パチンコ開発における裏話…「実写・特撮演出」で起きたトラブルとは?【ドラゴン広石『青春と思い出のパチスロと、しばしばパチンコ』第67話:CRぱちんこウルトラセブン】
第67話 CRぱちんこウルトラセブン
読者さんの中にはご存知の方もおられるかと思いますが、私は子供の頃からキャンディーズの大ファンです。キャンディーズが水道橋の後楽園球場でファイナルカーニバル(解散コンサート)を行った昭和53年の4月4日、私はまだ15歳の中坊でしてね。ああ、東京では今、ランちゃん、スーちゃん、ミキちゃんの3人が最後のステージに立っているんだなぁ…と万感の思いを巡らせながら、遠く離れた大分県の実家で星空を見上げていました。
そんな思い入れがあるから、去年の大晦日に放送された「第74回NHK紅白歌合戦」は、テレビの前に正座して鑑賞しましたわよ。なぜって、キャンディーズの多くの楽曲でセンターを務めたランちゃん(伊藤蘭さん)が、46年ぶりに紅白のステージに立ったんですから。
もちろん、当時とは違ってソロとしての出場だけど(伊藤蘭さんは2019年からソロシンガーとして活動されています)、紅白SPメドレーとして「年下の男の子」~「ハートのエースが出てこない」~「春一番」の3曲を披露する豪華さで、私はこのステージを観ただけで、普段は全く見ないNHKの受信料のモトを取ったような気になりました。いやはや、蘭さんはお年を召されても昔と変わらず綺麗な女性だなぁ…。まぁ、個人的な推しはミキちゃんこと藤村美樹さんなんですけどね。
さて、テロップが出ている「ハートのエースが出てこない」の当該部分ですが、元の歌詞は一般に知られている「デートのチャンスはおあずけなのよ」ではなく、「デートもキッスもおあずけなのよ」でした。両者のニュアンスには微妙に違いがあり、後者の方がより親密な間柄を思わせます。それをあまり良くないとディレクターが判断したのか、一旦は後者の歌詞で録音されましたが、リリースの直前になって前者のバージョンに差し替えられてレコードプレスされたそうです。
ただね、フルで録り直す時間がなかったのでしょうか、「~のチャンスは~」の部分だけが新録されました。今ならデジタル処理でバサッと切って、代替音源を上手いこと挿入して違和感なく完成させられるんでしょうけど、当時はかなり苦労したらしく、レコードを聞けば差し替えられた部分の前後に妙な「音の籠り」を確認できます。現在のCDに収録されてる音源も同様ですので、気になる方は是非ともチェックしてみてください。
ところで、全く話は変わりますが、パチンコやパチスロの液晶演出で、映像の完成後に版権元からリテイクの指示が出て、差し替えが必要になった場合はどうすると思いますか? アニメーションの場合は新たな修正カットを作成して、当該部分と差し替えればいいだけの話なんですけど、元の映像が実写、しかも特撮だった場合はそう簡単にはいきません。なぜなら、特撮の撮影にはスタジオでセットを組み直し、スーツアクターやカメラマン等を再招集する必要がありますから。要はすげぇお金がかかるんですよ。
しかしながら、版権元からダメ出しされた部分を修正しないわけにはいきません。さぁ、どうする?
以下は私が「とある業界人」に聞いた話なんですけどね。実はパチンコメーカーの京楽さんが平成17年(2005年)にリリースした『CRぱちんこウルトラセブン』の液晶演出を完成させて、版権元の円谷プロダクションに映像の監修をお願いしたところ、1カ所だけ演出の修正指示を受けたらしいんですよ。その部分とは、通常時に発生する「VS怪獣系リーチ」の1場面。具体的には怪獣とウルトラセブンの対峙シーンなのですが、セブンのファイティングポーズが「本来のポーズと違う」と指摘されたそうです。
全てのウルトラ戦士は、怪獣と対峙する際に両腕を前に構えます。セブンの場合はボクシングのように拳を握って怪獣と向き合うスタイルなのですが、本機の液晶演出に登場するセブンは両手を開いて構えていたんだそうな。
「これじゃあセブンじゃなくてウルトラマンだよ!」
そう指摘された京楽の担当者は、思わず頭を抱えました。
そんなんどっちでもいいじゃん! ウルトラシリーズに興味のない人なら間違いなくそう言うでしょうが、版権を管理する円谷プロとしてはそうはいきません。オリジナルの版権が間違った使われ方をしないようにチェックを行い、もしも原作と食い違っていたなら修正の指示を出すのが「監修」の仕事ですからね。また、ウルトラセブンが大好きなパチンカーがこの機種を打ったら、原作との違いに失望するかも知れません。マニアの目は一般人が考える以上にシビアなのです。
結局、この指摘を受けた京楽さんは、当該箇所に該当する部分のみを撮り直したのか、はたまたCGで修正したのか…完成品として登場するまでの過程は聞きそびれましたが、実際にデビューした「CRぱちんこウルトラセブン」のリーチ演出に登場するセブンは、オリジナルのウルトラセブンと同様にしっかりとグーを握ったファイティングポーズを取っておりました。
修正は無いに越したことはないけれど、もしも修正案件が発生したら、速やかに的確な対応を行うのがプロなのです。
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