っていた台に数人の店員さんが集まってます。

 いったい何があったんだろう…と思って遠目で覗き見したところ、件のセブンティセブンはリール窓に亀裂が入っており、エラー音とともにデジタルにエラー表示が出ていたんですよ。どうやら、あまりにも力を入れ過ぎて盤面を割ってしまい、シマにエラー音が響いたため、そのまま放置して逃走したのだと思われます。

 てゆーか、あの硬い盤面をどれほどの力で押したら割れるんだよ! 実機を所有している人ならわかると思いますが、パチスロの盤面というのは思う以上に頑丈で、無理やり押したところで簡単に割れるほどヤワな作りじゃありません。もしかすると、なにか特殊な器具を使って強引に押したのか…とも考えたんですが、実際の現場を見たわけじゃないので正解には辿り着けませんでした。

 結局、自分たちは危険な目に遭うこともなくほっとしましたが、台を破壊されたお店側の損害は、修理中の稼働休止や承認変更届も含めてかなりの額になると思います。本当にお気の毒としか言いようのない事件でしたが、まさかこの時代に「盤面押し」なんていう原始的な力技が通用するとはね…。

 セキュリティが格段に向上したと思えても、人間の作った物に完璧なものはない。そう認識することができたエピソードです。

ドラゴン広石

ドラゴン広石

ドラゴン広石(昭和38年12月生まれ)
平成7年に白夜書房「パチンコ必勝ガイド」編集部の門を叩き、パチスロの知識と経験、目押し力を買われて「パチスロ必勝ガイド」のライターに採用された。リアルタイムで「パチスロ0号機」を遊技した経験を持つ、唯一のパチスロライターである。令和4年現在でライター歴は27年。代表作に「枠上人生」、「浮草家計簿」(連載中)、「回胴絶景」(連載中)など。1日の最大勝ち額~プラス41万3千円(クラブロデオT)、1日の最大負け額~マイナス12万9千円(初代・北斗の拳)。

Twitter:@dragon_hiroishi

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